第一話
俺には、大切な幼馴染がいる。
隣に立たれると、身も蓋もないくらい月とすっぽんで、単に俺自身が引き立て役にしかならないけど、でもそれくらい良い男。自慢の親友だ。
気付けば、付き合いは小さい子供の時からで、隣にいるのが当たり前。
ほぼほぼ欧米の血なんだろう金髪の髪、いつか見た深い澄んだ海の色の瞳、美術館で見た宗教画の天使の肌の色。
混雑した学校帰りのバスの中、隣に立つ、今では俺より五センチ程身長の高い親友をチラリと覗いた。
……ムカつくぐらいキレイな顔してやがる。というか、コイツの子供の頃は、本当に天使みたいなヤツだったな。
そう。初めて会った頃、本当に「可愛い」しか形容出来ないヤツだったんだ。
ケンカしたり、言い合いになったりしても、笑い所が一緒で結局仲直りしてしまう、本当に居心地の良い奴。とはいえ、男なんだよなぁ。
高校三年になって、隣がずっとコイツというのも、物悲しいものがある。
コイツが女の子だったら、やっぱり今のコイツがイケメンに成長している様に、美しく成長していたんだろうか。いや、間違いなくしてただろうな……。
例えば、そう、身長は俺より低くて、隣に並ぶと、つむじなんかが見えちゃったりして。
くー、そんな可愛い事って!
あれ? 俺の想像力すごいわ。
だんだん隣の親友が縮んで、明るい髪の色のつむじが見下ろせるようになった。
窓の外を眺める瞳は、睫毛の長いのは変わらないけれど、涼しい目元はくりくりと大きく人形のように開き、鼻は筋が通ったツンとしていた印象はそのままだけど、顔の大きさがふっくらと小さくなり、鼻も可愛く小ぶりなものに変化していく。唇はぷるぷると美味しそうな果物みたいに色付いた。
うわ。なんか、想像のコイツがどんどん女の子になっていく。
しかも、壮絶、理想の女子。
やばい。妄想するのが楽しくなってきた。
俺の妄想は加速度を増す。
例えば、そう。手も足も細くて、いや、ガリガリとかじゃなくて、柔らかそうで俺より細いみたいな。抱きしめたら壊れちゃいそうな華奢な感じなんだけど、胸は程よくあって。デカすぎず、小さすぎず。今、ヤツがシャツの第二ボタンまで開けちゃってるけど、そうすると谷間が見えたりするくらい。巨乳じゃなく、美乳の大きさで……。
俺の想像力、ヤバイ。すごくリアルに目の前に展開されてきてる。やばいやばい。ムラムラも止まらなくなってる。
そんな俺を、隣に立つ理想の女の子が、なんの感情もない静かな視線を向けてきた。
ドキリとした俺を余所に、小馬鹿にするような瞼を半分降ろした目で見つめ、可愛らしい口から男らしい親友の声が吐き出される。
「良い事教えてやろうか?」
「え?」
しまった。声を想像してなかった。
慌てて考える。キンキンするアイドルみたいな高い声は好みじゃなくて、物静かで知的な柔らかい感じの。
「白」
そうそう! そういう声!
理想の声が、自分の名前を呼んだ嬉しさに、彼女の唇を見詰めてしまう。
そして、その唇が告げた。
「鼻血出てるぞ」
「え!?」
理想の女子が、理想過ぎて、言っている意味が理解出来なくて自分の鼻に手をやるのに時間がかかった。
鼻の下を触って、生暖かいぬるっとしたものが指先に触れる。指先には真っ赤なものが付いていて、血の気が引いた。
「うわ!」
なんだ、このリアルな血は!?
え!?
妄想で、鼻血吹いた?




