黒桜
こんばんはこんにちはおはようございます!
雪月花でございます!
これを読んで少しでも元気なっていただければ嬉しいです!
…
「お前の力…戦争を止める為に貸してくれ」
「…良いぞ、おぬしを認めよう。代償は最後の時に…のう?」
あの時の青年はそう言って妾を振るい続けた、妾に根深く、寄生するかのようにあった負の感情も一緒に…無論、結果はどうなるか分かっていたのだろう
「主よ…憎しみや悲しみは…いずれ癒えるのかのう?」
「…?さぁな。力がある限り憎しみも悲しみのも続くのかもしれない。けど、強大な力があれば、一時でも平和を得る事が出来るはずだ、力は悪ではない、どんな物も使いようだ。…生まれた時から悪で支配された思考、感情を持っている奴がいるなら話は別だが…そんな奴はいないだろ?」
「答えになっとらんのう。それともう一つ…妾を振るうのはもうやめた方が良いぞ?」
「ははっ!心配しなくても大丈夫だ、俺は勇者だぞ?黒桜、お前はいい奴だよ。妖刀になっちまったのは使った奴の所為だ」
「ふむ…取り敢えず、一番最初の男の骸は粉砕じゃな」
「ははっ!」
あの時、もう少し強引にでも止めて置けば『あやつ』は助かっただろう。だが、妾を振るい続け助かった生命も確かに存在していた
「…交渉は成功だ、ありがとう。黒桜…」
「ふん、戦争の終わった世界を見ずに逝くつもりかのう?」
「はは…無理が祟ったかな?」
「だから、言ったじゃろ。妾は普通の刀ではないと…」
「そうだな…確かに普通の刀じゃない。お前が憑いている刀が何本もあっちゃ、世界が終わる」
「…ふざけるのはそこまでじゃ。…どのぐらい持つ?」
「いや、交渉の条件に俺は死ぬ。お前の呪いでは死なないさ…けど、半分は持って行け」
「おぬしは…本当に馬鹿よのう…」
「馬鹿でいいのさ、馬鹿だから戦争を止める事に迷いがなかった。…時間が無い、早く持って行け…それと、もし、もしもだ。俺と同じ血を持った奴が見たら、力になって欲しい」
「子孫を呪えと?」
「なわけないだろ?…お前に最後の贈り物だ。これからは名刀でも名乗ってみたらどうだ?…じゃあな…」
「…っ!?」
そう言ってあやつは妾の呪いと一緒に、死んでいった、願いを残して。全く…人使いが荒い奴じゃよ。
…安心して眠っておれ、もう見つけたからのう
…
…
…
彼岸花が覆い尽くす川の水面の上で黒桜と名乗る女性は目の前でくすりと微笑む。その微笑みに見惚れたのは秘密だ
「…ルイン達は無事なのか?」
「ふむ?あぁ…あやつらが無事じゃぞ、重傷なのは主と魔王だけじゃよ」
「そうか…なら、よかった」
ルイン達は大丈夫らしい、それにしても…俺も生きているのか?自分の手の平を光にかざす様に眺めれば、透き通っているようには見えない。足もあるな
「何じゃ?死んだとでも思ったのか?…言ったじゃろ?主は死なせぬ、と」
「あれは幻聴ではなかったのか…ところで、主…?」
「うむ、何か不満かのう?」
きょとん?っと、首を傾げながら不思議そうに此方を見つめる黒桜。主と言われると色々と問題があるように思えるが…
「いや…まぁ、いいか…」
「うむ、ならば問題ないのう」
「…所で、此処は何処なんだ?」
「此処は妾の心象世界じゃよ、…まぁ、綺麗な所ではないがの」
「…確かに足元はアレだが、その桜はは綺麗だ」
足元の頭蓋骨が無ければ、水面に反射した彼岸花の紅色、黒いが桜の花びらが漂う空間は幻想的とすら言える。恐らく世界中探してもこれほど幻想的な空間は無いだろう
「くくっ、そう言ったのは主で二人目じゃよ」
「そうなのか?」
「うむ。そもそも、ここに来れる者はあまりおらぬからのう」
認めた上で運が良くなければ来れぬ、正直こうして話している事に驚いておるのじゃよ。そう言って、黒桜は数歩離れて、刀を差し出してくる
「主よ…おぬしは何故、戦う?何故、傷付く事を選択した?」
「…目の前で死に掛けてる奴がいる、それを助けたかっただけだ。…て、言うのが建前だ。俺は、死にたくなかったんだろうな」
「くくっ…似る物なのかのう」
心底可笑しそうに笑う黒桜、そして
「もしもだ。これから先…魔王の元で戦いに参戦するのであれば妾の力は役に立つだろう。主はどう考えておる?」
「分からない、だが。ルインに召喚され、命を救われたのは事実だ。恐らく、ルインは帰る事を進めて来るだろう。だが、遅かれ早かれ帝国とは戦うだろう。それが早まっただけと考えるなら…」
「このまま、戦う事を選択するのかのう?」
「…乗り掛かった舟だしな。村には自警団がいる、俺よりも腕の立つ専属の冒険者もいる。あの時は偶々いなかったがな」
「では、おぬしは妾を振るうか?」
「あぁ、振るおう。…武器も無いしな」
「くくっ、良かろう。妖刀黒桜…おぬしの刃となろうぞ」
黒桜の差し出す刀を掴むとぐらっと視界が歪む。遠くで『時間じゃ、また来れると良いのう?』と聞こえた気がした
…
…
…
意識が覚醒する、眩しい光…朝、か?身体は動かさず、視線だけを周囲を確認するように動かせば
「おはよう、身体は動かさない方が良いわよ?」
ベッドの右側で椅子に座っているルインと目が合い、優しく微笑みかけて来る。頭に包帯を巻いているが元気そうだ
「…脚は大丈夫なのか…?」
「ふふ…ありがと、大丈夫よ。あれから二週間も経ってるから」
「…そんなに寝ていたか」
『目を覚まさないんじゃないかと…心配したわ』そう言いながらルインは隣の机に置いてある花瓶の花を取り換えて再び微笑んだ
「それじゃ、今はまだ安静にね?」
「あぁ…心配を掛けたな…」
そう言って、ルインは部屋出て行った、あれから二週間も経っているのか。あの後…どうなったんだ?
「早い、な…」
「あぁ、確かに早いな」
「うお!?」
『やぁ!少年、いや、青年か?』と言いながら現れたのは多少歪んでいる鎧、確か…吉良メル?いや、キラー…メイル、キラーメイルだ
「キラーメイル…何処から入って来たんだ?」
「はっはっはっ!俺は神出鬼没だからな!この城のどこにでも現れるぞ!」
そう言って、ガシャガシャと音を立てながら声を上げる。正直うるさいし、頭に響く
「…何の用なんだ?」
「用?決まってるだろ!ルインのデレる姿を見る為だ!ついでに録画写真を撮る為!盗撮?知らんな!」
「…ニルヴァー、変態が居るんだが、消してくれ」
「まぁぁぁてぇぇぇぇっ!!!!あの冷血残虐非道の貧乳メイド呼ぶんじゃぁぁぁなぃぃぃっ!?」
「了解しました、変態及び異変種の駆除を始めます」
呼ぶとほぼ同タイミングで屋根の屋根の板が外れてニルヴァが現れると、キラーメイルに後ろ回し蹴りを入れる。脚の動きが見えなかったぞ…
「げぶらばっ!?」
「ちっ、浅いですね」
後ろに飛びながら衝撃を逃がし、床を転がるキラーメイル。鎧なのに身のこなしがいいな
「あ、今日も白なんだな!」
「ふんっ!」
「あ、それはダメ!?」
鎧の中心を踏み抜く様に足下すニルヴァ、転がって避けるキラーメイル。そして、いつの間にか口元に薬用のおかゆを乗せたスプーンを近づけて来るハンナ…ハンナ!?
「ハンナさーん!お助けぇ!?」
「死んでください、変態さん」
「身体を激しく動かすのは明日から出お願いします。…熱くないと思いますが?」
「あ、あぁ…」
…病室は混沌に包まれた、今日の魔王城は平和な様だ。と言うか病室では静かにじゃないのか?監督責任者出て来い
「…混ざるタイミングを逃したわ…」
楽しめたでしょうか?
更新速度はまちまちですが、今後ともよろしくお願いいたします!