明けない夜、隔離された世界
新しい事件に入りました!フォルカチームが最初でございます!
…
「…?」
とてとて、と城の廊下を歩く少女の姿。母の姿を探して部屋を覗くが、普段いるはずの部屋に姿はなく。優しくしてくれる女性の姿も見つけると走って来る鎧の姿もない、故に少女は困惑しながらも恐怖を覚え、城を歩き続けていた
「…大丈夫ですか…?」
そんな少女を探していたのか、シスター服を身に着け、水色の髪が特徴的な女性。ハンナが優しく声を掛ける
「みんな、いないの…」
「…皆さんは少し用事が出来てしまいました。ですから、私と一緒に居ませんか…?」
俯きながらぽつりと答えた少女にハンナは続けて言葉を紡ぎ、落ち着かせるように微笑む
「…うん!」
しばらく、ハンナを見つめていた少女は頷くとそのままハンナに抱き着いた。ハンナも少女を抱き留め抱っこしては図書室絵と向かう、気が付けば少女を心配し、見守っていたのか。清掃スライム達がそろそろと現れ、ハンナの後に続いた
…
…
…
「んー、なんて言うか…全く情報が無いよりも厄介な状況ね…」
「…予想外」
ルーと一緒にアンケート用紙の結果をまとめていたアナンとベルは目を通した問題のアンケート用紙の束を見ながら困惑する
「そうですね…まさか、全てのアンケートに同じ内容の噂が書かれるとは…」
ルーも予期しない事態、それも同じ人物が書いたのではなく、ちゃんと別々の人間が書いているのだ。はっきり言って回答を同じにする理由は無い
「ぼろ切れを身に着けた人物…魔王…魔族に対して嫌な噂を言いながら夜な夜な街を練り歩く、まるで亡霊ね」
「…捕まえる?」
「ベル、ちゃんと人間を捕まえる、と言う事よね?」
少ししょんぼりとした雰囲気で取り出そうとした本をしまっては再びアンケートの確認を始める
「ただいま~!って、何この紙の量…」
「戻ったぞ…って。これ、アンケートか…」
フォルカとラリサが戻って来ると目の前に広がる書類の山、これを仕分けていたのか…?と若干引きつるフォルカに対してラリサが興味津々に用紙を手に取っていた
「へぇ…これ、私達が仕入れた情報の人間とそっくりね」
「…待て、こっちも同じことが書かれてるぞ?」
ラリサに釣られ、フォルカも紙を見れば首を傾げながら呟く、ルーが『えぇ、そうなんです』とため息交じりに答えると今まで目を通して来た用紙をフォルカに手渡す
「…これ、全部似てる目撃情報だな…それに、聞いた事のある噂、って言う奴もいる」
「はい、ただ…一つ気になる事が、これらのアンケート何ですが全てCクラスの冒険者、又は最近Bクラスに上がったばかりの冒険者です」
そして、と続けながらルーが出した用紙はAクラスの冒険者の物、其処には特に無いと書かれている
「どういう事だ…?下の連中にだけこの噂…目撃情報がある…?」
「はい、不自然です。私も聞いた事ありませんし…知ったのはこれが初めてです」
ルーの言葉に全員が黙り込んでしまった、ルーの情報網を抜け、下級の冒険者にのみ流行る噂、目撃情報…つい最近の襲撃事件を思い出させるには十分だった
「…やっぱり、帝国なのかしら…?」
「低級冒険者を集めて何かしようとしてるのかもな…反乱でも起こして魔王城の襲撃なんて言うのも考えられるが…所詮は低級だ。大した戦力にはならないはず…そうなると…」
「機兵の素材」
フォルカに言葉を続けるようにベルが言えば再びの沈黙、しかし、その沈黙は長くはなかった
「ルーさん!いらっしゃいますか!?ルーさん!」
ドンドン!と激しく叩かれる扉とギルドスタッフの叫びに破かれた
「どうかしましたか?」
「空を、空を見て下さい!」
「空…?」
その声に全員が窓から上空を見れば、快晴の空に黒いインクを垂らしたかの様に丸い円が広がって行く
「な、なんだよ…これ…?」
「至急アーロンに連絡を!それと、あれに触れない様に周りの状況を調べて下さい、また、近辺の市民を王都の中央教会に誘導を!この命令はC、Bの冒険者全員に手配してください!」
了解です!と叫び扉から走り去る足音、フォルカ達も頷き合い外へと飛び出す。町の異変に気が付いた市民が叫び、避難を呼びかける冒険者。軽いパニックになってはいるが、王都が闇に包まれ掛けている以外まだ被害はない
「これは…結界…?」
アナンが黒い染みに覆われ掛けている空を見ながら呟く、ベルも同じなのかこくり、と頷きながら同意しているようだ
「結界って…王都を飲み込む程の広範囲に張ってるのか…?」
「えぇ、恐らく…申し訳ありません。私は指揮に戻らないといけないので付いて行けそうにありません…」
「構わないさ、俺達みたいに楽な立場じゃないだろ?」
「…フォルカ、それ、失礼じゃない?」
「ふふ、気にしないで下さい」
そう言って、ルーはギルドに戻って行くとシュタっ!と音を立てながらフォルカの真横に何かが着地する
「うおっ!?」
流石のフォルカも声を上げながら驚き、真横を見ればニルヴァが着地していた
「王都の方、見て参りました。どうやらあの結界は王都にいる全ての物を閉じ込めているようです。あぁ、私の'貫通'も試しましたが効果はありませんでした」
そう言って丁寧にお辞儀をしてフォルカに微笑むニルヴァに全員が思った、どこいたの?と…
…
…
…
「つまり、アンケート用紙には興味がなかったので偵察手柄買い物をしていたの…?」
「はい、そしたら急にこれですから。もうじき太陽も隠れます…警戒はした方がいいでしょう」
荷物を取り敢えず、ギルドに置いて来たニルヴァと王都の門まで来れば黒い壁を見つめる
「ニルヴァは…その、あれに触ったの?」
「触ってませんよ?ただ、色々投げてみただけです」
アナンの問いかけに答えれば、この様にっと言い、近場の石ころを投擲する。その石はニルヴァの手から離れると白く輝き結界にぶつかる、すると甲高い金属のがぶつかる様な音が響き、石が割れてしまう
「砕けた。危険」
「いやいや、あれは壁が危険なのかニルヴァの投擲が危険なのかわからねぇよ!でも、めっちゃ固いのは分かったな…」
冷や汗を垂らすフォルカとベルの感想、ラリサは試しにファイヤーボールを出して見るが煙が出るだけで何も変わらない
「こ、焦げ付きもしないのね…」
「黒いからわからねぇって!」
落ち込むラリサに再びフォルカの突っ込み、取り敢えず分かった事は壁は固い、柔らかくはない
「…待って、ニルヴァ、なんでそんなに顔が恐いの?」
「いえ、フォルカ様がとても失礼な事を考えているようでしたので、つい」
「はいはい、その辺で止めて置きましょう?結界を完成させてから何が起きるか分からないから…取り敢えずはギルドに待機ね」
アナンの止めが入り、助かったと溜息を吐くフォルカは、くすくすと笑うニルヴァを本気で怖いと思ったのだった
フォルカ「ニルヴァ、こわい、こわい」
ラリサ「…何を見たのかしら?」