離反者:ステルベル
色々と急展開&酷い文章かもしれませんがよろしくお願いします~!
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壁や床、あらゆる場所に大なり小なり穴が空き、燃える部屋でアルシャは一人溜息を吐く
ステルベルの反撃は容易に考えられた、だから自身は無傷なのだが。まさか、施設中に爆弾を仕掛けていたのは予想外だった、それも彼自身の研究室付近とデータの管理を行う機材を中心的に
「やってくれるわね…創造魔術のデータは惜しいけど…まぁ、いいわ」
腹立たし気に舌打ちをすれば、頭を切り替え進行中の計画の確認するべく部屋を後にする。無機質な廊下をカツカツと音を立てながら思考を整理する。あれ程の爆発だ回りに勘付かれているはず。…外部の協力者が上手くやってくれるだろうか?
「あいつ等にも指示を出さないとね。機兵の数は十分…さて、いつ攻め落とそうか…」
小さな火元、魔王軍をいつ叩き潰そうか計画を実行する時を考える。正直いつでもいいのだ、弱者を前にした強者。麻薬の様な感覚が身体を巡る、奴らを消せれば小さな火は消え、障害になりうる可能性を持つ者がいなくなる。やはり、早急に処分するべきか…抗う奴らを潰すのは楽しい、魔王軍以外に堂々と事を構える奴らがいないのが残念だ…
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「さて、どこの辺から手を付けるの?」
ファーベルに着いたフォルカチームは取り敢えず、『犬の舌』のロビーに集まっていた
席に着くとルーとニルヴァが飲み物を取りに、その間にラリサがフォルカに何処から調べるの?と聞いたのだ
「うーん、最初はギルドの冒険者から情報を集めようと思っていたんだけど…」
「ギルドの人達にはアンケートを配りましたので、時間が経てば結果は出ます」
ルーとニルヴァが配給室から紅茶を持ってくれば、メンバーの前のテーブルにそっと置いきつつルーが答えた
「アンケート…?内容を聞いてもいいか?」
「構いませんよ、内容はこうです。仕事の意欲や目標、そんな感じの内容に最近気になる事や噂話などないか、と」
「成る程…と言うよりギルドに関してはルーさんがいればどうとでもなりそう…」
紅茶を美味しそうに飲んでいたラリサが冷や汗を垂らしながら呟く
「勿論、気になる情報があれば本人に会いに行きます」
「アンケートから本人特定出来るって…」
「何かおかしいですか?」
「い、いや!」
苦笑いするフォルカに含み笑いで返すルー、するとベルが手を挙げる
「…定番に酒場に行くべき、情報屋もいる」
「…あそこ苦手なんだよな…よし、いこう」
少し頭を押さえながら考えた後、覚悟を決めたようにフォルカが立ち上がると隣のラリサも一緒に立ち上がった
「私も行く、フォルカがまた、変な物買わされない様に見張るわ」
そう言われるとフォルカは「すんませぇん…!」と言いながらラリサに手を合わせて感謝したのだった
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暗く湿った洞窟の壁に寄り掛かりながら男が呻く
「ちッ…こいつを使えるようになったって言うのに…逃げ回る羽目になるとはな」
ボロボロになった身体を最低限の魔力消費で癒しては溜息を吐く、俺の戦闘の基本は魔力量が左右する。以下に強力な機兵をアルシャが用意しようと現状では俺に軍配がある、だが、数の暴力となると話は別である、雑魚であろうが、破壊するには創造魔術を使う。そうすれば魔力を消費する、無論相手の数は一体ではない
「…さて、どうするか…ここまでしてくれたんだ。やり返さない理由はないよな…あいつがやろうとしてた事は…」
靄の掛かったような頭を振りながら、考えをまとめる。以前は魔力が尽きかけていてもこんな状態にはならなかった…原因も不明、だが…何か大切な物を忘れている、そんな気がするのだ
「あのエルフ…俺のコピーと言っていたが、本人の言う通りなら能力…創造魔術のみを真似ている…肉体はアルシャが設計したオリジナルか…?肉体がエルフなのは魔力の容量が多いからだろう…だが」
何処かは分からない、あのエルフの顔が鮮明に映し出されるのだ。そして、過去に何処かで見た事がある。そこまで考えては酷い頭痛が襲ってくる、吐き気も加わり思わず横になってしまった。急な体調の変化に冷や汗を垂らしながら呻くうちに意識を手放した
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「ルイン…本当に良かったのか…?」
「えぇ…ハンナに任せておけば大丈夫よ」
シオンの問いかけにこくりとルインは頷く、今回は比較的大規模な作戦の為、魔王城に十分と言える戦力は無い、其処にクレアとハンナを残して来たのが心配とルインが気に病んでいたのだ
「…やる事やってさっさと帰れば大丈夫よ。防衛だけならハンナで十分さ」
体面に座るキラーメイルが武器の手入れをしながら言えば、あー見えて容赦ないから…ハンナ…と実体験を語るように遠くを見ながら呟きをこぼして
「ハンナに何かしたのか…?」
キラーメイルの隣で本を読んでいたセレナがキラーメイルから漂う雰囲気に若干引きなら問い掛ければ、キラーメイルは肩をびくっ!と跳ねさせて口笛?を吹いてごまかした
「…どうやって口笛を吹いているんだ…?」
シオンの疑問はセレナも同じらしく目を合わせては首を傾げていた
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朝から大声を上げなら騒ぐ者、静かにその場を楽しむ者、酒場はいつ来ても賑やかである
フォルカとラリサは両開きの扉を押し開けては中に入り、騒ぎを起こしている一団へと目を向ける
「朝から元気だなぁ…まぁ、いつも通りか…」
「気にしたら負けよ?さ、マスターの所に行きましょ」
へいへい、っと軽口を叩きながらラリサの後にフォルカがつづく。近寄る此方に気が付いたのか、無精髭を生やし、白髪交じりの短い髪をした。強面の老人が此方を見ては顔に似合わず、優し気に微笑みかけて来る
「いらっしゃい、何にする?」
「軽いお酒を二つ。後、情報を集めてるんだけど…いいかしら?」
「構わないよ、席はそこに座ってくれ」
ラリサの注文に頷くと目の前のカウンター席を指さしながらそう言い、酒瓶等が綺麗に並べられている棚に向かう
「なぁ、ものすごく手馴れてるの何でだ…?」
「いつもここに来るの。新しい仕事とかアイテムとかの情報を貰いにね、どう言う訳かギルドより情報が早い時があるから」
成る程な…と頷きながら過去に何度かあった出所不明の情報はここの情報らしい、無論。絶対にあっている保証はないが…そこまで考えるとラリサの隣の席に座るとマスターがグラスを二つ持って戻って来る
「おまち、それで…何が知りたいんだ?」
「最近ふって沸いた噂について教えて欲しいのよ」
「噂…?お前さん達が気にする様な噂はないと思うが…」
「なんでもいいの、ここで耳にした噂なら」
ラリサとマスターがひそひそと会話しているのを聞きながらフォルカは周りを見渡す。普段は見ない顔が酒場に多いのだ
「なんでも…ねぇ…あぁ、そう言えば最近ぼろ切れを身体に巻いた奴が十字架を持って街を練り歩いてるらしい、それも一人じゃない。そいつの後をつける様に同じ格好をした奴らが沢山いるらしいだ。それになんでも魔王を恨んでる奴らが混じってるんだか、やけに魔族に対して悪い事を言い回ってるだとさ」
俺には関係ないけどな、今や帝国の前にそんなの関係ないさ。と言ってマスターは新たに来た客の対応にカウンターから離れていった
「ふーん…結構派手に動いてるんだな」
「そのようね。その奇妙な奴を探してどんな事を言っているのか…そいつが元なのかそれとも裏に何かいるのか…調べないとね」
「あぁ、一旦報告に戻ろう。もしかしたら、結果が出てるかもしれない」
代金を払って酒場の戸を開けて外に出ればうっすらと空が暗くなっていた。そんなに時間が経っていたか…?と首を傾げながら妙な違和感に首を傾げるフォルカだった
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フォルカ達が出て行ってから数分、ギルドの制服を着た獣人がルーに近寄り耳打ちをする。その後、そっと紙の束を手渡した
「アンケート用紙…?」
アナンの質問に小さくルーは頷き、ベル、アナンを二階の自室に案内した
「さて、取り敢えずはアンケート用紙が集まりました。あぁ、なんでこんなに早いのか。それは事前に配っていたからです」
提出して有益な情報があれば少し報酬金も出してますしね。集まりは良いでしょうっと、言いながらテーブルに用紙の束を置いた
「流石、ルーさんね…ちなみに報酬金の出所は…?」
「アーロンのお金ですよ?」
ケロっと当たり前のように言うルーに心の中でアーロンに合掌する二人だった
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「なんだ、これは…?」
気が付けば小さな子供部屋に立っていた、木製の積み木やぬいぐるみ、それらが散乱した部屋だ
「夢…か…?」
夢に間違いは無い。だが、リアルだ…勿論、家具やベッドに触ることは出来ない。それでも現実との区別が付かない程に目の前に広がる部屋に昔の記憶を思い出させられる
『おかーさん、何読んでるの?』
『ふふ、貴方にはまだ早い読み物よ』
ふと聞こえる、子供と恐らく母親の会話。心臓を高鳴らせながらドアをすり抜け、部屋から出る。そこには一つのテーブルに三歳ぐらいの子供と一人の女性がいた。知っている。この女性もこの子供も
「…俺の、記憶…?」
今はもう見る事のできない昔の、人としての幸せを気が付かずに享受していた頃の自分、そして、魔女狩りと称され生きたまま焼かれ、殺された母親
『えー、教えてよー』
『だーめ、ステルベルがもっと大きくなったらちゃんと教えてあげるから、ね?』
『おにーちゃん…何してるの…?』
しばらく、子供がぐずっているとその男の子よりも小さい女の子が奥の部屋から現れた
「…セレナ…」
現れた女の子を見て、ステルベルは動揺した。なぜこの記憶を忘れていたのだろうか…?親を妹を…
すると、視界が急に暗転し。泣け叫ぶ子供と縄で縛られ、恐らく殴られたのであろう。口から血を流し頬が腫れた母親が子供に語り掛ける
『いい、ステルベル…私はもう助からない。だから、私のお願いを聞いて…貴方だけは逃げなさい。この街から遠くへ』
子供は泣き声を殺しながら何度も頷き、家を燃やし家族を殺した貴族の顔を忘れなかった
その少年は魔法と言う力を持ち、生まれた町に戻って来ては貴族の虐殺を働いた
あぁ…そうか、胸糞悪いと感じたのは名前もだったのか。顔も名前も人の頭を覗いて死んだ妹を模っていたからか
「…ちっ、アイツは仕留める。人の記憶を覗きみした対価はデカいぞ」
気が付けば夢から覚め、横の岩肌を拳で殴る。岩が砕ける音を聞いては魔力が回復している事を確認し、入り口を見つめた
セレナ「…!」
シオン「どうした…?」
セレナ「いや、…寒気がして…」
キラー鎧「何々、風邪?俺様が温めてあげようか?」
セレナ「血肉の無いお前に体温などあるのか…?」
キラー鎧「真面目な質問で返されて凹みそう…(くすん」