種明かしと誤解
?「うー…ん…」
ル「ふふ…♪」
ア「こうして見ていると親子か姉妹だな」
キ「妹の方がいいんじゃね?魔王の年齢的に」
ア「そ、そう。だな」
キ(すっげぇ、動揺してる。売れ残りか?)
ア「溶かすぞ?」
キ「ばれた、だと!?」
「それで、これは…どういう状況なんだ…?」
第一声はアルダ、スヤスヤと涎を垂らしながら眠り続けるフィルとボコボコに歪んだ顔なしの鎧が馬車で待っていたのだ、無理もない
「いやいや、それはこっちのセリフでしょ。何その可愛い生き物」
歪んだ鎧、キラーメイルが指差すはルインにしがみ付きこの半分だけをルインの影から出す女の子
「…動く鎧から質問されるのは生まれて初めてだ…」
「…こいつはキラーメイル。念の為にと袋に詰めてフィルに渡していた仲間だ」
「ひでぇ目にあったよ。全く…フィルの嬢ちゃんなら今は寝てるし、怪我も直した。放置しておけば元気に起きると思うぞ?」
ほれこの顔、と言いながら隣のフィルをつつくキラーメイルに呆れた溜め息を吐くアルダ
「…後で話は聞く、今は帰るぞ」
「それは賛成、汚れ落としたい、歪みも直したい」
そう言って馬車に乗り込むアルダとフィルを端に寄せて座るスペースを確保するキラーメイル、そのスペースにルイン達を乗せて前に座るシオン
「ごめんなさいね…」
「構わない、その子の名前を考えておくといい」
「うんっ」
ゆっくりと馬車を進めながら山を下って行く、キラーメイルの話では反対側にも同様に帝国の死体捨て場があり、そこでネクロシャドウと言われる凶暴な魔物が生まれていた事、またその個体はかなり特殊だったらしくその攻撃を受けたフィルはキラーメイルの手当てを受け、眠っているらしい
「っと、言う訳よ。いやぁ、死体を根城にする魔物は厄介な奴ばかりでホントにもう、めんどくさいね!」
「私からしてみれば、その手の魔物とお前も同族に見えるんだが」
「それ言います!?あんなのと一緒にしないで!?」
「…どこが違うのだ…?」
アルダに真顔で言われるとその場でのノ字を指先で書き始めるキラーメイル
「そ、それよりも…みんな無事でよかったわね!」
「あ、ああ。そうだな」
慌てて話題を変えるルインに即座に乗っかるアルダ、一応悪気があるらしい
「気になる事があるんだが…あの手紙の内容。あれは本当のことか?」
「手紙?ああ、アーロンがお前を引っ張り出す為の嘘の事か?」
「…嘘だと…?」
「洞窟の入り口での会話を覚えているか?反逆罪がどうのと言う奴だ」
「あ、ああ…覚えているが…?」
「反逆罪などアイツにかけるつもりはない、あの会話もアーロンからの指示でな。私に悪役をやらせるとは…全く…だが、王都に帝国と繋がってる奴を探ってるのは事実だ。それに、Sランクの冒険者は現在不在でな…相手が相手だけに普通の冒険者は連れて行けなかったんだ…それをアイツに相談した結果こうなった訳だ。あぁ、そうそう、あいつの処遇は任せる」
すまないな、と申し訳なさそうに頭を下げるアルダにぽかんと口を開けたまま固まるルインとそれを聞いていたシオンは頭を押さえてため息を吐く
「普通に頼めば良いだろうに…いや、普通に頼めない理由があったのか?…フィルにもそういう指示を?」
「いや、あいつが私の事を嫌っているのは事実だ」
そう言って若干落ち込むアルダ、やはりと言うべきか…彼女は善人の様だ
「そう、か…なら後で殴るとしよう。取り敢えずは魔王城に向かっても構わないか?」
「ああ、問題ない」
暫く馬車に揺られながら魔王城を目指す途中、フィルが目を覚ましキラーメイルに感謝しながら大泣きする事件があったが、それ以外は何事もなく平和だった
…
…
…
「ゴミ捨て場の機兵が破壊された?そうか、それは残念だ…使い道もあったんだが…」
薄暗く液体の入った人一人が入りそうなガラスのポットがいくつも設置された部屋で女は報告の通信越しでため息を吐く
「何、破壊した連中は予想できている。魔王軍…もしくは冒険者だろう。王都の軍は動かないさ、絶対にな」
そう言って通信を切り後ろを振り返る、一際巨大なポットに近づいては中を覗くように顔を近づける
「あの戦争で勇者を苦しめたと言われる存在。完全再現とは言わないが…十分使えるな」
不気味な笑みを浮かべながら女は部屋を出て行く、場所は割れているんだ。飽きて来た事もあるしそろそろ退場して貰おう。絶対的強者が弱者を娯楽として潰す、その楽しみに女は笑みを深くした
ア「いいいがぁぁぁぁあ?!!!?」
ルー「質の悪い手紙におさぼり癖、ここで死を持って償ってもらいます」
ア「待て待て?!これにも理由があるの!?ほら!ここに重役の膿共の情報まとめてあるでしょ!?調査してたんだよ!?」
ルー「では、情報だけ頂戴して目を抉ります」
ア「ひぃぃぃぃ!?」