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Paradox-魔王姫を守護するは召喚されし剣士-  作者: 雪月花
エルフの隠れ里 フォルン
31/48

隠された力

おはようございます!こんにちは!こんばんは!

雪月花でございます!

次でフォルン編は最終回でございます!

ではでは、お楽しみください

「はっ、ついやっちまったぜ。…勿体ない事をしたな」


一本の試験管を懐から取り出しては器用に右手だけで蓋を開け、緑色の液体を飲み干す。試験管をその場に捨て"ちょっとした聖歌魔法"を発動させれば腕は生えなおり、全身の焼き爛れた皮膚も全てが無かったかの様に治って行く


「ちっ…相変わらず嫌な感覚だぜ。さてっと、残りを始末して焼くか」


右肩の埃を左手で払いながら生えなおした左腕の感覚を確かめる。黒い氷で覆われた一か所を見ては再び溜め息を吐く


(良い実験対象だったんだが…死んでるよなァ)


そんな事を考えながら背を向けて歩き出そうとした瞬間、膨大な魔力と共に氷が弾け飛ぶ


「!?…おいおい、まだ…生きてるのか?」


つい使ってしまったとは言え自分の中では最大級の"自作"した氷結魔法を喰らって生きている奴が要る事が嬉しかったのか、興奮した様子で振り向き異質な魔力量に顔を顰める


「すまぬのう…少しばかり変な物を見るかも知れぬが…許せ」


「は…?」


煙が晴れ姿を現したのは"女"だった、先程迄実験対象…シオンが転がっている場所に女が現れたのだ。奇妙な事にその女は白狐を連想させる見た目に尻尾や耳まで生やしている、更に言えばシオンと同じ格好なのだ、服の汚れや傷を負った場所も全て同じ…


「まじかよ…本当は女でしたと言う落ちか?」


「くくっ…面白い事を言うのう…まぁ、無理もないかのう?」


狐女の言葉に首を傾げながらも警戒は怠らない。何故?それは自分の魔力残量が少ないという事もあるがなりよりもこの女…俺より上の存在だ



意識が戻ったシオンは軽く混乱していた、意識が戻れば声も口調も黒桜のモノになっており更に言えば身体の自由も無い。何よりも


(何故女になっている!?)


『なんじゃうるさいぞ?今からこやつを追い出すのじゃから静かにしておれ』


(いや、だが…分かった、後で説明してもらうぞ)


『くく、了解じゃよ』


内側で無言で叫びながら今更黒歴史が増えとるは…と嘆くシオンに対し黒桜は少し上機嫌にステルベルを見据える


「ひとつ言おう、今からでも遅くはない。ここから引いてもらえぬかの?」


「またそれか…いい加減聞き飽きたぞ?」


「ふむ、そうか。なら…仕方あるまいな」


ふっと黒桜の姿が消えたかと思えばステルベルの背後から灰黒刀が迫る。だが、ステルベルは避けるそぶりも防ぐ事もせずそのまま刀が迫るのを見ている、黒桜の振る刀はステルベルに触れる前にピタリと止まり、灰黒色の魔力も霧散してしまう


「くくっ…解析完了だ。どうだ?驚いたか?」


心底嬉しそうに刀を指で摘まみ逸らしては黒桜を見つめる、自分よりも格上だと判断した相手の初撃を無効にしたのだ、嬉しくないはずがない。対する黒桜はにやりと口角を上げる…瞬間、刀に鈍い光を放つ灰黒色ではなく輝きを放つ灰色が灯る、目を見開くステルベルを置き去りにその刀を無造作に一閃、ステルベルの身体から派手に鮮血が噴き出す


「がっ!ぐ、ぁ!?」


何故?ステルベルの脳内は疑問で埋め尽くされる。今まで確かに絶対障壁が突破される事はあった、全身を覆いかつ強力な攻撃などは防ごうとせず避ける事が多いのはその為だ、だが、障壁が突破される事はあっても…


「破壊された、だとォ…?」


障壁の反応そのものが無くなったのだ、あの灰色に輝く刀身に触れた瞬間、何の抵抗も無くまるで空を切る様にだ。信じられないと言った表情で血を吐き出しながら膝を着くステルベル、それを見ては黒桜は口角を吊り上げる、が


「ふむ、やはり強力な力じゃな…じゃが、反動が大きいのう…」


眉間に皺を寄せながら右肩を押さえる、つぅ…っと腕から血が流れ、刀を伝い地面を赤く染まる。強力なのは良い事だがやはり今は無理じゃなと結論を出し、ステルベルを見下ろす


「はぁ、はぁ…ちっ…!」


「今一度聞こう…退いてはくれぬか?」


「…俺を逃がすと?」


ステルベルは黒桜を睨み付けながら唸る様に答える、発動しない創造魔法に苛立ちを募らせながら


「さよう、お前を殺すのは妾ではないからのう…」


「ハっ、それだけの力を持っておいて何言ってやがる」


「どうでも良い事じゃ、退くのか退かぬのか…どっちじゃ?」


「癪だが退かせてもらうぜェ…」


そう言えば、ステルベルは機械仕掛けの球を使い転移魔法を発動させる、その場から消える瞬間まで黒桜を怒りの形相で睨み付けて



(終わったか…)


『うむ、主の力を少し使わせてもらった、反動が大きいから痛いぞ♪』


(嬉しそうに言うな…)


『くくっ、さて、戻ろうかのう?』


(ああ、そうだな。早く解いてくれ)


黒歴史を抹消したい、と思いながら待っていると里に向かって歩き出す黒桜


(ち、ちょっと待ってくれ、戻るんじゃないのか?)


『戻るのじゃよ?皆の所にのう?』


(…まず、その姿を解くのが先だろう!)


『何を言う、先の力の反動で解いた瞬間に激痛で動けなくなるぞ?今は周りに人がおらぬ、また行方不明になるつもりか?』


(ぐ、ぐぅ…だが、此処は里に近いし戦闘跡だ。誰かが見つけてくれる!)


『歩けるのじゃから帰るのが当たり前じゃろ♪』


(見せつけたいだけかぁぁぁぁぁっ!!!)


むふふっ、と嗤う黒桜はそのままルイン達が居る所へと走り始める。内側で色々と妨害を試みるが何も効果は得なかった



全ての機兵(キメラ)が機能を停止、撤退して行く様子を教会から眺めながらルインは呼吸が安定したセレナを眺める、先程まで危険な状態だったが急に安定したのだ。額に汗を拭いながら一息吐く、すると後ろの扉が開け放たれ、誰かが入って来る。ドキリとしながらゆっくりと振り返る…其処には灰黒色の長い髪を靡かせながらゆっくりとした足取りでルインへと真っ直ぐ近寄って来る


「貴女は…誰?」


「ふむ、それは今は答えないでおこうかのう…ほれ、受け止める準備をした方がいいぞ?」


「…ふぇ?」


ぽかんと頭の上に?を浮かべるルインを他所に女性は更に近付き囁く様に、他言は無用じゃぞ?と言い残しルインに倒れ込む、慌てて女性を支える様に抱き留めると違和感に気が付く、倒れて来た女性はシオンになっている事に軽くパニックになるが、手に付いた大量の血に目を見開く


「っ!?シオン!?」


シオンを横たわらせては慎重に治療を始める、彼が此処までボロボロになったのは初めて会ったあの時以来だ。目を閉じてはゆっくりと言葉を紡ぐ…身体中から吹き出す血が止まる様に裂ける身体の傷が跡も残らず消える様にと祈りを込めて…



「…いつ来ても綺麗な場所だな」


手の平に器用に黒色の桜の花を乗せてはふっと微笑む。すると前から人影が近寄って来る、無論。黒桜なのだが…黒桜はその手に手を重ねながら顔を覗かせる


「くく…そう言ってもらえるとありがたいのう…此処に呼んだ理由じゃが…主の力について少し説明しようと思ってのう」


「…俺もそれが聞きたかった、何故…ステルベルに攻撃が通じたのか。妖術は防がれていた…その後使ったのはお前の力ではないのか?」


「残念じゃが妾の力では無いのう…主がまだ自覚していない力を一時的に引き出しただけじゃ…まぁ、無理矢理引き出した分反動は大きい…すまぬのう」


しゅん、っと落ち込みながら謝る黒桜に思わず吹き出してしまう。すると、きょとん?と何故笑っている?と言わんばかりに見つめて来る黒桜に軽くかぶりを振る


「いや、謝る必要はない。今はまだ使えない力という事なんだろ?なら、いつか使えるようにするだけだ、皆を守る為にな」


「くく、前向きじゃのう…どうしても必要になったらしっかりと指南するから安心すると良い」


「ああ、その時は頼む」


微笑みながら頷く黒桜に礼を言いながら目を閉じる、早く起きないと心配を掛けてしまう。ゆっくりと沈む意識の中、脳裏に見た事も無い景色が一瞬だが映し出された、なんだ?と思う間もなく真っ暗になった



「すまぬのう、主…」


現実に戻るシオンを見届けながらぽつりと零す、どこか遠き光景を眺めながら黒桜は震える。あれを使ったことが切っ掛けにならなければいいが、そう願いながら桜を見上げ目を細める


「あの力は…そんな立派な物じゃない…だが、立派な力として扱う事もできるかも知れぬ…いや、そうなる様にするしかあるまい」


自分にとっては最近の記憶を思い出しながら花弁を手の平に乗せ、そっと息を当てて飛ばしてはその場から空間に溶けるように姿を消していった

シオンの力について黒桜は何か知っているようです。そんな回でした!

TS?違います。あれは黒桜です(真顔

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