私は大好きなお父さんの秘密を聞いた。
少年は願い、少女は求めるシリーズ第14弾
私の名前は、ミミ。
七人兄妹の四番目。昨日誕生日を迎えて、七歳になったばかりなの。
私のお父さんとお母さんは冒険者をしているの。冒険者として、有名でね、お父さんとお母さんがギルドに顔を出すとね、みんながわって騒ぐんだ。それにね、二人とも凄く強くて、たくさんの人を助けているんだ。
私は、そういう姿を生まれた時からずっと、ずっと見てきているから、いつか、二人のような立派な冒険者になりたいって思ってならないの。ふふふん、両親の遺伝子ってやつ(何かよくわかんないけどお父さんが遺伝子って言葉使っててかっこいいと思って使うようになった)を受け継いでいるのもあって、冒険者として将来やっていけそうって言われたの。お父さんもお母さんもあまり危険なことしてほしくないっていってたけど、私は冒険者になりたいって思ってならない。
一番上のクル兄は冒険者ではなくて、菓子職人になりたいっていって今修行中なの。魔法の才能あるけれど、お菓子で人を幸せにしたいっていってた。私、クル兄の作るお菓子だーいすき。会った時にね、お菓子を作ってくれるから、私は沢山家族で訪れた場所の話をするの。でも、クル兄はさ、色々な景色を見たいとも言ってたから、将来的に店を持つではなく旅をしながらお菓子を作っていくって感じにしたいっていってたの! クル兄も菓子職人の修業を行うまでは一緒に色んなところで暮らしていたし、強いし、その夢叶うと思うんだ。
二番目のイリ姉は今学校に通っている。元々頭が良くて、私ぐらいの年の頃には天才だって騒がれてたんだって。イリ姉凄い! って私は何度も言うけど、イリ姉は「ミミもその年で戦えてすごいわ」っていってた。
三番目のラク兄はまだギルドに個別で登録できる年でもないから、一緒に旅している。でもお父さん、お母さんから冒険者としてやっていけるといわれてるんだ。15歳になったらソロ活動する! って言い張っている。
で、四番目と五番目が私と双子の妹のナナ。
私たちも将来冒険者になりたいねー、二人で頑張ろうねーって言い張っている。ナナは少し無口なんだけど、とっても優しくて、私ナナ大好き。ナナも私のこと好きっていってくれて、わたしたち仲良しなの!
六番目はキティナ。私より二歳下で、活発な妹。
七番目は、ルクサナ。まだ二歳になったばかりの、おとなしい弟。
お父さんとお母さんは色々なところを旅していて、沢山知り合いがいて、人気者なんだ。二人が依頼に出かけている間に、ギルドの冒険者たちによくしてもらったりもした。中には、面倒な人もいたけど、私たちは楽しく過ごしている。
その日はね、お父さんとお母さんと一緒に砂漠の地方にきてたんだ。でね、オアシスが有名な街で過ごしていたらお父さんが声をかけられたの。
「ディーク!」
「シュン……? どうして、ここに」
お父さんに声をかけたのは、お父さんと同じ年ぐらいの男の人。その傍には、何人かの人が居たんだけど、私が真っ先に目についたのは、どこかお父さんにそっくりな男の子だった。
お父さん、にそっくり。
そう思ったのは私だけではなかったみたい。
「……似てる」とナナもつぶやいていた。
それから、仕事の予定だったみたいだけど切り上げて私たちはホテルに向かった。お父さんと、そのシュンさんはどこかぎこちなかった。
喧嘩したのかな? お父さんが何処か泣き出しそうな目でシュンさんを見ていてこっちまで泣きたくなった。お父さん…を苛めるなって出ていきたかったけど、お母さんに止められた。
お父さんが大好きなお母さんが止めるならって、私たちは我慢した。
……お父さんの昔の話、私はあまり知らない。お母さんと出会ってからの話は沢山聞いたけど、それ以外は聞いていない。お父さんの、昔に、この人はかかわる人なんだろうか。
もやもやしていた。でも、とりあえず私たち兄妹は口出しはしなかった。
夜になった。
眠っていたけど、隣の部屋から話声がして目が覚めた。
ドアを少しだけあけて、覗いたらお父さんと、お母さんと、シュンさんと、あのお父さんに似た男の子がいた。
「………隼人が、兄上の子?」
「……そう言ってた。リュシュエル様は。その名が出るってことはやっぱりディークは……」
「はは、馬鹿みたいだろう。二回続けて、奪われるなんてさ」
「ディーは、馬鹿みたいじゃないわ」
何の会話をしているのか、さっぱり分からなかった。聞きなれない名前を口にして、お父さんは自虐的に笑って、お母さんはそれを否定していた。
「ごめんなさい。父上たちが……俺、以前ディークさんとミーナさんに助けられるまで、何も知らなかった」
男の子は、謝ってた。泣き出しそうな顔で。父上、なんて貴族様が使うような言葉を口にしているということは貴族? お父さんはなんで貴族と知り合いなんだろう。
「いいんだ……。今は、ミーナに、子供たちがいるから……。それに……隼人の、こと伝えてくれてありがとう。少しだけ心が楽になった」
「それにしても、はた迷惑ね。昔も今も私のディーにどれだけ迷惑をかけているの、その子」
お父さんは謝る少年に吹っ切れたように言って、お母さんは少し怒っていた。
それから色々話していたけど、子供の私には何の話かさっぱり分からなかった。ただ、男の子が、
「……ディークさん、ディーク叔父さんって、呼んでもいいですか……?」
「あ、ああ、それは構わないけど。実際兄上の子ならそうだろうし」
っていうか、スルーしちゃってたけど兄上の子っていっている! お父さん貴族様だったの? と混乱した。そうしていたら、お母さんと目があった。驚いて、ベッドに戻った。
だからそれ以上の話は盗み聞き出来なかった。
翌日お母さんに「ミミがもう少し大人になってディーがいいっていったら、話してあげる」って言われた。
でもまぁ、貴族様だったとか、お父さんに秘密があろうが、関係ないよ! だってお父さんはお父さんだし、私お父さん大好きだもん。
――――私は大好きなお父さんの秘密を聞いた。
(お父さんは、どんな過去があっても私の大好きなお父さんだよ!)