プロローグ
20XX年7月21日
モリ・ヒカル(27)
○×商事に3年勤め、ノウハウを吸収しついに念願の自身の会社を設立した。
設立二年目。資本金一千万円。社員数10名の小さな会社だ。
順風満帆売り上げを伸ばし、ついに今日は社運を賭けた大手企業との商談へと
足を運んだ。
しかし、モリは気づいてしまう――
「なっ・・・に・・・」
胸ポケットにいつも入れているはずの万年筆がない。
「どうされましたか?」
商談相手に悟られないよう、モリはそのまま話を進めようとする。
「本日はお招きいただきまして誠にありがとうございます。
御社にてご検討いただき発注いただきました我々の―――」
「少々・・・よろしいですか」
その言葉を聞いた瞬間モリは自分の運命を悟る。
「あなた・・・ペンをお持ちじゃないですね?」
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20XX年日本。ビジネス至上主義世界。
最低限のビジネスマナーを弁えない者に成長はなく、
日々躍進していく企業の中蹴落とされ、淘汰され
倒産していく。
モリの起こした今回の失敗で、この取引先との商談は勿論
グループ企業、この企業を得意先とする企業には
「ペンを忘れてしまった」噂を広げられ商売が成り立たず
モリはどん底に立たされていた。
「あれから一週間・・・」
「こんなはずじゃなかった・・・」
「社員からの信頼もどん底に落ちた・・・もう残ったのは・・・二人・・・」
「いったいどうすれば・・・」
雨が降り出し、傘も差さず打ちひしがれ公園をフラフラしていた。
自動販売機の下と、釣銭箱をのぞきこむ。
すると銀色に光るものを発見する。
「これは・・・一円玉だ・・・!」
かつての会社の師の言葉が胸によみがえる・
(モリ君・・・一円を笑うものは必ず一円に泣くよ。)
「僕は・・・大企業とのコネクションの為に・・・大企業との
関係を持つことだけに固執して本来あるべき利率を守っていなかった・・・」
「もっとだ・・・!欲に目がくらみ社員をないがしろにしてしまった!
このままいけば確実に一日の労働時間は23時間になってた!」
「僕は・・・なんてことを・・・」
「師匠・・・!!」
その時その一円玉が輝きだし声が聞こえる。
「力が・・・力がほしいか」
「なっ・・・!!」
「夢でもみているのか・・・!?」
手に握る一円玉から直接脳に言葉が送られてくるのが直観的にわかる。
「汝力がほしいか・・・」
「僕は・・・」
(夢であっても・・・頼むのは無料だしな)
「僕は力がほしい!!」
「契約はここに取り交わされた・・・」
声が消え、あたり一帯に何ら変化はなく、ただ雨が降るばかりであった。
「ハハハ・・・変な妄想だったな・・・」
が、モリは違和感を覚える。
「ない!・・・僕の万年筆がないぞ!」
あの失態以降必ず胸ポケットに万年筆を入れ、
朝アパートを出るときに万年筆チェックシートにチェックをしている
モリは万年筆を忘れることなどあり得るはずもなかった。
「馬鹿な・・・携帯連動機能で万年筆チェックを・・・チェック済みだ!
どこかで落としてしまったのか・・・・?一本3万円もする万年筆が・・・!」
「三万円を笑う奴なんていねえよ・・・もどってきてくれ・・・!」
その時、胸ポケットにどこからともなく万年筆が現れた。
思わず目をこする。
「ポケットと生地の間に入り込んで、動揺してなくしたと思い込んでしまったのか・・・?
まさか!」
モリは心で万年筆をイメージする。
「消えろ!」
するとモリの胸ポケットの万年筆は音もなくどこかに消えた。
「ま・・・まさか・・・出てこい!」
胸ポケットに万年筆が現れる。
「まさか・・・僕の能力は・・・胸ポケットの万年筆を出し入れする能力!?」
<プロローグ完>
思い付きで書いてるので気が向くままに書きます。
お作法とか全然知りません。
飽きたらごめんなさい。