Act;1
ジリリリリリリリィィィィィ!
鳴りやむ機能がすっかり破損してしまった目覚まし時計のアラームみたいに永遠と繰り返される警報に急かされるままに走る。
自動清掃が定期的に行われているからか誇り一つどころか丁寧なワックスがけによってピカピカな床を汚してしまうことも厭わずに勢いよく蹴り上げていく。
このだだっ広い空間を毎度のように磨き上げる自動清掃には頭が上がらない気持ちでいっぱいだけれど、今だけは勘弁してもらおう。
こんなこと今まで一回もなかった。
侵入者が入った、いや、警報が誤って鳴ったことさえ一度もないのだ。
それが本物の侵入者だなんて……!
もうっ、どうなってるのよ。
苛立ちを踏み込む足に込め、速度を上げる。
いろいろ不可解な点はいくつもあってまだ頭はスッキリしないけれど、そんなことは後回しだ。優先事項は現場の確認だ。
手元にある簡易見取り図を元に右往左往しながらもようやくたどり着いた。
暗証番号で厳重にロックかけられている扉を手早く開こうとして手を止める。
侵入者がいる。だからこそ警報はいまだに鳴り続けている。
ということは相手は何を目的でここにいる?
ゴクリッ、唾を飲み込んだ。
あり得ない……ことこそあり得ない、か。
現にここは既にいつも自分が慣れ親しんでいるターミナル内じゃない。侵入者を許してしまった非日常の空間へと変化を遂げているではないか。
ならば、いざということもあり得る。
腰からぶら下がる異物が声を上げた気がした。
鈍く黒光りする重々しい銃火器――前代の管理者からの遺産でもある拳銃が視界に映り込む。
これを使うのか?
そんなことを自問する。
いつも持ち歩いてはいたけれど実戦経験は皆無の拳銃。
年の為よ――。自分を説き伏せ、カナタは異物へと手を伸ばした。
形見であるそのゴツイ代物はずっしりと重量を感じさせた。
両腕が持っていかれる、そう思わずにはいられないほどに。
『その重さを噛みしめなさい。それが――』
懐かしい声。懐かしい言葉。記憶が語り掛ける事実。
すうっ。
深く、深い深呼吸でまどろっこしい思考をクリアにする。
余計なことは要らない。
ただ、冷静に。
そして少女は勢いよく飛び込んだ。




