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ドクン……。

ドクン……。


小さな鼓動が脈を打つ。

ドクン……、ドクン……。

音のレシピに沿って演奏する楽器のようにリズムを取るそのささやかな音色は今にも消えてしまいそうな音量で、けれど消える気配が全くないままに正しいリズムを刻み続ける。

そんな中、鼓動とは全く別物の音が広がる。

同じ空間から発生するものではないのにきちんと中まで響く高い音。

僕は知っている。

この音は優しい音。

優しく、正しく、強く、美しく。

そんな音であることを僕は知っている。


「……異常なし、と。次に行きますか」


同じ時間に必ずやってくる音を引き連れ、美しい声は告げた。

まだ年端もいかない声の女の子は来た道へと踵を返し去って行く。

何故かは分からない。けれど彼女は僕にとって悪い存在ではなかった。

むしろ親近感を感じさせ、安心感を与えてくれるもの。

話したことはない。

近づいたことさえもない。

それでも僕は彼女が好きだった。


時間が過ぎゆくように、いつかきっと僕もここを去る。

新しい居場所を見つけ芽吹くことになる。

その期限はそんなに遠いことじゃないことももう理解している。



だから。

最初で最後のワガママをしよう。

この不安を消し去るために。

あの優しい彼女と触れ合うために。



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