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chapter.1

※異世界で殺されかけるなど誰が予想できたでしょう?

 加筆修正での再投稿。


此れから、予告なく多少の残酷描写、性描写を含む場合があります。

 * * *


「じゃあ、また明日。」


友達の言葉に明日、と軽く返して家までの長くもなく短くもない道をただ歩く。

思わず一つ小さな溜息を吐いてしまう。

日常に不満はない。

生活に不便もなく、友達も其れなり、勉強も其れなりに出来るのだから十分だと思う。

でも何か物足りない。

刺激が欲しいというか、其れも違うような。


多分、自分が〝平凡〟だからただの日常とかが嫌いなのだろうか。

そういうものだと、勝手解釈をして考えるのを放棄する。

そういえば、読み途中の本に太宰治の人間失格がある。

太宰治の自伝ともいわれている遺作、人間失格は共感出来る部分が多数あった。

特に、と面白かった部分を思い出している最中に視界を黒猫が横切った。

黒猫は特別珍しくない。

にも関わらず何故か黒猫に注目した。


「おいで」


手招きすると人慣れしているのか、にゃぁと鳴いて近くに来る。

真っ黒な毛を眺めていると首に巻かれた革に気づいた。

首輪だろうか。

ごめんね、と前足を持ち上げると革に英単語が彫られている。


【refuse】


英語は特別得意じゃないが特別苦手でもない私の大好きな〝普通〟である。

確か拒絶する、という意味と(ちり)という意味があったような。

猫にそんな名前をつけるだろうか。

其の人はきっと普通でないのだろう。

猫がかわいそうだ。

黒猫がにゃぁ、とまた鳴いて私の手から逃れる。


「あ、何処行くの」


早く家に帰ったからといって課題を早く終わらせろと親に口うるさくいわれるくらいだから、と黒猫の後を追う。

にゃぁ、と私がついてきているのか確認するかのように黒猫は時々振り返り鳴く。

其のまま、暫時追いかけていたら見知らぬ路地に出る。

あれ、私は何処をどう進んで此処まで来たのか。

黒猫にばかり注目して全然周りを見ていなかった。

黒猫は何処だ、と此処等辺に居た筈の黒猫を探すと何故か其処に存在する古い井戸に飛び込む処だった。

云いたい事が色々ある。


「危なっ」


何故こんな処に井戸がある。

手を伸ばしたが、間に合わず後ろから誰かに背中をおされたような感じがした後、抵抗虚しく


「嘘だぁぁぁぁぁぁぁ・・・」


落ちた。


 * * *


井戸というのは、地下水をくみ上げる為の採水施設であり


「何処まで落ちれば気が済むの・・・」


底なしではない筈なのだ。

うぅ・・・・・・・此れは少し気持ち悪い。

手入れがされていない処に頭から突っ込んでいるのだ。

・・・・・・もう無理だ。頭に血が昇って意識がくらくら、否、ぐらぐらぐちゃぐちゃする。

私が生き残れる蓋然性は低い。

せめて楽に逝こうではないか。

どうか神様なんとか仏様。

私は今迄善行というほどではないけれど、其れなりに良い行いは続けてきた心算です。少なくとも悪い事はしていません天地神明に誓いますともええ誓います。

だからどうか痛みなく死にたいのです。

来世では神職にもつきますええつきますともだからどうか、痛みのない死を私に。


 



目が覚めたら、暖かい部屋、柔らかいソファで安らかな睡眠を得ていた。

どうやら私は死ななかったらしい。

神様どうもありがとう。

周りを見回して、此処が誰かの仕事部屋である事を確認する。


「・・・・・・・・・・・・・・・、」


物事を客観的に捉え、冷静に判断することが生き残る術と何かの本に書いてあった。

冷静になれ、冷静になれ、と自分に暗示をかける。

明らかにおかしい、当然の疑問が二つある。

一つは井戸に落ちた筈の私が此処に居るか、ということ。

もう一つは。


「お前、何者だ」


何故、刀の切っ先を私の喉笛に向ける男が居るか、ということ。

冷静なんて、くそくらえ。


 * * *

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