学生時代VSリンちゃん先輩
リンちゃん先輩の武勇伝は社会人時代に留まらない。学生時代からその片鱗を見せつけていた。
「めちゃくちゃ寒い冬の日にね、学校の自販機であったかいココアを買おうと思ったのね」
「思った、ってことは買わなかったんですよね?」
「そう。冷たいココア買っちゃったの」
「……ドンマイ」
「でもね、この話にはいい続きがあってね!」
これ以上状態が悪化する続きでなくて良かった。
「それを後ろで見てた同級生の男の子がね、横に立ってね、あったかいココアを買って」
「ほう?」
「あたしがあんまりにもズーン……って沈んでたんだんだろうね、『交換してあげる』って有無を言わさずひったくって交換してくれた」
「かっこいいな少年! なんだその青春!」
「全然接点ない人だったけど、あれはかっこよかったなあ」
なんだなんだリア充め。そんな特典があるならドジも案外悪くない。
「良くないよ全然。ココアの件に関しては確かに美味しい思いをしたけどね?」
ひとつため息をついたリンちゃん先輩。
「中学生の時は綱引きの綱を中央で踏んでおく係だったんだけど、『よーい、どん』で両サイドが引っ張られた瞬間、勢いで跳ね飛ばされて首を捻挫しちゃったってこともあったなー」
「それドジとかじゃない! 事故!」
「あと少しずれてたら首の骨折れて寝たきりだったんだって。それ考えると逆に運が良かったのかなあ」
笑える話と笑えない話があるだろう。本当にリンちゃん先輩は心臓に悪い人生を送ってきたと言える。
「ドジというよりは、これも運が悪い話なんだけど……」
また思い出した、とリンちゃん先輩はぽんと手を打った。
「椅子の上にさ、のりが立てて置いてあったことがあってね」
「ああ、よくあるイタズラですね。座る人のお尻にのりを刺すっていう下らない」
「そうそれ。まずそれを女子にやることが信じられないんだけど、お察しの通り引っかかったのよ」
かわいそうに。
「それであたしが怒って、『もう!』って仕掛けた子に向かってのりを投げたら……」
「投げたら……?」
「たまたま窓際だったその子の席を通過して窓ガラス割った」
「ある意味凄い! のりが当たっただけでガラスを割れるとかある意味凄い!」
弁償はその男子生徒と半分こだったそうです。