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第3話 これが現実です

窓から明るい日が差し込む。昨日とはうって変わっていい天気だ。

裕香は眩しさで目が覚めた。


そうか・・・昨日はカーテンも締めずに眠ってしまったようだ。

変な夢を見たせいか、頭が重い。


今日も仕事だ。週末はまだまだ遠い。

でも受付の仕事は身だしなみが第一だ。化粧だって手を抜くわけにはいかない。

けだるい体を気力で動かし、ペッドから這い出した裕香だった。

まったく昨夜の夢は最悪だわ。あんな夢を見るなんてよほど体調でも悪かったのかしら?


ああ・・そうか、昨日は雨に濡れたからなぁ・・・・


「でも考えてみれば笑えるよねぇ・・・ミクさ~んなんてさ。」


裕香は昨日の夢を思い出しながら一人呟いた。


「は~い!呼んだ?」


台所の方からひょっこり顔を出したのはミクさんだった。

な・・・・なんで!


驚いて仰け反った裕香はバランスを崩して尻餅をついた。

あれは夢じゃなかったの?


「驚かせたのはもう昨日謝ったじゃない。そう何度も驚かれてもねぇ・・・・・」


驚くのは当たり前じゃない・・・あれが夢じゃなかったなんて!

まぎれもなくこれが現実だって言うの?


「ほ~ら、朝食作っておいたからさ。ねね・・私が居て便利な事だってあるでしょ?」


「私は朝食は食べない主義なの!」


「ああ・・それね。やめた方がいいわよ。

若いうちはいいけどさ、そんな生活をあと3年も続ければ顔色はくすむわ貧血が起こるわでさ・・・・

そりゃあ私は辛い思いをしたもんよ。」


ミクは裕香の背中を押すようにして食卓に座らせた。

食卓にはコーヒーとパンとヨーグルトサラダが2人分セットされていた。


「ねえ・・・昨日もちょっと思ったんだけど。ミクさんは幽霊なのに食事するの?確かりんご食べてたよね?」


「そうなのよ。なぜかお腹が減るのよね~。で普通に食べれるし・・・まっいいんじゃない?」


「冗談じゃないわよっ!2人分の食費だなんてありえないわよ!」


「あら・・結構セコいのね。じゃあバイトでもしようか?」


「え?・・その姿で?・・・・ダメダメうちの会社はバイト禁止なんだからね」


「じゃあ・・・しょうがないじゃない。養ってもらうしかないわね。よろしくね!」


「ええ~~!」


露骨に不満を顔に出す裕香であったがミクは気にする様子もない。


「ところで今日はまっすぐに帰ってくる?」


「え・・え~と・・・今日は定時に終わるので仕事帰りにデートの約束が・・・」


コーヒーを飲みながら答えた裕香だった。

ミクはカレンダーを見ながら何かを思い出すように考え込む。


「確か・・・この時期に付きあってたのって・・・遠山 要だっけ?」


「ピンポ~ン!そう。私と要は今ラブラブよ~!人も羨むカップルと言うかなんて言うか・・・」


要を思って夢見るような瞳で語る裕香であった。

そんな裕香に釘を刺すようにはっきりとミクは言いきった。


「ダメよ!あいつは最低の男よ!考えてみれば要のせいよ。あれから私の人生はおかしくなったんだわ!」


「はあ?何を言ってるのよ。私達は将来を真面目に考えた付き合いをしているのよ?」


突拍子もないミクの言葉に激怒して反論する裕香だった。

だって今最高にうまくいってる恋人の要の悪口を言われて怒らない方がどうかしている。


「あいつはとんでもないヒモ男よ。定職も持たずブラブラして、人の金でパチンコ狂い。

おまけに女好きでどうしようもない奴よ。」


「そ・・そんなこと!ある訳ないじゃない。何を根拠にそんなことを!」


裕香はミクのあまりの言い草に怒りでワナワナと震えながらくってかかってきた。


「要とは2年間同棲していたわ。あいつは定職も持たずに毎日パチンコ代を私にせびっていたのよ。

それでも私は要がちゃんと就職さえしてくれたらいつかは結婚できると信じていたわ。

でも要は仕事を探すどころか他に女を作って私が貢いだお金で遊び呆けていたのよ。

ある日仕事から帰って来たら要は消えていたわ。私の貯金、貴金属、部屋の中の金目の物も一切合財すべて一緒にね。」


「・・・・・・・」


裕香はひどくショックを受けたようで口を開けたまま固まっていた。

ミクはちょっと言い過ぎたかなぁと反省した。

だって話てるうちにその時の悔しさとか情けなさを思いだしてちょっと興奮したみたいだ。

そんな地獄を経験した私とまだ経験していない私・・・・・

明るい未来しか考えた事もないまだまだ純真だった頃の私なのだ。


「あ・・ほら仕事の時間!遅刻しちゃうわよ!」


ミクはそう言うと裕香を急かし立てて話を打ち切った。

裕香はバタバタと大急ぎで支度を整え、今日はいつもより少し手抜きの化粧で仕事に出かけて行ったのである。

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