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第2話 未来さんがやってきた

にわかには信じられない話ではあるが、目の前に居るのはまぎれもなく自分自身とまったく同じ人物なのである。

まるで鏡で映したかのような姿である。未来の自分であるならばもう少し大人っぽくてもいいんじゃない?

シワとかシミなども見当たらないようである。これは未来の化粧品がすばらしい進化を遂げているからなの?

そんな事を考えながら裕香はぶしつけなほどジロジロと未来の自分の姿を観察していた。


「ああ・・・この姿? こっちの世界に来たらなんだかこうなっちゃったみたいなのよね。

私としては若返って嬉しいかぎりではあるわね。なんだか得した気分よ。」


未来の裕香はあれこれポーズを付けながら自分自身を確認してご満悦そうだ。

・・・・どうやら未来の優秀な化粧品とやらは夢であるようだ。

あまりに呑気な相手を見てどうやら身の危険はなさそうだと感じる裕香であった。

幽霊やホラーの部類は大嫌いな裕香ではあるが、未来の自分ならその部類ではないのだろう。

少し余裕を取り戻した裕香は話しかけた。


「それで未来から来た私が現在の私に何の用なの?」


若返った自分に魅入っていた未来の裕香はその質問で当初の目的を思い出したようであった。


「そうだったわ! 私がここへ来た目的をすっかり忘れるとこだったわ。

あなたに言いたい事があってきたのよ!


あなたが男を見る目がないばっかりに未来の私は散々苦労して、あげくの果てに痴情のもつれで殺されるなんて納得できないって言いに来たのよ。」


未来の裕香は立ったまま腕組みをしながらそう言った。


「なんですって! あなた死んでるの? ひぃっ~~!やっぱり幽霊じゃないのよ!

南無阿弥陀仏・・・・南無阿弥陀仏・・・どうか成仏できますように! 祟りや憑依とか勘弁してくださ~い。」


改めて幽霊とはっきり宣言されさっきまでの余裕もどこへやら、裕香は手を合わせて拝んでいた。


「なに? こだわりがそこ? ・・・・・まあ確かに昔の私はそうだったわね。

そもそも信仰心のない念仏なんかは無駄よ。それに線香じゃなくアロマキャンドルではまったく効果なし! 」


ちょっと考え込んだ未来の裕香はきっぱりと言い切った。


「そもそも私が死んでるって事はあなたが遠からぬ未来には死ぬって事なのよ!

そこんとこもっとこだわって欲しかったなぁ・・・・・

それに私はあなたの未来でもあるんだから祟りや呪いなんて自分自身に仇する事をする訳ないでしょう?」


「なるほど・・・・それじゃ未来さんは私を恨んで危害を加えに来た訳ではないのね?」


ちょっと安心した裕香であった。

それと確か呪いではなく憑依と言ったんだけど・・・・・・ちょっとつっこんでみた。


「そうだったわね。憑依だっけ・・・・それは出来ちゃうかも?」


ひぇ~~! それはやめて~~!やっぱり心の声まで聞こえてるみたいだ。


「大丈夫、憑依なんかしないって!それに私もまだ死んで間もないし、不慣れでやり方もわかんないわよ。」


「じゃ未来さんは新米幽霊さんなの?」


「未来さんって・・・その呼び方はどうかと・・・・せめて読み方だけでも変えてミクとかさ。

うんミクがいいね。なかなか気に入ったわ。それでいこう!」


いや・・・呼び方より聞きたい事は山ほどあるんですけど・・・・・・

まあミクが気に入ったならそれでもいいんですけど・・・・


「じゃあミクさんは、私に恨みを言う為じゃなく、苦情を言う為にわざよざ来たと?」


「もちろんそうよ。でも苦情を言うだけではないわ。目的は改善を求めるってことよ!

それはね、あなたに生き方を変えて欲しいのよ。

それだけじゃなくて考え方から変えてもらわなきゃなんだけど・・・・」


ミクは勝手知ったる我が家とばかりに勝手に冷蔵庫を開けてりんごを取り出すとかぶりついた。

幽霊でもお腹が減るのか?普通に食べてるし・・・・


「未来って変えれるものなの? 運命って決まってるのかと思ってたわ。」


「確かに私は死んでるから未来の幽霊だけど・・・・

でもよく考えてみてよ。この世界ではあなたは生きてるんだし、私もまだ死んでない訳よ。

なので私はこの時点では幽霊だけど幽霊ではない。私を幽霊にするもしないもあなた次第ってことになるのよね。」


なんだかよくわからない話である。

とりあえず裕香のこれからの行いで未来は変わるらしいと言う事だけは理解できた。

それならばさっさと未来を変えてミクさんにはぜひお引取り願いたいものだ。

そうだ。それが一番とばかりに裕香は思いつきを口走る。


「わかりました。私は今後、男性とは付き合いません。一生独身でいるわ。

そうすればミクさんはそんなトラブルに巻き込まれることはなく、死ぬ事もない訳ね。

めでたしめでたし。・・・・で帰ってくれません?」


「ふむ。なかなか話が分かるじゃない。さすが私ね。まあそれが本心であるならね。」


「本心よ!本心に決まってるじゃない。ど・・とうして信じてくれないの?」


「だってそれが本心なら未来は変わって私は生きているはずよ。

すると幽霊である私は消えるはずなんだけど・・・・消えないもの。

思いつきだけではどうやら未来は変わらないみたいね。

てことで私はしばらくここにやっかいになるとするわ。」


「え・・・帰らないの? ここにずっといるの?」


「そうよ。私が消えるように、頑張ってね。」


も・・・もしかして、それは取り憑かれたってことでは?

そうなの?私は自分の幽霊に取り憑かれたのか?

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