【五.閑話之一-1st break -】
【五.閑話之一-1st break -】
チャイムが鳴る終業の合図。それと同時に、とは言わないが、その合図を機に多くの生徒が各々で放課後の活動場所へと散っていく。もちろん俺もご多分に漏れることなく、自身の薄っぺらい鞄を手に教室を後にする。その道中、俺は携帯を眺めていた。ネットの検索機能。検索内容は“BD”それと、忘れてはならないのは“アウトサイド”という化け物。昨日の出来事に関して少しでも知識を得ようとする。しかし、結果は思わしくなかった。いくら調べても望む情報は得られない。所詮は携帯電話で、調べるのは無理があったのだろう。
結局、BDに関してもアウトサイドに関しても、そんなものは、ありません、とでも言わんばかりに何の情報も得られなかった。実際、被害者も出ているのだから、世間的に問題になってもおかしくないだろうに。
「最近通り魔殺人とか増えているらしいから、気をつけた方がいいよ」
と、間延びした喋り。隣を歩きながら啓太が言った。
所詮、皆、この程度の認識なのである。俺はまるで、狐にでも化かされたのではないか、とすら思う。が、ポケットに入っている紙切れが昨日の出来事が真実であると主張し続けている。
さて、俺はこれかどうなるのか。早いところ真犯人が見つかってくれないことには、自分の心配で胃に穴が開きそうだ。
俺は大きな溜息をついた。
「どしたの?」
下駄箱。上履きからローファーへと履き替ええる最中に訪ねられる。それ程浮かない顔をしていたのだろうか。まぁ、普段から愉快な顔をしているつもりもないが。
「って、よりはさっきから溜息もれまくっているよ? あんま、人の話も聞いていないようだし」
そうだったのか。確かに、ずっと、昨日のことが頭の中で巡ってはいるけれども。
「あぁ、大丈夫」
しかし、その答えも、すぐに撤回したくなった。
「諏訪部君」
聞き覚えのある声。俺は下駄箱に上履きをしまい終えた、ところで声の主へと向き直る。当然のように昨晩と同じ服装。逆光の中、昇降口の前に立つ、小さなシルエット。女の子にしては短く切られた髪の毛。忘れられるはずも無い。植田亜姫がそこに立っていた。
同じ、学校の制服を着ていたのだから同じ学校なのだろう。それならば、学校で鉢合わせるのも当然と言える。しかし、彼女はどう見たって、そこで待っていた。そして、彼女は言う。
「一緒に帰りましょ」
すかさず俺は、昨晩携帯に登録していた真琴さんの電話番号を表示させた。