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「ねえ、僕を助けてくれた時とか、ドアを開ける時に使っている魔法は何なの?」
「あれは変性魔法の念動だ」
「そうなんだ」
「一番有名な魔法かもな。扱い方次第で、最も強力な魔法にもなり得る」
「物を動かせるの魔法って事?」
「基本的には。ただ扱い方次第で、周囲の物を吹き飛ばす衝撃波や、相手や物体を押し潰す事さえできる」
「飛んできた物も受け止められるの?」
「勿論、どんな物でも。ただ相応の力が必要になるが」
「便利だね」
「ああ、だがこんな危険な魔法でも、変性故、誰でも扱おうとすれば出来るんだ。ある意味恐ろしい」
「他の魔法は違うの?」
「まったく違う。支配している……いや司る神への信仰心が必要な光輝魔法のような物もあれば、デーモンが多用する炎術のように他の者の魂が必要になる魔法と、とにかく制約が多いのが普通だ。だが変性だけは違う。誰もが扱えるに等しい魔法なんだ」
「じゃあ、誰かに会ったら気を付けないとね。いきなりぺしゃんこにされかねないね」
「ンフフ、ああそうだ。だからお前と会った時も警戒してたんだ。でも我ほど心配しなくても大丈夫だ。それほどの変性を扱える者なら直ぐに気付く程の力を持っているだろうからな」
「もし外に出て、そんな奴ばかりいたら、どうする?」
「アハハ、そんな事は……まあ一応警戒しておいた方が良いかもな」
「やっぱり心配性だね」
「お前は怖くないのか?」
「不思議と怖くないんだ。寧ろ高揚感っていうの? 早く外を見てみたいと思ってる」
「なるほどな」
何事もなく部屋を抜けると再び広く、仕切りの無い部屋へと出た。
中央にはボロボロに崩れた大きなオートマトンが横たわっていた。
「気を付けろ」
「オッケー」
静かに、そっと、オートマトンへと近付く。
「壊れてるの?」
「たぶんな」
「突いてみよっか」
「ああだが……」
「ゴクリ……」
足で軽く端をつつく。
「あっ!?」
大きな音を立ててオートマトンのパーツが崩れ落ちただけだった。
「ル〜デン」
「一点に集中していると、どうも感覚が過敏になっしまうんだ」
「蠢く蜘蛛を見てる時に首に何かさrwると驚くみたいな?」
「よく分からんが、そうだ」
「でもこれって蜘蛛じゃないの?」
「蜘蛛型のオートマトンだな」
「色々種類があるんだ」
「ああ、沢山見てきたが、こんな素材の装甲は今まで見た事がない。先へ進もう」
先へ進むと多数の蜘蛛型オートマトンが壊れていた。
「こんなに沢山」
「凄い数だな」
中には積み上がっている物も複数あった。
「作った人達はどこ行ったの?」
「分からない。ただ、あまり良い結末を迎えてない事だけは想像できるな」
ドアを抜け次の部屋に出る。
また部屋。
「かなり広いね。本当に出口があると思う?」
「そう言われると、少し心配になってきたな。だが進むしかない」
金属の音……足音のような物が聞こえてくる。
「聞こえた?」
「ああ」
壁に張り付いて身を屈め、前方を覗き込む。
すると、巨大な重装甲の二足オートマトンが大きな剣と盾を携え、蒸気を吹き上げながらゆっくりと歩き回っていた。
地面には同じ巨大なオートマトンが何体も崩れ落ちていた。
「あれはやばそう」
こっちへ振り向く巨大なオートマトン。
すぐに身を引っ込める。
幸い足音が近付いてくる事はなく、他の場所に向かって歩き回っていった。
良かった。
「あれは恐らくタロスだ。できれば見つかりたくない相手だ」
「どこも装甲が剥げてなかったしね」
「ああ、あまりに状態が良すぎる。隠密で行き、通り過ぎよう。ベル、変性はどれほど扱えるんだ?」
「やってみないと分かんない」
「分かった。少し戻り、魔法かけてからもう一度進もう」
「了解」
進んできた道を戻りドアを静かに閉める。
「気づかれていないようだな。早く魔法をかけよう」
ルーデンが自身に複数魔法を放っていく。
ルーデンの姿が見えなくなり、ルーデンの発光も微かに見える程度になった。
気付けば僕の体も見えなくなっていた。
「何の魔法?」
「不可視化、隠遁、精霊のベールだ。どれも変性魔法のな」
「僕もできたの?」
「いいや、我が付与したんだ」
「ありがとう。ああでも感覚で何となく分かったかも。次は自分でできそうか?」
「たぶんね」
「凄いな。戦技はできそうか?」
「分からないけど、今は無理かな」
「だったら音までは消せない。気を付けないとな」
「付与はしてくれないの?」
「音を消すのは戦技しか知らない。戦技は付与できないから自分でやるしかないんだ。今の我は必要乃至、そもそも戦技はまったく扱えないんだ。すまない」
「分かった。音を立てないように行く」




