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「法執行の妨害は重罪です。顔を見せて下さい。こちらへ」
損傷しているオートマトンに火球を放っていく。
面白いくらいに燃え、オイルに引火すると爆発していく。
魔法を放つ度に段々と感覚が戻ってくるようにコントロールも容易になってきた。
飛んでくる破片程度なら自力で防げるバリアも放てた。
「このバリアは何なの?」
「知らないのに放てるのか? それは障壁魔法だ」
「そうなんだ。知らないけど、感覚で放てた」
「ふん、まあ今はいいが、後でちゃんとしておいた方が良いぞ。今後の為にもな」
「分かった」
壁に放ったであろう魔法も感覚で差別化でき、意図的に放てるようになった。
半透明の黒い円形刃が回転しながら飛び出す。上手くコントロールし、損傷のないオートマトンへと当てていく。
金属を切り裂く鈍い音と共に、オートマトンの装甲が地面に剥がれ落ちた。同時にオートマトンの本体から茶色いオイルの液体が垂れ落ちていく。
素早く感覚を研ぎ澄まし直し、火球を放ってオイルに炎を引火させる。
球体が飛ばしてきたボロボロのオートマトン。上半身だけになっても、奇妙な顔が描かれた頭部がこちらを不気味に見つめ、這い迫ってくる。
上半身だけになったオートマトン目掛け火球を放つ。
戦い続け…。
「はあ…はあ…」
全てのオートマトンが動かなくなり、一先ずは片付いたみたいだ。
周囲に焦げ臭い嫌なにおいが立ち込めている。呼吸をする度に息苦しくなる。でも嬉しい。
「良くやったな。あ〜……」
「ん?」
「こういう時、名前が無いと困るな」
「そうだね。僕の名前はベル」
「思い出したのか?」
「うん! さっきやっとね」
「敵を倒して喜んでいるかと思ったら、思い出して喜んでいたのか」
「両方かな。ンフフ」
ついつい喜びが込み上げ、笑みが溢れてしまう。
そんな僕をどこか悲しそうに見つめる球体。
「あぁ……」
「どうしたの?」
僕に背を向ける球体。
「我は……ルーデン」
「じゃあ君も、さっきの戦いで記憶が戻ってきたんだ! 良かったじゃん!」
「我は……始めから覚えていた」僕の方に向き直すルーデン「自身が何者で、何故このような状況に置かれているのかも」
「ずっと嘘をついてたんだ」
「仕方がなかった。お前が何者か分からず、黙っておくのが一番だと思ったんだ」
「そう……」
「すまない」
「……いいよ。大丈夫。何度も救ってもらったんだし。気にしてない」
「ありがとうベル。もうお前には嘘をつかないよ」
「僕もね」
ルーデンと握手を交わす。
オートマトンの残骸を避けながら出口へ。
「まだ動くかもしれない。気を付けてな」
「現在……暴力行為が……発生中」
頭部だけになったオートマトンが喋っていた。
「蟠り解けて良かった」
「スッキリだね」
「ベルのおかげだ。心が広くて救われた」
「ルーデンだって悪い奴じゃないって分かってるもん」
「ンフ、だといいが」
「さて、着いたけど。この壁どうする?」
「仕掛けで閉じたのならば、開ける方法が必ずあるはずだ。探そう」
「そうだね」
周囲の壁を念入り調べる。
壁の一部で何かが光っているのが見えた。
「ルーデン、これじゃない?」
急いで側に来るルーデン。
「どれどれ」
注意深く見ているルーデン。
「罠だと思う?」
「う〜ん……それが何も見えないんだ」
「うそ!? じゃあ、僕だけが見える?」
「みたいだな。どんな物なんだ?」
「普通に4本指の手の刻印があるだけ」
「それは恐らくブラッカスの手の刻印だな。恐らく押しても大丈夫だろう」
「じゃあ押してみる」
「いいや、何があるか分からん。我が先に押す」
ルーデンが刻印に触手を伸ばし置く。
「…………」
だけど何も起きない。
「駄目か」
「次は僕がやってみる」
「気を付けろよ」
刻印に手を翳すと、壁が音を立て動き始めた。
「ベル!」
ルーデンが僕の体を魔法で壁から離した。
壁がゆっくりと上っていき、塞がれて見えなかったドアが見えてくる。
そのまま壁が上まで上がると大きな音を立てて止まり、静かになった。
「上手くいったみたい。心配性なんだね」
「はぁ〜、良かった。行こう」
ルーデンが魔法でドアを押し開け、隙間を通っていく。
ルーデンの後に続く。
今度はそれなりの広さのある部屋がいくつも仕切りがなく広がっていた。
警戒しながらルーデンと一緒に先へと進む。




