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忍び足でそっと球体の方へ近付いていく。
だいぶ近くまで来たけど、間違いない。 これは何かの生き物だ。
球体へと手をゆっくりと伸ばす。
次の瞬間、球体から赤く光る両目が現れた。
「あっ!?」
「ア゙ァ゙゙!?」
向こうも驚いている様子。
「あんた誰」
「貴様こそ何者だ」
「質問に質問で返さないでよ。そっちが先」
「断る」
「う〜ん」
目を細め球体の目を見つめる。
「ふ〜む」
向こうも目を細め見つめ返してくる。
「記憶がなくて困ってるんだよね。だから助けて欲しい」
「そうか。でも我も同じだ」
「んぁ?」
「だから記憶がないんだ」
「そりゃ困ったね」
「だが互いに助け合う事に関して異論はない」
球体が浮かび上がり、触手を一本伸ばしてくる。
触手に触れ、握手を交わす。
「冷たっ」
「よし。取り敢えず離れず、部屋を探索していこう」
「手分けした方が早いと思うけど」
「他にもいるかもしれないだろ? 我々のようにフレンドリーな奴とも限らない」
「僕達がフレンドリーね〜」
「さっさと始めよう」
球体の生き物と一緒に広い部屋の探索を始める。
鏡から青く燃える光が見える。
「この鏡見て」
「ふむ。随分と古い魔法の鏡だな」
「魔法の鏡って?」
「それも知らないのか? どれくらい記憶障害があるんだ」
「それは質問?」
「いいや、つい漏れただけだ。簡単に言うと遠くの奴と会える」
「へぇ〜」好奇心が何だか体から溢れ出て来て、鏡へ触れる。
「おいっ!」
僕を魔法で勢い良く鏡から突き離した。
鏡が白く光り始める。
「わお」
「まずいぞ!」球体が勢い良く鏡に体当たりする「ぬあっ!!」鏡は割れる事も倒れる事もなく、球体が地面に倒れ落ちた。
「大丈夫?」
「うぅぅ……」
死んではいないみたい。
鏡の光が少し収まると、鏡に人影が映り始めた。
「該当地域に偵察を送っ……き、貴様は誰だ?」
「あんたこそ誰?」
「質問に質問で返すな!」
あれ? これも記憶障害のせい?
その時、勢いよく鏡が割れた。
「危なっ!? 危ないじゃん」
「我々は自分が誰で、ここがどこかも分からないんだぞ。見知らぬ奴と話す方がもっと危ない」
「そうだよね。ごめん」
「さっさと出口を探そう」
「あるといいけど」
部屋中を探索した後。
「本当に無いじゃないか!!」
「あっちゃー」
「何て事だ。こんなところに缶詰とは」
「缶詰って?」
「ああ、最悪だ」
球体から強い光を感じる。
「今、魔法放ったでしょ?」
「ああ、感知されるかもしれんから控えていたが、出口が見つからない以上仕方がないと思ってな」
「そういうの言って欲しいな。僕にも関係があるから」
「ああ……そうだな。すまない」
「ありがとう。鏡の件でお互い様になった?」
じっと僕を見つめてくる。
「我は違う」
球体が部屋の隅に向かって行く。
「ふ〜ん」
球体の後に付いていく。
「この暖炉から微かに漏れを感じる」
「でもさっき探したけど何もなかっじゃん」
「ふむ、もう少し探す必要がある」
「そお? なら」
「何もないか……う〜む、おかしいなー」
「ホントにここに……」
僕が暖炉内部の後ろ側を触ると、暖炉が音を立て始めた。
「危ない!」
球体が魔法で僕を引き付けた。
暖炉が地面に埋まっていき、下に続く階段が現れた。
そっと優しく地面に降ろしてくれる。
そして球体と目を合わせる
「やったー!!」
「やったぞ!!」
「アッハッハー!! 君のおかげだよ」
「いいや、これはお前の手柄だ」
「助けてくんなきゃ潰れてたもん」
「では互いの手柄だな」
「いいねー!」
「よし、降りてみよう」
下に降りて行く球体の後を追う。
「君が発光してくれてるおかげで見やすいよ」
「それは良かった」下を見たり、上を見たり、とにかく周囲を見回している「ふむ……」
「何か気になるの?」
「階段や壁、天井全て均一で精巧な造りなっている。しかもかなり特殊な材質だ」
「大理石じゃないの?」
「いいや、微量だが魔力を感じる」
「そお、ああ! 確かに」
少し驚いた様子でこっちを見る球体「ほお」すぐさま正面に向き直した「どうやら出口が見えてきたようだな」
通路から出るとまた広い部屋へと出た。
「これは驚いた」
「わお」
正面には巨大な楕円形の鏡が設置されていた。縁や支柱は全て黄金に輝いている。
「これも魔法の鏡?」
「う〜ん、いや。違うと思う」鏡に近付いていく球体。
僕も数段の階段を上がり、鏡の方へと向かう。
鏡や周囲の建造物から不思議な魔力を感じる。
球体が鏡の前に設置されている建造物の前で止まり、眺めている。




