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ロード・オブ・ダーク  作者: 逆立ちハムスター


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2

「私から息子まで奪う気か!!」

激しく痛むお腹を痛みのあまり押さえる。

夫が剣を掲げ、私目掛けて振り下ろす。

目を瞑り、襲い来る痛みへの覚悟を決める。

「ウッ!?」

私の顔に夫の血が飛んできた。。

夫のお腹から一本の剣が突き抜けている。

「貴方に御仕いできた事を、光栄に思います。陛下」

夫のお腹に刺さった剣が抜かれると夫は地面へ崩れ落ち、横へ倒れた。

「はぁ……はぁ……」

「マンドリー様」

バノの手を掴み起き上がる。

「ありがとう。バノ」

「大丈夫ですか?」

「え、ええ……」

「その……どうしようもありませんでした。陛下は……」

「分かってるわ。夫は我を失っていた」

「今や貴女が最高支配者です。処遇はお任せします」

「ンフフ、もう国なんて残ってないわ」

「ですが、ジェマス様が和平案があると」

「ないわ。私がジェマスに言ったの。ただ……このままよりは望みはあると思って……ジェマスは?」

「既に脱出しています」

「良かった。あなたも早く……」

剣と魔法が激しくぶつかり合う音が聞こえてくる。

アント兵が砦内部へと雪崩れ込んで来ていた。濁流の様に迫ってくるアント兵。

「ルド! 盾壁を作れ!」

「ウーラー!!」

「我々が時間を稼ぎます。早く!!」

「でも……」

私の怪我が深刻な事にルドは気付いていないようだった。

「早く!!」

「分かったわ」

「入ったら扉に鍵を」

静かにルドへ頷くと、ルドは仲間の足止めしている仲間の元へ向かって行った。

私はお腹を押さえ、壁に手を突きながら必死に急ぎ非常通路のある部屋へと向かう。

少しでも可能性が残されているのなら、私が和平を……。

部屋に入りドアを閉めると、ルド達近衛兵の悲鳴や叫びが聞こえてくる。

レダ達の姿はもうない。今はただ無事に出られた事を祈るしかない

身を屈め、暖炉内部の壁の鉄格子を開き、中へ入る。

この国に嫁いだ時以来訪れた事のなかった通路。

かなり荒れ果ててはいるけど、ちゃんと通路としての役目はまだ果たしているみたい。

地響きで揺れる中、薄暗い通路を進んでいく。

流石ブラッカスの魔法ね。まだ灯火を失っていない。

彼らも私達のような最期を迎えたのかしら。

薄暗い通路を抜け、配管の通る下層地区へと出た。

縦に狭く隙間がある天井や床のおかげで光が入り、見通しが利く。

上層から足音が聞こえ、静かに配管の隙間へと隠れ息を潜める。


「この場所は何か妙だと思わないか?」

「ああ、何か変だとは思ってた」

「死んだ仲間の魂が干からびてたらしい。それも全員らしい」

「行かなくて正解だったな。近衛兵の蛙共はどうなったんだ?」

「別の階層で抵抗している連中がいるみたいだが、殆ど全員くたばったみたいだ」

「あいつらは厄介だからな。片付いて良かった」

「ああ、出くわした連中は哀れだよな」

「ハッハッハッ。あぁ、そろそろ行こう。フェロモンを辿られてサボっているのがバレると困る」

「だな」

アント兵の足音が遠ざかっていく。

痛むお腹を押さえ、配管の隙間から出る。

だけどあまりの痛みに地面へ倒れ込んでしまった。

お腹は既に黒く変色していた。

もう下半身の感覚が殆ど残っていない。


仰向けになり、静かに上を眺める。


ベルが無事なら……私は……。

目の前が掠れていき、次第に地響きが聞こえなくなっていった。



Ⅱ 〘目覚め〙


「はっ!?」

目が覚めると、薄暗く広い部屋に仰向けに横たわっていた。

何だか…無性に悲しい。

起き上がり更に周囲を見回す。

広い部屋なのに、僕以外誰もいない。

部屋の至る所で装飾が青く光る家具が散乱して置かれている。

立ち上がり自分の服を見ると、紫の宝石が付いた紺色のローブを着ていた。


ここはどこ…。

僕は一体…。


徐ろに好奇心に駆られ、部屋を歩き回る。

まったく見覚えがない。それどころか、記憶が殆どない。自分の名前すら思い出せない。


一人で状況を考えながら部屋を見回していると、椅子の側で何かが動くのが見えた。

急いで椅子の所へ行く。

でも、何もない。

自分の影だったのかな?

何かの気配を背後に感じ、すぐさま振り向く。

でも誰もいない。

おかしい…。何かいたと思ったけど…。

やっぱり僕以外にも、この部屋にいるのを感じる。

急いで周囲を見回すが、誰もいない。

目を凝らすと、暗闇で微かに青く燃えている物が目に入る。

よく見ると、動いている。翼を折り畳んでいる?

床に置かれた小物に紛れて、黒い球体が微動だに揺れ動いているのが分かる。

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