黒翼、再び光へ
――雪原は静かだった。
崩壊した研究施設の跡地。
氷と灰の中で、リナたちはゆっくりと目を開けた。
「……先生?」
リナの声が風に消える。
どこを探しても、ジークの姿はなかった。
アリシアが膝をつき、
残された焦げ跡を見つめる。
「……黒炎の痕。完全に消えていません。」
レオンが立ち上がる。
「ってことは――先生、生きてるんだな!」
リナの目が潤む。
「もう……あの人、勝手にいなくなって……!」
その声に、アリシアがかすかに笑う。
「泣かないで。あの人は、そういう人です。
姿を消しても……“教え”だけは、置いていく。」
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風が吹いた。
その中に、黒い羽がひとひら舞い落ちる。
そこには、かすかに魔力の文字が刻まれていた。
> “生きて帰れ。授業はまだ終わってねぇ。”
リナが手を震わせながら、
その羽を胸に抱いた。
「……うん。絶対、生きて帰る。」
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数日後、セリウス学園。
教室の扉を開けると、
机の上に置かれた一枚の紙。
それは、ジークの筆跡だった。
> 【課題】
> ・レポート「戦う理由について」
> ・提出期限:俺が戻るまで。
> ――サボるなよ、バカども。
リナが笑いながら涙をぬぐう。
「……ずるいんだから、先生は。」
レオンも頷く。
「ま、帰ってきたら、レポートの出来でびっくりさせてやろうぜ。」
アリシアが教壇に立ち、静かに言う。
「今日から、このクラスの臨時講師を務めます。
ジーク先生の教えを……私が繋ぎます。」
教室に風が吹き抜けた。
その風の中に、
どこか懐かしい声が混じっていた。
> 『授業、始めるぞ。起きろ、バカども。』
リナたちは一斉に顔を上げる。
窓の外、遠くの空に――
黒い翼が、ゆっくりと広がっていった。




