凍てつく刃
雪原の夜。
凍てつく風の中、ジークたちは山岳地帯を進んでいた。
リナが身をすくめる。
「先生~……もう限界ですぅ……」
レオンも歯を鳴らしながら言う。
「マジで寒い……課外実習どころじゃないっすよ……!」
「文句言うな。
寒いってのは、生きてる証拠だ。」
ジークは淡々と答え、
ふと足を止めた。
雪の上、足跡が三つ。
そのうちひとつは、獣のものだった。
「……来たな。」
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風が止む。
静寂の中で、白銀の狼が姿を現した。
その背には、銀髪の女。
瞳は氷のように冷たく、
頬には淡い傷跡。
「お久しぶりですね、隊長。」
「……アリシア。」
リナとレオンが息をのむ。
「え、え? 知り合い!?」
「先生の……元カノ?」
「ちげぇ。」
ジークが即答した。
「元部下だ。」
アリシアは口元にわずかに笑みを浮かべる。
「“元”……ですか。
あなたが部隊を捨てて逃げた時点で、そうかもしれませんね。」
「逃げたんじゃねぇ。」
ジークの声が低く響く。
「もう二度と、誰も殺したくなかっただけだ。」
「では、どうしてまた“力”を使ったんです?」
「……あいつが、生きてた。」
アリシアの表情が一瞬だけ揺れた。
「レオニス……。
そうですか、やはり。」
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その時、狼が唸り声をあげた。
雪の中から、黒翼の紋章を刻んだ魔獣たちが現れる。
「っ、な、なんですかあれ!!」
「黒翼部隊の“遺産”だ。」ジークが言う。
「魔力で造られた、戦場の残骸だ。」
アリシアが手を上げる。
「止まりなさい!」
だが魔獣たちは命令に従わず、牙をむいて襲いかかる。
「……やっぱり、制御できねぇか。」
ジークがため息をつき、
黒翼の刻印が光を放つ。
「リナ、レオン、下がってろ。」
その瞬間、彼の背から黒い魔力の翼が広がった。
「おいおい……先生、またそれ……!」
レオンが叫ぶが、ジークは微笑む。
「安心しろ。
今度は“抑えて”使う。」
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黒炎が弧を描き、
一瞬で魔獣たちを焼き払った。
炎の残光の中、
アリシアが静かに剣を抜く。
「……あの頃よりも、弱くなりましたね。」
「お前が強くなっただけだ。」
二人の剣がぶつかり合う。
氷と炎、銀と黒。
その衝突は、美しくも悲しい。
アリシアの目に、一瞬涙が光った。
「どうして……私を、置いていったんですか。」
ジークの剣が止まる。
「……お前を、生かすためだ。」
アリシアの肩が震えた。
「……それが、あなたの優しさですか。
そんなの、いらなかった……!」
再び剣が交わる。
だが今度は、ジークが彼女の剣を弾き飛ばした。
「……悪いな。
教師ってのは、生徒を守る仕事なんだ。」
アリシアの瞳から、一筋の涙がこぼれた。
そのまま彼女は雪の上に膝をつき、
静かに意識を失った。
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翌朝。
ジークは焚き火の前で、眠るアリシアを見つめていた。
リナが恐る恐る近づく。
「先生……あの人、敵じゃないんですか?」
「敵だった。
でも、それ以上に、仲間だ。」
「じゃあ……助けるんですね。」
「……ああ。もう一度、やり直せるなら。」
風が吹き、雪が舞う。
白い空の向こうで、太陽がゆっくりと昇り始めた。
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