やる気ゼロ教師、初授業で伝説を残す。
「おーい、起きてくださいよ、ジーク先生ー!」
教室に生徒の声が響く。
講壇の上では、黒髪を無造作に後ろで結んだ男が、机に突っ伏して寝ていた。
白衣の袖はシワだらけ、ネクタイもゆるみきっている。
──それが、王立アルカナ学園の新任教師ジーク=アーベントだ。
「んあ……もう昼か?」
「まだ一時間目の途中ですってば!」
「そうか。……じゃあもうすぐ昼だな。」
あきれ顔の生徒たちの間に、笑いが漏れる。
教室には緊張感どころか、牧場の昼下がりのような空気が漂っていた。
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「先生、授業は何をやるんですか?」
前列の生徒が手を挙げた。
ジークは片目を開け、面倒くさそうに答える。
「うーん……戦闘実技だしな。じゃあ、好きに殴り合え。」
「へっ!? い、いいんですかそんな……!」
「怪我したら治療魔法の練習にもなる。ほら、合理的だろ。」
そう言って、ジークはまた机に突っ伏した。
(この先生、本当に大丈夫か?)と、誰もが思った。
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そのとき、扉が乱暴に開かれた。
「新任教師の授業と聞いて来てやったぜ、ジーク!」
乱入してきたのは、筋骨隆々の男教師──ガロス。
同じ学園の戦闘教官で、力自慢として知られる。
「生徒の前で恥かかせてやるよ! 口ばっか教師!」
ジークは面倒そうに顔を上げる。
「……あー、ガロスか。まだ生きてたんだな。」
「何ィ!? この野郎、模擬戦だ!!」
ガロスが拳を構えた瞬間、
教室の空気が一変した。
ジークは立ち上がり、軽く息を吐く。
さっきまでの怠け者の空気が、嘘のように消えた。
「……あんま騒ぐな。生徒が怪我する。」
彼が指を鳴らした瞬間、ガロスの足元の床が“軋んだ”。
次の瞬間には、ガロスの巨体が吹き飛ばされ、教室の壁に突き刺さっていた。
「ぎゃあああっ!!??」
粉塵が収まる。
ジークは欠伸をしながら言った。
「これで静かになったな。……授業再開だ。」
生徒たちは、口を開けたまま動けない。
先ほどまで“眠そうな先生”だった男が、
わずか一撃でベテラン教師を叩きのめしたのだから。
ジークは机に戻り、再び突っ伏した。
「いいか、お前ら。戦いってのは……面倒になる前に終わらせるもんだ。
覚えとけ。」
その日、王立アルカナ学園に──
「最強のサボり教師」の伝説が刻まれた。




