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友達友情

「おはよう、ゆうねぇ」

「ん、おは……」

リビングで新聞を読んでいたゆうねぇに挨拶する。

「あら、休日の朝から制服なんて着てどうかしたの?」

「約束があって」

そういうとニヤッと顔が変わる。

「なぁに? 彼女でも出来たのぉ?」

「そういうのは、ないです」

「……まぁ、そうでしょうけど」

つまんないと文句を言う。

「……で、本当はなんで?」

「勉強会です」

「勉強会?」

「はい、約束があって」

それだけ言うと少しだけ表情が緩む。

「ふーん、そっか。さっそく色の使い方に気が付いたヤツがいたか」

――使い方って言い方は気にかかるけど。

「まぁいいんじゃない?」

それだけ言うとソファから立ち上がる。

「朝食はつくるから座ってTVでも見てて。あ、コーヒーと紅茶どっちがいい?」

「じゃあコーヒーで」

「OK」

それだけ言うとキッチンへと入る。

入れ替わりでソファへと座った。


トーストと苺ジャム、サラダに目玉が崩れた目玉焼き

料理のようなものが朝から出たことにビックリした。

いつもはどんぶりと納豆、たまごにしょうゆが目の前に置かれるだけなのに。

料理が並ぶのに少し遅れてコーヒーが出てくる。

そのゆうねぇの横顔はどこか嬉しそうだった。



「じゃあ、行ってきます」

「……んと、あぁ、行ってらっしゃい……だけどそれ……まぁいいか」

「――?」

「まぁいいわ、行ってらっしゃい」

少し歯切れの悪い見送りだった。



学園の校門前

ちゃんと早く出たつもりだったけど、すでに芽衣さんと南口さんは来ていた。

「あ、色くん!」

気が付いたらしい南口さんがこちらへと声をかける。

「ってあれ、色くん、なんで制服?」

「えっ?」

二人は普通に私服だった。

芽衣さんは白地に英字プリントTシャツに迷彩パンツといういスポーティな格好。

南口さんはふわりとした印象を受ける、自分はこういう服をなんと呼ぶのか知らないけど。

「集合場所が学園だといわれたので」

「それで制服? 今日休日なんだから、適当でいいに決まってるじゃない」

ちょっと怒っているようにすら聞こえた。

「すみません」

「え、まぁ別にいいんだけどさ。せっかく私服が見れるって楽しみにしてたのに」

「私服が、楽しみ?」

「なんていうかさ、その人の性格というか人となりが見えたりするじゃん」

そんなものなんだろうか?

「まぁある意味制服ってのは色くんを表してるのかもしれないけどね」

南口さんも少し間を置いてそんなことを言う。


ひとしきりイジられたあと、芽衣さんはもう一つの疑問を語る。

「――で、ついでに聞いていいかな?」

「なんでしょうか?」

「そのカバンって、何?」

指差された先は俺のカバン

「何って、いやキャリーバッグですが……」

「うん、そうなんだろうけど、なんでキャリーバックなわけ?」

「えっ、いやいろいろ準備していったら結構量があって」

そう、スポーツバッグでも入りきらなかったので、結局いわゆる一人旅行用のキャリーバッグにした。

「何を入れてきたわけ?」

「あ、教科書とノートと参考資料と辞書と……」

あと、何があったかな?

考えていると二人は笑い出した。

「ハハハッ、準備よすぎー!」

「ごめん、私が持つよ……フフハハッ」

なんで、笑って?

「やる気まんまんってかんじ! こりゃウチの成績アップも間違いないね」

「それは芽衣のやる気次第でしょ? 色くんにその辺を押し付けない!」

「はいはい、わかってますよ」

そう言うと商店街のほうへ歩き出した。

「アハハ、じゃ、行こうか」

あれ、二人だけ?

「あの、芽衣さんと南口さんだけですか?」

「ん、違う違う。彩姫は家が商店街に近いから、直接カフェの前で待ち合わせ。栄太はバイトで後から来れたら来るって」

なるほど、ここで待ち合わせはこの三人なのか。

「そうだ、いい機会だからいっておきたいんだけど……」

不意に南口さんが口を開ける。

「私だけ苗字で呼ばれるの、ちょっとイヤだな」

「えっ?」

「留美でいいよ、私だけ下の名前じゃないの、変だし」

「そうそう、南口さん、なんて他人行儀だもんな。友達なのに」

「とも、だ、ち……?」

――そう、なんだろうか?

二人とは、そういうことなんだろうか?

なんかこそばゆい。

「――友達なんていってもらったの初めてかもしれません」

「「はぁ?」」

二人が同時に叫ぶ。

「そんなわけないでしょ? 前の学園とかでさ」

――前の学園か。

「どちらかというと進学時のライバルって感じでしたし」

「へぇー、聞けば聞くほどつまらなそうだね、その学園」

バッサリと、芽衣さんは簡単に切り捨てる。

「なんにしても私はとっくに友達のつもりだけどな。色くんはそうじゃないの?」

南口さんは笑いながら言う。

友達、か。

人付き合いがまったくなかったわけじゃない。

でも、友達っていえるほどの付き合いをしたことは多分なかった。

――いや、一人いたけど。

「友達ってどこからがそうなのか、よく分からなくて」

「どこから? はぁ、難しいこというなぁ」

「すみません」

「あ、いや怒ってるわけじゃないよ。ただ定義なんて難しいこと考えなくてもね」

留美さんはとても明快な答えをくれた。

「直感なんじゃないかな、そういうのって。なんか、こう……感情的なものだから理詰めにしなくてもいいんだよ」

感情的なもの、か。

そっか、そういうことなんだろうなきっと。

「わかりました、えっと、留美さん」

そういうと返事の変わりに笑顔を見せて、そのまま商店街へと向かった。

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