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学習計画

今日のホームルーム、テストが返却された。


――と、言われても自分はそんなもの知らない。


どうやら学期始めに抜き打ちテストがあったらしい。

科目は英数国、理科社会は科目選択のためやっていないそうだ。


「連休あけたらすぐに中間だからな。ちゃんと勉強しておかないと期末の負担がでかいからな。気をつけるように」

担任がめずらしく担任らしいことを言った。



芽衣さんは横でうなっている。

「……どうか、したんですか?」

「あー、いいなぁ。テストのなかった人は」

……やさぐれてる?

「いや、ありましたよ? 転入試験」

「あ、そっかー。そうだよね。そもそも頭いいんだよね」

なんか、テンションが低い。

「……悪かったんですか、テスト?」

「ハハッ、わかる?」

「なんとなく見てれば」

「あぁ、あれね。見た目がバカっぽいってことね」

「え、あ、いや、違いますって!」

「あーもう、なんでテストなんてものがあるんだろうね!」

そんなの学生だから当たり前、じゃないかな。

「ねぇ、留美ぃ」

芽衣さんは目の前の背中を叩く。

「……なによ芽衣」

「どうだったわけ?」

「まぁ、普通よ」

「普通ぅ?」

「ハイ」

南口さんはテスト用紙を見せる。

全科目が70点台だ。

「……ちっ、優等生め」

「あなたよりはね」

鼻で笑うようにしていう南口さんに芽衣さんは不満たっぷりの顔でいう。

「――ってか、抜き打ちでテストされても分かるわけがないのよ!」

自信満々に言うことじゃない。

「そんなに悪いんですか?」

気になって聞いてみる。

……数秒の沈黙、その後テスト用紙を見せてくれた。

あぁ、全科目40点台、か。

「……芽衣、どうしたのコレ?」

「……抜き打ちって卑怯だろ、スポーツマンシップのかけらもないじゃん?」

「日ごろからある程度勉強してれば問題ないの。一夜漬けばっかりだからそうなるのよ」

南口さんの言うことは、もっともだ。

「……この優等生め。健全な学生なら日ごろから勉強なんてするわけないだろう?」

――そう、なのか?




お昼になる。

購買へのダッシュは、正直もう諦めている。

ここは芽衣さんの領域だ。

彼女が全力で走ってくれるので必要ない。

というか、邪魔しちゃ悪い。


日差しは春のそれで柔らかく、なかなかに心地よい。

「はい、焼きそばコロッケパン」

芽衣さんが渡してくれた謎のパン

「なんですか、それは?」

「焼きそばとコロッケが入ったパン、一番人気なんだぜ?」

「へぇ……」

焼きそばとコロッケ?

焼きそばパンもコロッケパンも見たことはある。

食べたことはあんまりないけど。

両方入りだから贅沢、といったところだろうか?

「せっかく買えたんだから食べてみって!」

芽衣さんが笑顔でいうので試しに一口

――っ!

コレは……

「おいしい、ですね」

なんかカロリーの詰め合わせみたいだが味はいい。

「でしょー! ゴチャついてるのがまたいいんだよな」

芽衣さんも食べ始めた。

南口さんはお弁当らしい。

彩姫さんは、牛乳とクロワッサンを手にため息をついていた。

その様子に芽衣さんも気が付いたらしい。

「ん、どうかしたの彩姫?」

「えっ? あぁ、えっとね……テスト悪かった」

…………風が頬をなでる。

「あぁ、そう。そうだろうね」

「えぇ? なんで分かるの?」

「分かるよ、彩姫の勉強への情熱のなさは。基本ずっと寝てるし」

確かに、そんな感じだ。

「で、何点だったの?」

「――ん、100点」

――はいっ!?

「……3つで」

「……あぁ、そう。ならウチは123点、圧勝!」

――それは、どっちも酷い。

テストは見せてもらったがさほど難しい感じは受けなかった。

……というか、基礎で構成されたやさしいテストだろう。

「まぁウチも人のことは言えないんだけどね」

芽衣さんも次の瞬間にはため息をついていた。

「「……はぁ……」」

――なんか、空気が重い。

「ちょっとぉ、なんか暗いよ?」

それまで黙って聞いていた南口さんが文句を言う。

「だってさぁ、連休明けたらまたテストだぜ?」

「――だよ?」

芽衣さんと彩姫さんが不満をのべる。

「そんなの、連休に勉強すればいいじゃない?」

「はぁ? 何言ってんだよ。連休だぜ? 遊びたいじゃん、なぁ彩姫」

「私、絵を描きにいきたいなって思ってた」

「そうだよなー」

二人を呆れるように南口さんは見ていた。

「……じゃあ、諦めれば?」

「むっ! だがしかし、まがいなりにも学生である以上、そういうわけにもいかないのだよ」

いや、まがいなりもなにも学生だ。

「――ちょっと、色くんもさっきから黙ってぇ!」

――こっちに飛び火?

芽衣さんがこちらを睨んできた。

「なぁに、自分はテストなんか余裕ってか?」

「えっ? えぇまぁ……問題ないかなと」

まぁ授業を見る限り特に対策をねるまでもない。

なにか問題があるわけないと思う。

「……次の体育でイジめてやる」

「――えぇ?」

「すっごい鋭いパス、みぞおちに入れてやる」

「えっと、いや、それはパスですか?」

「キラーパスの練習台になって」

芽衣さんの視線が痛い。

「……あっ!」

と、何かを思いついたように声を上げた。

「そうだ、色くん勉強教えてよ」

「――えっ?」

「そうだ、それがいい。決定!」

「えっと、あの?」

「ねぇ連休のご予定は?」

「予定、ですか? 特には……」

まぁ特に何かあるわけでもない。

「じゃあ決まりね。勉強会しよう」

「あぁ、それ私も参加する」

彩姫さんものってきた。

「よし、留美は?」

「えっ、わたし? まぁ色くんがいれば勉強進むだろうしいいわよ」

「うん、決定!」

――あの、俺は無視?

「あの、でも俺、勉強教えるなんてしたことないですし……」

「あぁ、大丈夫大丈夫、わかんないトコ聞くだけ」

「まぁ芽衣の場合、全部分からない可能性もあるけどねぇ」

「黙れ留美!」

なにやら不思議な話になってきた。

南口さんと芽衣さんは、なにやら言い争いを始めたらしい。

勉強会、知り合いと一緒に勉強?

「ん、色くん、迷惑?」

こちらへ彩姫さんが話しかけてくる。

「えっ?」

「勉強会とか、迷惑かなぁって」

「迷惑、とかじゃないです。ただそういうのしたことないから」

「へぇ、じゃあいっつもどうやって勉強してるの?」

「どうやって、って……基本的には一人で」

「部屋で黙々とって感じ?」

「いえ、図書室や自習室も使います」

「自習室?」

「塾とかにないですか?」

「ほえぇ、塾かぁ。塾なんて行った事ないよ!」

――塾に行った事がない?

それこそ驚きだ。

「塾かぁ、凄いねー!」

「いえ、でも今はもう行ってないですけど」

「へっ?」

「こっちに引っ越した都合で止めたんです。個人塾だったので関連校もなかったですし」

「あぁ、そっかーそうだよね……まぁ、よく分からないけど」

ケンカを終えたのか、芽衣さんがこちらに絡んできた。

「ちょっといい。じゃあ、さっさと詳細決めるね。まず場所は、えっと……カフェかな?」

「カフェ?」

「――あれ、ダメ?」

「いえ、カフェで勉強って、えっと……」

どういうことだ、カフェって、えっとふつうのカフェのこと、だよな?

「……あのー色くん?」

「えっ? ……えぇ、まぁよく分かんないですけど」

「ふーん、まぁいいや。詳細はこっちで詰めるからさ、色くんは予定を空けておいてくれればOK!」

空けるも何も、まぁ埋まることがないと思う。

「じゃあ決まったら電話連絡ってコトで」


――ん、あ、そうだ。

昨日の栄太との話を思い出す。


「あの、それに他に人を呼んでもいいですか?」

「はい?」

「あ、いえ……」

「あれぇ? 誰か呼びたい人がいるのぉ?」

何故か芽衣さんの顔が緩む。

「あれかな、ウチのイインチョとか?」

――えっ? はい?

「えっ? 色くんベッキー好きなの? うそぉ! なんで男子はみんなあんなのが好きなわけ?」

いや、南口さんの言葉もたいした暴言だが。

「……やっぱり勝気な攻めはモテるってことなのかなぁ?」

「えっと、何がどういう……」

芽衣さんが真顔で答える。

「いや、仲いいらしいじゃん? 毎朝密会してるって」

「密会?」

「他のクラスのヤツがそんなうわさしてる、って聞いたんだけど、違うのか?」

「はい、違います」

「……なーんだ」

若干話が逸れたが、栄太の話をすると三人とも問題ないといってくれた。

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