表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/24

休日直前

明日土曜日は休日なのだそうだ。

週5日制というのは建前で土曜日に補習、というのが当たり前だと思っていたので少し困る。

そんなことを思いながらカバンに荷物を詰め込んだ。


自分が出る頃には教室にはもう半分くらいの人がいなくなっていた。

放課後や休み時間などの際のクラスの行動の素早さは物凄いと思う。

芽衣さんはいわずもがな、即座に出て行ったし、南口さんも続いてどこかへと出て行ったみたいだ。

ただ南口さんはカバンを置いていってるので学内にはいるらしい。


――と、彩姫さんは教室に残っている。

ちょうど彼女も教室を出ようとしていた。

だが、カバンを持っていない。

そのかわりにスケッチブックと黒い箱のようなものを手に取っていた。


「あの」

「ん? あっ、色くん」

なんとなく声をかけてしまった。

何が聞きたかったのか、そんなのわからないがとりあえず話を作る。

「部活、ですか?」

「まぁそんな感じ」

明言を避けた言い方をする。

「今日の授業で描いたスケッチ……つくし、あったでしょ? それをちょっとね」

そう言ってスケッチブックを開いてみせる。

鉛筆のラインの疎密だけで描かれた見事なスケッチがそこにあった。

「絵を描くんだから部活、でいいのかな」

「――あ、えっと……上手、ですね」

ただ、そう思った。

その言葉に彼女の顔がほころぶ。

「そうかなぁー、へへっ、ありがと」

口にした以上の他意がないその笑顔を向ける。

こちらが照れてしまうほどのまぶしさを持っていた。

「それじゃあ、またねー!」

彼女はそう言って出て行った。



帰り際に川沿いの道から下を見ると、その場所に彼女はいた。

だが話しかける、ということはしなかった。

周囲の何もかもが彼女には届いていないように見えたから。

どうしてそれほどの集中力が出せるのか、少し不思議だった。




夕食を囲む。

その日も数点の惣菜類がテーブルの上に並べられた。

ゆうねぇはそれら惣菜をつまみながら話しかけてくる。

「……今日は、どうしてたの?」

「どう、って……別に」

「――放課後はすぐに家に帰ってきたの?」

「まぁ」

「昨日みたく予習とかしてたり?」

「はい、まぁ」

「……あ、そう……」

そこまで聞くとゆうねぇは少し考え込むようにうつむいた。

なんとなく昨日と同じような食卓だ。

再び顔を上げる。


「――ねぇ、よく分かんないんだけどさ、色、それでいいの?」

いつになく真剣な目で、そう言った。

「……えっと、何が?」

ゆうねぇは少しだけ、ため息をついたように見えた。

「……んーん、別にいいわ」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ