第十三話:「頑張りたい」
「というかごめん、普通に想像しちゃった……圭介くんが網かぶって歩いてるとこ」
「やめろ。俺が田舎に放り込まれたら3日で餓死する自信あるわ」
「食事関係ないじゃん!」
そう突っ込み、結花が声を上げて笑う。
智紀も、思わず口元をほころばせた。
「でも……朝は気持ちよかったよ。鳥の声とか、風の匂いとか……そういうの、好きだった」
「へぇ。いいね、そういうの」
結花が優しく微笑んだ。
「たまに戻りたくなったりしない?」
結花の問いかけに、智紀は少し考えるように視線を泳がせた。
「うーん……でも、もう戻るつもりはないかな」
ぽつりと、けれどはっきりとそう答えた。
その言葉には、過去を懐かしむ感情よりも、今を見据える意思が込められていた。
そして少しだけ笑って、続ける。
「ここで、ちゃんと頑張りたいって思ってるから」
「おお……」
圭介が、小さく感嘆の声を漏らす。
「なんか……そういうの、いいな。前向きで。応援したくなる感じ」
「ほんとだね。頼れる子が入ってきてくれてよかった」
結花の言葉に、智紀は少し照れながら「ありがとう」と答えた。
机の上に並んだ弁当箱たちの間に、ささやかな笑い声が広がっていく。
ふと、結月の方へ目をやると——
彼女はまだ視線を落としたままだったけれど、口元がわずかにゆるんでいた。
声は出さないまま、ほんの少しだけ表情が和らいでいる。
(……よかった)
その小さな変化を、智紀は心の中でそっと受け止めた。
ほんの少しずつでもいい。
この場所で、彼女の隣で、ちゃんと笑えるようになれたら——
智紀はもう一度、小さく息を吸い込んで、目の前の温かな昼休みを見つめた。
皆さんこんにちは紗倉です!
今回はちょっと短めでごめんなさい(´;ω;`)
懲りずに付き合って頂けると助かります!!
今日は日曜日でちょっと気分が沈んでおりますが
また来週から一週間頑張りましょう!
それではまた次回〜




