郷水の圭
沁み入る寒さも
雪解けし
鉱物に濾過され
透き通る
心頭滅却に晴々と
遮る緑に
陽の当たらぬ岩肌を
滲
み出た
一滴は
量を貯え
地を這い流れ
斜面の葉土を
かき分け
水路を作り
小川となる
岩をも削り
流れは早く
上がる飛沫に
涼が散る
木々の葉をさざ波に
鳴らす春風
水浴びに降り立ち
囀る山鳥の歌
獣道を抜け出た
四肢が舌を出し
口づけに
喉の渇きを潤し
森を行く
清流を泳ぐ美しき山女魚
岩魚は虫を食み
岩陰や川面の反射に身を隠す
底石に波紋を流し泡を立て
白い空気に寄せる泡の水色
川面に陽を混ぜ銀光眩しく
橋の上から望めば鏡の如し
幅を広げて転がす石を割削り
流れる音に濁音を混ぜ泡を吹く
笹船に種子乗せ難航も旅は道連れ
河岸に緑を運ぶ水路と別れ種を蒔く
人の営みに澱む水の色は油脂を混ぜ
水に流せと岸に立ち泣く人世虚しく
未練に涙を拭き笑顔で戻る三途の川
潮目に 世渡り上手な
行き交う 汽水域
海近く 引きに 変える
潮の満ち 高さを
勢いに 波に 流れに
乗り 乗れば まかせ
涙を 長い 想いを
浮かべ 旅路に 馳せる
塩辛くも 郷の味を 遡上す
水に 求め 肴
蛙を喰らい大海に出た鮭
郷愁に駆られて帰り
幾らか零し果てた姿に
酒酌み交わすは興の郷
虫と魚にたまたまや
鮎かて帰るも占いか
庭の井戸にて蛙啼く
ʕºᴥºʔゲコ♪
【圭】
読み:ケイ・たま