09.初めての授業 03
午後からは歴史の授業を受ける。
年配の先生がこの国の成り立ちからを黙々と話し続ける為、何人かは体を揺らしている。
ボクもついウトウトしてしまうが、頬を抓って堪えていた。
授業はとにかく暗記ばかりでノートにひたすら書き込んでいたが、所々で文字が乱れて直したりと大変だった。
母様が特に歴史の授業は退屈だと思うけど、意味のないことを一生懸命こなすのが学校だから、人生と一緒よ?と言っていたのを思い出した。
授業は終わり、やけに静かな背後を見るとグイードが机に突っ伏し寝ている様だった。
さて、放課後は買い物に出たいけどどうしようか?
「ちょっと、カイ」
グイードを起こそうかと考えていたら横から声がかかる。
「あ、シルヴァーナちゃん」
「私達これから街に行くんだけど、良ければだけど一緒にこない?」
「え、うんいいけど、グイードも一緒に?」
「なんでそいつもなのよ!」
ボクは意味が分からず首を傾げる。
「こ、この子達が荷物持ちを欲しいって、ね?そうだったわよね?」
シルヴァーナの言葉に横の2人がコクコクと頭を上下させる。
「荷物持ちかー。仕方ないなー」
男の子は女の子に優しくしなきゃって母様にも言われてるし、シルヴァーナはお姫様だし仕方ないよね?
「分かった。でも荷物持ちならもう一人いた方が良いんじゃない?」
「一人で十分よ!」
シルヴァーナが怒った様に言うが、その声にグイードが「んがっ」と声をあげた。
「起きた?」
そう言ってグイードの顔を覗きみるが、どうやらまだ眠っている様だ。
「じゃあ行こうか?」
「ええ!行きましょ!」
シルヴァーナが一瞬笑顔になった様に見えたけど、多分気のせいだろうな。
シルヴァーナ達の、というよりほとんどシルヴァーナの買い物が終わり、荷物らしいものはほとんどが寮に配達できたためボク達は身軽なままレストランへ入った。
「カイ、今日のお礼に好きなものを頼んで良いわよ?」
「え、いいよ。ボクもお小遣いもらってるし」
「今日は、わ……この子達の我儘で付き合ってもらったのよ?主の私がこうやって労うのも大事な役目なのよ!」
「そう言うものなの?」
「そう言うものよ!」
少し怒りぎみのシルヴァーナに、ボクはまた何かしでかしてしまったのかと不安を感じながらもメニューを開く。
「ふわぁー!」
カラフルな絵が描いてあるメニューを見てつい声をあげてしまう。
「ボク、デザートが食べたい!」
「ふぁっ……ええ、いいわ!お礼ですもの!好きなものを頼んで良いわよ!」
「ありがとうシルヴァーナちゃん」
メニューから目を話し、シルヴァーナを見てお礼を言う。
シルヴァーナの顔が赤い気がするが、ちょっと疲れちゃったのかな?
「シルヴァーナちゃん、大丈夫?疲れてない?」
「だ、大丈夫よ!わ、わたしもデザート頂こうかしら……ほら、あなた達も!」
「「はい!」」
シルヴァーナ達はメニューを立てて食い入るように探し始めた様だ。
大きなメニューによりシルヴァーナの顔は見えなくなった。
「イチゴのパフェ……そういえば森では苺がいつでも食べられたっけ。バナナなチョコレッタパフェ?ああ、あのチョコレートって奴か。王都では母様の名にちなんでチョコレッタって言う話って本当だったんだ。じゃあ、これにしようかな?シルヴァーナちゃん ―――」
チョコレートパフェとついでにホットケーキも食べ終わったボクは、お腹が満足して少しだけ眠気を感じていた。
シルヴァーナちゃん達はあまりボクに話掛けたりはせず、黙々とデザートを食べていた。
「じゃあ、そろそろ帰りましょ!」
「うん。今日はありがとう」
「こっちのセリフよ!ほらあなた達」
シルヴァーナが左右の2人にそう声をかけている。
「カイ様、今日はお付き合いありがとうございます。またご一緒して下さいね!」
「カイ様ありがとうございます。できればまたこの四人で、買い物に行ってもらえますか?」
「うん。また一緒に買い物行こうね」
女の子に交じっての買い物は少し恥ずかしいけど、今度はグイードも誘って一緒に行けば良いかな?
「では、カイはもちろん寮迄ご一緒してくれるのよね?」
「え、そうだよね。どうせ帰る場所は一緒だよね?じゃあ一緒に帰ろうか」
「し、仕方ないですわよね」
急にそっぽを向いたシルヴァーナの耳は少し赤くなっている。
やっぱり疲れているのかも?
ボクは男の子だし、しっかりしなきゃね!そう思って周りを警戒しながら寮迄の道を四人で歩いて帰った。
女子寮の前で三人と別れ、自室に戻ろうとしたらグイードに捕まった。
「どこに行ってたんだよ!」
「ちょっと街にね。グイード寝てるんだもん」
「起こせよ!」
「いや、無理だよ」
ボクの言葉に首を傾げるグイードだったが、すでに夕食は済ませたようですぐに解散となった。
ボクは部屋でシャワーを浴びると、母様に連絡をとった。
「母様、今日は初めての授業だったよ」
『どうだった?』
「面白かったけど、歴史はやっぱり眠くなっちゃったよ。グイードも寝ちゃってた」
『ふふ。でもカイは寝なかったのね。偉いわ!』
「なんどもほっぺた抓ったんだよ!眠くてさ」
『えっ?ちょっと大丈夫?カイの可愛いホッペが赤くなったりしていない?』
「大丈夫だよ?後ね、放課後シルヴァーナちゃん達と買い物に行ったよ?チョコレッタパフェも食べたし、本当にチョコレッタって言うんだね」
『ああ、あの忌まわしい名前ね。普通にチョコレートで良いのに……ってシルヴァーナってあの第二王女の?』
「うん。荷物持ちにって」
『そうなので。へー、なるほどなるほど。まあ、仲良くやんなさい……で、次はいつ帰ってくるの?週末には帰ってこれる?』
「えー、週末毎に帰るのも面倒、かな?」
『カイ、カイはママがいなくて寂しくないの?』
「うーん、寂しいけど、学校ってそういうものじゃないの?」
『そうだけど……そうね。分かった。でも寂しくなったらいつでも帰って来て良いのよ?連絡したらカーリーがすぐに迎えに行くし!』
「分かった。じゃあ母様、ボクもう寝るね。おやすみなさい」
『うん、ちゃんと歯磨きするのよ?お腹出して寝ないの。目覚ましをちゃんとかけてね。それから……』
「母様、ボクはもう小学生になったんだよ?大丈夫なんだよ?」
『そ、そうね。じゃあ、おやすみなさい、私の可愛いカイ』
「うん。また明日連絡するね」
通話が切れたカードを見つめ、少し寂しさが込み上げてくる。
今日はもう寝よう。
ボクは歯磨きをして目覚ましをセットすると、布団に入りすぐに夢の中へと旅立った
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