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08.初めての授業 02


 目の前には、3人の女の子がボクに笑顔を向けている。


「カイ君!ここ、教えて?どうしたらもっと計算早くなるの?」

「え、そうだなー。まずは一桁の計算を何度も頭に思い浮かべると良いよ!」

「そうなんだー!私、頑張ってみるね!」

 そう思いながらノートを差し出すと、少し頬を赤らめた女の子達はボクのノートを見ながら何やら話し合っていた。


「教えてくれてありがとう!私リナ。もっと色々教えてくれるかな?」

「うん。ボク、カイだよ。よろしくね」

「私はロザンナ。よろしくね!」

「私、カルラって言います!」

 3人の女の子に笑顔を向けられ上機嫌になってしまうボク。


 その背後には不機嫌そうに顔を歪ませているシルヴァーナが見えた。


「ちょっと!授業中よ!静かにできないかしら?」

「あっ、シルヴァーナ様、失礼いたしました」

 シルヴァーナの注意にリナが頭を下げ謝っている。


「でも、先生も教え合っていいって……ごめんなさい」

 ロザンナが反論するが、キッと睨まれ謝っていた。


 カルラは凍り付いたように固まっていた。


「勉強なら私が面倒見るわ!それとも、カイに教えてもらうのが良いのかしら?」

 3人は無言でぷるぷると横に頭を振っていた。


 それを確認したシルヴァーナは、ふん!と言いながらボクを睨んで席へと戻って行った。


「カ、カイ様、ありがとうございました」

「「ありがとうございました」」

 3人が頭を下げ、足早にシルヴァーナの席に向かう。 


「マジでお前、大変だな」

 そう言ってグイードがまたボクの肩に手を置いた。


 なんでボクはあんなにシルヴァーナに嫌われているんだろう?そう思って心が沈む。


「まあ気にすんな!女の嫉妬は面倒だからな!」

 そう言いながらシルヴァーナの方を見たグイードが、"ひっ!"と悲鳴を上げていたが、嫉妬って何の事だろう?と考えるのに必死で気付かなかった。


 その後、先生が答えと共に求め方のイメージを教えてくれる。

 それぞれの1の桁から順に戦わせ勝ち抜き戦の様なイメージをするらしい。


 周りの何人かは頷いていたようだけど、ボクやグイード、そしてシルヴァーナとその周りの女の子達は首を傾げている。

 きっとボクと同じようにイメージが合わずに混乱しているのだろう。


「えー、カイ君ちょっと良いかな?」

「へっ?」

 先生に突然呼ばれて変な返事をしてしまい、恥ずかしさに顔が赤くなる。


「その計算式ってニコちゃんから聞いたのよね?後で教えてくれる?」

「あ、はい。良いですけど母様から聞いてないのですか?」

「そうね。ニコちゃんったら……意地が悪いわ。リク君もソラちゃんも成績は良いけど、こんな話はしてなかったし……きっと内緒にしてたのね!」

 先生が何やらブツブツと言っている。


「分かったわ!やっぱり後から先生がニコちゃんに聞くから、カイ君も、もうすでに聞いた子達も皆で教え合ってくれるかな?」

「分かりましたわエレオノーレ先生!」

 真っすぐに手を上げ先生に返事をするのはシルヴァーナだ。


 先生はそれも満足そうに見た後、教室を出ていった。


 グイードと今の話をし始めたが、そこにはまたも邪魔が……


「おい!いい気になるなよ!生まれが少し良かったからって自分が優秀だと勘違いするな!将来は俺様がお前をうまく使ってやるから、今のうちにしっかり勉強しとくんだな!」

「えっ?」

 ボクが驚いている間に、マルテェロは教室を出ていった。


 その後ろを2人の男の子が着いて行ったのを見て少し落ち込んだボク。

 ボクも早くグイード以外の友達を作りたいなと思っていた。


「カ、カイ君!」

 今度は女の子の声がして下を向いていた顔を上げる。


「カイ君って食堂だよね?よければ私達と一緒に行かない?」

「えっ、もちろん良いよ!」

 そうだ!女の子の友達でも良いんだよね!そう思って嬉しさが込み上げ声が弾む。


「俺も行って良い?」

 グイードからも声がかけられ、当然ながら良いよと返事する。


「なら私もいいかしら?」

 グイードから視線を戻せばシルヴァーナとその両隣には取り巻きの2人。


「もちろん!」

 そう返答をすると席を立ち、ゾロゾロと8人で食堂まで向かった。


 はじめはリナ達のグループ3人がボクの周りにいたけど、食堂に到着する頃には、いつの間にかシルヴァーナと取り巻きの2人に囲まれることになった。

 隣にいたグイードは居心地が悪そうに距離を取っている。


 食堂に到着すると侍女さんが手をサッと上げこちらも見ている。

 手早く食券を購入してそのテーブルに向かうと、その侍女さんの立っている傍にあるテーブルには薔薇の花が飾られていた。

 これなら誰も座ろうとはしないかも……


 侍女さんがボクを手招きして座らせる。

 なぜボクが一番に?と思っていたら、そのボクの右にはグイードが、左にはシルヴァーナが座った。


 こちらを少し睨みながらも頂きますと言ってカツ丼を食べているシルヴァーナ。

 無言で食べはじめた他の女の子達に、何を話せば良いか考えてしまう。


 だが、隣のグイードから授業はまだ簡単だったなと声をかけられ、そこからは普通に料理の感想を言いあったりしながら食事を終えた。


 まだ時間があるからとその場で話を続けるボクとグイード。

 普段の森での生活になると、女の子達も興味があるのか黙ってこちらを見ているので、話を聞きたいのだろうと気分を上げて話をしていた。


 ふとシルヴァーナに目を向けると、急に顔を赤くして反対側を向かれてしまった。

 何を怒ってるんだろう?そう思っていたら、急に立ち上がったシルヴァーナ。


「行きましょう!」

 シルヴァーナは女の子達に席を立つように促し、他の子達も渋々と言った様子で教室へと戻って行った。


「やっぱお前は大変だな」

 またもそう言うグイードに、ボクはやっぱり嫌われているのだろうと本日何度目かの沈んだ気持ちに下を向いた。


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