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07.初めての授業 01


 初めての授業。

 真新しい教科書をめくり、午前中は国語と算数を行った。


 母様にはすでに文字も計算もある程度は教わっているので教わるまでもない内容だ。


 1時間目は国語。

 ひたすら文字を書く。


 エレオノーレ先生は黒板に魔法でバババと文字を表示させ、それをボク達は書きなぞった。

 50音という奴だ。

 ガリガリと書き込みをしていたらあっという間に90分が終わった。


 2時間目は算数だ。

 足し算、引き算を軽く説明し、問題を出され指差された人が答えてゆく。


 貴族家の人達は同様にできているようで、さらりと眺めながら周りとおしゃべりをしているようだ。

 先生に指差されてもチラっと見てすぐに答えていた。


 貴族家ではない人達は苦戦しているようで、教科書と黒板を見ながらエレオノーレ先生の話を聞いてノートを取っている。

 指差されたらしどろもどろになっている人が多い。


 大変そうだなと思ったが、何年かしたらもっと難しい内容も始まるようだし、その時に備えてノートに要点を纏めて書き留めてゆく。

 先生は所々で計算のコツを教えてくれる。

 頭の中でひとまとまりの数をイメージして、そこに足したり引いたりする数をぶつけてバトルさせるらしい。

 分析魔法の初歩だと言うので、みんなうんうんと唸りながら思考も巡らせているのだろう。


 ボクもやってみたが簡単にイメージできたけど、3桁ぐらいの計算なら暗算の方が早かった。

 今度は母様から教わった縦に数字を並べて計算する奴をイメージで行うと、暗算よりも早く答えが出せたので嬉しくて頬が緩んでしまう。


 これならもっと難しい問題が出ても簡単に解っちゃうんじゃない!

 脳内でそんなことを考えていると、背後からグイードがつんつんしてくるので振り返る。


 グイードも余裕があるようで暇を持て余しているのだろう。


「グイード、今後の為にもノートを取った方が良いんじゃない?」

「えっ?そうか?簡単すぎてつまらないよ」

「もう!勉強する為に学校に来たんだよ?」

「そっかー!カイは偉いな!」

 そう言いながらグイードは慌ててノートを取り始めた。


 ボクにはちょっと何を書いてるのか分からないワームの這った字だったけど……


「はーい、今日はここまでだけどこの問題は解けるまで頑張って!最後に解説するから。それまでは各自試してみてね!」

 黒板に10桁の計算をいくつか書いた先生にそう言われ、皆周りの人達と話し合いを始めたようだ。


 ボクも脳内で計算を終わらせノートに答えと計算の際の要点を纏める。


「カイ、どうしてそこでそうなるんだ?」

「ん?」

 気付けばグイードが机の横からボクのノートを覗き込んでいた。


 ノートには縦書きの計算式が書き込まれ、分析する際のイメージについてイラストを描いている。


「えーと、こうやると暗算でも計算できるんだよ。それをイメージしながら分析するとすぐに答えがでちゃうんだよ?」

「へー。……ホントだ!マジかよすげーな」

「へへへ。そうかな」

 グイードに褒められまた頬が緩んでしまう。


「ちょっと!私にも見せなさいよ!」

「あ、シルヴァーナちゃん」

 ボクが驚いている間にシルヴァーナがノートをさっと取る。


「こ、これなんなの!私だってこんな計算習ってないのに!」

「あ、それ一桁の計算を何度もやったらもっと早くなると思う……」

「えっ、まだ早くできるの!凄い!……あ、そ、そーね。まあまあやるわね!私も勉強になったわ、ありがとうカイ……行くわよ!」

 ボクが戸惑っている間に、シルヴァーナは席へと戻って行った。


「おい!俺にも見せれくれ!」

「えっ良いけど君は?」

「あ?俺様を知らないのか?マルチェロだ!親父はカシラギ商会の会長だ!」

「あ、そうなんだ。よろしくねマルチェロ君。ボクはカイだよ」

 ボクが自己紹介すると、マルチェロは舌打ちをしてノートに目を向けた。


「な、なんだよこれ!なんで商会の秘術である縦型計算術が……」

 ノートを手に取り手を震わせるマルチェロ。


「ちょ、ちょっとやめてよ!ノートがぐちゃぐちゃに……」

「うるさい!」

 ボクのノートは机の上に投げ捨てられた。


 マルチェロは鼻息を荒くしてボクを睨んでいる。


「はいはい!そこ、喧嘩しないの!教え合う時は静かにね!」

 先生の言葉にグッと歯噛みしながら押し黙り、ボクをもう一度睨んだ後、マルチェロは席へと戻って行った。


 ボクは悲しくて歯をグッと噛みしめる。


「カイ、お前も大変だな。あいつ、大きな商会の息子だからって威張ってるんだ。だからあんま気にすんなよ」

「そ、そうよ!気にする必要ないわ!なんなら私が潰してやるんだから!」

 気付けばまた傍まで来ていたシルヴァーナまで再来していた。


「グイードもシルヴァーナちゃんもありがとう。ボク大丈夫だから。2人がそう言ってくれるのは嬉しいよ」

 ボクを見ているグイードはニッコリ笑ってくれた。


 マルチェロを睨んでいいたシルヴァーナもふふっと笑っている。


「あ、勘違いしないでよ!私、ああ言う権力を笠に着るやつって大嫌いなだけだから!」

 そう言って帰っていったシルヴァーナを見て、権力を笠にって、シルヴァーナが言うセリフでは無いんじゃない?と思った。


「カイ、お前本当に大変だな」

 ため息をつきながらそう言うグイードに、良く分からないので苦笑いで返しておいた。


「カ、カイ君!もし良かったら……私達にも教えてくれないかな?」

 またも声をかけられるボク。


 視線を向けるとそこには3人の女の子がボクを見つめる様にして立っていた。

 胸には自分のであろう可愛らしい模様の入ったノートを抱えている。


「あ、うん、いいよ」

「「「ありがとう!」」」

 女の子達の素直なお礼っていいよね!


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