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06.寮での一夜 03


 食堂で焼きそばを見つめるシルヴァーナ。


「これは……なんですの……」

「焼きそばは初めてなの?」

「カ、カイ様は食べたことがあるのですか?」

「うん。うちでも母様やカーリーさんが作ってくれるよ」

「聖女様が……それにカーリー様もお作りに……」

 急に目を輝かせて焼きそばを見つめるシルヴァーナ。


「なあ、カーリー様って誰だ?」

「ああ、カーリーさんは―――」

「貴方!聖女様に連なりし神獣様であるカーリー様を知らないのですか!」

「神獣様?えっ?カイのおじさんとかじゃなくて?」

 2人がカーリーさんについて言い争いを始めるので、なんかもうどうでもいいやと思って、小さく頂きまーすと目の前のお肉を放り込んだ。




「ねえ、ご飯覚めちゃうよ?」

 半分ぐらい食べ終わった時、まだシルヴァーナがカーリーさんの素晴らしいところというテーマで話し続けてるので、なんだか恥ずかしくもなってきて声をかける。


「そ、そうですわね。今日はこの辺で勘弁して差し上げますわ!カイ様も、ありがとうございます」

「う、うん。あのさシルヴァーナちゃん。ボク、カイでいいからね?カイ様とか、恥ずかしいから……」

「ふぇ……あ、で、では!カイくん、と呼びますわ!でも、勘違いなさいませんように!クラスメートなのですから当然ということですわ!」

 シルヴァーナから良く分からない返答をされ、また心が落ち込んでしまう。


 クラスメートなのは知ってるし、だから仲良くしたかっただけなのに。

 その後、焼きそばを掻き込んで咽こんだりするシルヴァーナを横目で見ながら、ボクも目の前の夕食を食べ終わる。




「じゃあ、行こっか」

「おう!」

「シルヴァーナちゃん、また明日」

「明日なー」

 ボクとグイードが席を立ち挨拶をすると、トレーを持って返却口へ移動する。


 シルヴァーナからの返事はなかったけど、仕方なく同席してたんだし当然かもしれないけど……もう少し仲良くできたらいいな。


 部屋の前でグイードと別れ部屋に入ると、少し寂しくてグイード泊ってくれないかな?なんて思ったけど、寮生活に慣れるのも小学校の意義なんだよねと母様から聞いたことを思い出す。


 明日からはいよいよ授業も始まる。

 そう思うと不安もあるけどワクワクした気持ちも湧き出てきた。


「今日は早く寝ようかな」

 そう思ってシャワーを浴びて布団へもぐりこんだ。


 よし寝よう!

 そう思った時に母様へ連絡しなくてはと思い出す。


「危ない危ない」

 そう独り言を言いながら、ベッドの横に置いていた魔法のバッグから通信カードを取り出した。


 母様が作った魔道具だ。

 カードに少し魔力を流すとすぐに母様の声が聞こえた。


『待ってたわ!学校はどうなの?寂しくない?ちゃんとやれそう?いつでも帰ってきていいからね!そしたらママがお勉強見てあげるし、訓練にも付き合ってあげるわ!だから心配しなくて良いのよ?』

 母様の声に嬉しくなるが、ちょっと子供扱いされたようでムカっときてしまう。


「母様!ボクはちゃんとやってます!大丈夫ですから心配しないで下さい!」

 ボクの返答に母様からの返答はなかった。


「母様?」

『えっ、ああそうね?カイはママの子だもんね!ちゃんとやれてるのよね。偉いわ!さすがカイ!』

 母様の誉め言葉に嬉しくなって布団の中でくふふと笑ってしまう。


「そうだ、母様!夏休みなんだけど―――」


 ボクは食堂で話していた夏休みの計画を伝えると、"大歓迎よ"と喜んでくれた。

 もちろんディーゴさんも"どこにでも連れてってくやる"と言ってくれたようだ。


「じゃあまた連絡するね」

『ええ、分かったわ!いつでも連絡するのよ!』

 心配性な母様との通信を切ると少し寂しくは感じるけれど、今日から暫くは寮生活は続くのだ。


 楽しい学校生活が始まるのだから頑張らなくちゃ。

 そう思って目を瞑り、夢の世界へと旅立った。



 翌朝、寝ぼけながらも支度を済ませると食堂へ向かう。

 待ち合わせはしていないので一人で移動していた。


「カ、カイくん、おはようですわ!」

「ああ、シルヴァーナちゃんおはよう。それに護衛の人と侍女さんもおはようございます」

 ボクがぺこりと頭を下げると、護衛の人は微動だにせず、侍女さんは綺麗に頭を下げる。


「今日は1人なら……わ、わたくしが同席しても良くてよ?」

「うーんじゃあ、あっ!グイードくん!」

「わりー寝坊した!カイの部屋に寄ろうとしたけどな、多分もう出ただろうと思って!あれ?」

 シルヴァーナ越しにグイードの姿を見つけ思わず声をかける。


 グイードは髪の毛を手で直しながらボクとシルヴァーナを交互に見ていた。


「カイくん!わ、わたくしの方が先に声をかけて差し上げたのよ?」

「あ、そうだよね。じゃあ……3人で食べる?」

 ボクの言葉に2人は視線を合わせ、少し嫌な顔をしている。


「し、仕方ないわね!」

「仕方ないよな」

 こうして、しぶしぶながら3人で食べることになった。


 今日も侍女さんが華麗なトレー捌きでボクやグイードのものまで持って来てくれたのでお礼を言うと、侍女さんは少し頬を緩めてくれたので、侍女さんとは仲良くやって行けそうだと感じた。


 そして初めての緊張を味わいながら、時間までグイードと話をしながら時間を待っていた。


「はーい!今日から授業を始めるわよー!」

 エレオノーレ先生の挨拶で初めてのホームルームが始まった。


 どうやら今日から暫くは国語、算数、歴史という授業を行うらしい。

 真新しい教科書という本を3冊が配られ、パラパラとそれをめくりながら眺めている間に最初の授業が始まった。


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