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05.寮での一夜 02


 校内を案内してもらったボクは、将来の事について悩んでしまう。


「今は色々なことに挑戦したらいいぞ!」

「そうよ。リクなんて最近まで悩んでたんだから……戦うことしかできないのに」

「なんだよ!俺だって、将来はカーリー先生みたいに執事になったりするかもしれないだろ?」

「えー?無理無理ー」

 兄様達が喧嘩を始めたのでボクとグイードは一声かけて自分達の部屋へと戻った。


 寮の自室に戻ると制服を脱ぎ捨て浄化魔法で綺麗にすると、部屋着に着替えた。

 すぐにグイードが遊びに来てくれた。


 夕方まで楽しくおしゃべりすることにした。


 グイードは領地無しの貧乏男爵で小さな街で宿屋も経営していて、爵位を継ぐ兄ともう一人の兄、3つ離れた妹もいるんだって。

 将来騎士になりたいそうだ。

 王様に仕えて市民を守るために戦って、ついでに貧乏な家を助けたいんだって。


 ボクも東の森での生活を話すと、うんうんと言いながら楽しそうに聞いてくれた。


 グイードは入学前に両親から色々と聞いていたようで、この小学校についても詳しかった。

 聖女様、つまりは母様が私財をなげうって子供達が学ぶ為の場所を作ってくれたという話だ。


 王国にも元々貴族の通う貴族院はあるが、平民は親や雇い主がある程度の知識を教え込むのが普通だ。

 だから周りに恵まれないと一生文字の読み書きすらできないらしい。


 そんなこの小学校は5年前に始まったので、今は5年生までしかいない。

 その5年生が卒業する2年後に向けて、現在隣接する場所に中学校も建設中なんだと楽しそうに話してくれた。


 グイードの面白い話は続く。

 近くの田んぼで虫を捕まえて隠れて飼ってみたり、実はそれが蛾の幼虫で、羽化した3匹の大きな蛾が家中を飛び回りかなり怒られたりする話は一番面白くてこのまま同じ部屋で一緒に過ごせたらいいのにと思った。

 ボクも家の近くにある運動のできる広場や森の魔物なんかの話をすると、目を輝かせ"遊びに行きたい"と言ってくれた。

 学校では夏休みって言う長いお休みもあるようで、グイードもその時には実家に帰る予定のようだ。

 どうせならその時にグイードに森に遊びに来てもらって、そのままディーゴさんにグイードの実家まで連れてってもらえば良いよね?といった計画まで立ててしまった。


 もちろん母様やディーゴさんに聞かなきゃ分からないけど、グイードもドラゴンに乗れるのか?本当か?と嬉しそうにしていたので、夕食後にでも連絡してみようと思っていた。

 本当は今確認してもいいんだけど、もし断られたら何度もおねだりしてみようと思ってるので、それをグイードに見られるのは恥ずかしかったから一人の時に連絡しようと思ったんだ。


 時間はすぐに過ぎてしまい夕食の時間になった。

 食堂に向かうと、その入り口でシルヴァーナに遭遇する。


 護衛騎士と侍女のお姉さんも傍にいたが、シルヴァーナの嫌そうな顔を見て心がチクリと痛くなった。


「シルヴァーナでも食堂使うんだな」

「後学のためよ!じゃなきゃ誰がこんな騒がしい場所で食事なんて……それより呼び捨てを許した覚えはないわ!不敬じゃないかしら!」

「なんだよ!学校じゃ身分は関係ないって先生が言ってただろ!だよなおじさん」

 グイードが両手を首にあて不貞腐れたように護衛騎士に話しかけていた。


「そうですね。そのように聞いています」

 そう言う護衛騎士は、グイードを睨みつける様に怖い顔をしていた。


「ちょ、ちょっと!やめようよ。グイードもシルヴァーナちゃんも、ご飯食べにきたんでしょ?」

 ボクがそう言うと、グイードは不貞腐れたように食堂に入って行った。


 シルヴァーナは顔を赤くしてこちらも見ている。


「カ、カイ様がそう言うなら……仕方ないから今のは無かったことにするわ!一応同じ王族扱いなんでしょ!でも、勘違いしないでよ!あくまでも準王族って―――」

「グイード待ってよー!」

 シルヴァーナが何か言っているが、ボクはグイードに置いて行かれないように食堂へ入って行った。


 後ろからまたシルヴァーナの怒っている声が聞こえ、ちょっと悲しくなった。

 仲良くしたいのに……


 グイードは食券の魔道具の前で待ってくれた。

 ボクも急いで焼肉定食ってものを頼んで席を探すと、兄様達を見つけたがどうやらお友達もいたので軽く手を振っておくだけにした。


 今の時間はそれなりに混雑していたが、食堂の端の方に席を確保すると2人の食券が光ったので取りに行こうと腰を上げる。


「カイは待ってろよ。席を奪われたらやだからな!」

 そう言って手を出したので食券を渡しお礼を言った。


 グイードは器用に2つのトレーを持って戻ってきた。

 ボクの焼肉定食はお肉にご飯にサラダ、味噌汁のセットのようだ。

 家での食事の様でほっとする。


 グイードはカツ丼だった。

 昼間ボクの食べてるのを見てたから頼んだのかな?


「グイードは凄いよね!2つも持ってスイスイ狭いところをすり抜けてった!」

「まあなー!俺んち、貧乏男爵だから宿も経営していて、食堂の手伝いなんかもやってたから、他の奴等には負けないぜ!」

「おー!」

 そう言うグイードを手を叩いて出向かえる。


 勝ち負けが何か良く分からないけどやっぱりグイードは凄いと思った。


「カイ様!隣良いかしら!」

 さあ食べようと思った時、横から声をかけられビクっとしてしまう。


「シルヴァーナちゃん?」

「せ、席が空いてなくて仕方なく提案しているのよ!よろしいかしら!」

 ボクは周りを見ると確かに席があまり空いてないけど、いくつか空席が見えた。


「あ、あっちに―――」

「ん”ん”ん”!」

 空いている席を教えようとしたが、護衛騎士が怖い顔をして大きく咳払いをしている。


「だめ、かしら?」

 少し顔を赤くしたシルヴァーナが泣きそうな表情でそう言うので、何か事情があるのかもしれないと思って席を立つと隣の椅子を引いた。


「し、失礼するわ!」

 そう言って座るシルヴァーナは少し嬉しそうだった。


 思わず母様に習った女性への礼儀作法で椅子を引いてみたけど、ボクは召使じゃないんだけどな?


 沈黙が続く中、侍女のお姉さんが音もなく動きあっと言う間にトレーを持って席まで戻ってきた。


「すごい!」

「お、俺だったあのぐらいできるハズ……だぞ」

 僕の感想にグイードも反応する。


「わたくしは日々訓練をしておりますので……」

 無表情でそう言ってトレーをテーブルに置く侍女のお姉さん。


 シルヴァーナはどうやら焼きそばを頼んだようだ。


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