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04.寮での一夜 01


 王様は、母様に向かて渋い顔をしている。


「ねえ、なんでシルには様まで付けてるの?私にもちょっとぐらい敬意を持ってくれないかな?」

「何よ、初恋の人だったんでしょ?余計なこと言って」

「いや、あれは……ウケるかなって?」

 王様は頬を掻いている。


 そう言えば初恋の人って言ってたけど冗談だったのかな?


「もう、変な空気になってたじゃない?そもそもローランドはパパさんに許嫁にって言われて懐いてただけじゃない!ほとんどの時間、ディーゴに夢中だったように見えたけど?」

「いや、それは……」

 なんだか面白い話をしているので、ディーゴさんと王様の顔を交互に見ていた。


「そうだな!お前、すぐに俺にくっついて来てたよな!」

「や、やめてよ!私にも王としての威厳があるんだからね!」

 王様の背中をバンバン叩くディーゴさん。


 シルヴァーナはオロオロと戸惑いながらそんな王様の姿を見ていた。


 それからしばらくして、王様と母様達に見送られながら、シルヴァーナの護衛騎士だと言う男の人に連れられ教室に戻る。


「ついでに一緒に教室まで行けばいいだろ?そのまま良い感じでくっついてしまえばいいんだ!」

 王様がそんな可笑しな冗談を言うので、ボクとシルヴァーナは恥ずかしくなって慌てちゃった。


「私は、絶対に嫌です!」

 シルヴァーナがそう言って首を横にふってイヤイヤしていた。


 そんなにボクを否定しなくても良いと思う。

 結局、気まずい雰囲気のまま教室までたどり着く。


 開いていたドアからエレオさんが出迎えてくれたので、そのまま席に戻ると少し不機嫌なまま座った。

 すぐに隣の席に座っていたグイードが話しかけてくる。


「なあ!お前のお母様って、聖女様なのか?」

「あ、うん」

 ボクの返事に教室の彼方此方で歓声が上がる。


「静かにー!」

 その歓声はエレオさんの一声で打ち消された。


 その後、エレオさんのから授業や寮についての説明がなされた。


 A組は座学、魔法、体力など、何かに秀でた人達の集まったクラスなので、一番良い寮に住めるらしい。

 でも来年のクラス替えの時に評価が下がれば入れ替えられちゃうから、一生懸命勉強してねって言っていた。

 だから絶対にA組をキープして、父様と母様を喜ばせなきゃ!と思った。


 その話の後に案内されたA組の為の寮の部屋はとても広かった。


「でも女の子の部屋はそれ以上に広いのよ」

 エレオさんの説明に、女の子達がキャッキャと声を弾ませていた。


「なんか狡い!」

「女の子は色々と大変なのよ?」

 説明の後、グイードが言った文句には唇に指をあてたエレオさんのからそう返されていた。


 色々ってなんだろう?

 そう思ったが、ボクは男の子用の部屋でも十分広くて快適そうだから満足だった。


 A組だけは寮に執事や侍女を連れてくることもできるらしい。

 B~D組は駄目なんだって。

 でもボクは自分の事は自分でできるから侍女も執事もいらないけどね。


 部屋を確認した後は食堂に案内された。

 そのまま本当に昼食を取るようだ。


 食堂はそれなりに混雑しているけどこれで全員なのかな?


「ここで食べる人もいるし、部屋に運んで食べることもできます。持ち込みでシェフに作ってもらう事も認められてるので、希望の人は家の人に手配してもらって下さいね!」

 エレオさんの説明で納得した。


 貴族さんは料理人を手配して部屋で食べるのが多いんだろうね。


 流石にA組。

 すでに料理人を用意している子もいるようで、半数ぐらいは部屋へと帰って行った。

 残されたボク達は、食堂の入り口の横にある魔道具で好きな料理のボタンを押し、その券が光ったらカウンターに行けば良いと教えられる。


 後は夕食まで自由にして良いと言われたので、カツ丼っていうものを選んでグイードと一緒に食堂の中へと入って行った。

 何度か母様が作ってくれた奴だろう。


「おーい、カイー!」

 遠くで声が聞こえて聞こえ顔を向けると、食堂の端の方で兄様と姉様がこちらに手を振っていた。


「グイード、あれボクの兄様と姉様。一緒に食べない?」

「えっ、いいのか?」

「もちろん!」

「じゃあ行く!」

 そう言ってボクは2人の元にゆっくりと歩いて行った。


 食堂で走ったら母様がいたら怒られちゃうからね。


「カイも、えーっとそっちの子も、もう食券選んだんだよね?」

「うん。兄様、姉様、こっちがグイード君。お友達になったんだ!」

 兄様と姉様は"ふむふむ"、"あらまあ"と言った後、自己紹介をしている。


 グイードは兄様達の耳が気になったようで、視線が少し上の方に動いていた。


「ふふ。うちのお父様は獣人みたいなものなの。私と兄は耳も尻尾もあるけど、カイには無いのよ。それでも私達はちゃんとした血のつながった家族よ!」

「あ、はい……とても、素敵なお耳です」

 グイードは、姉様の耳を見ながら真っ赤になっている。


 皆、仲良くできそうで良かった。




「ご馳走様でした!」

 兄様達と一緒に食べ終わると3人でいつもの挨拶をする。


 グイードが"頂きます"の時は黙ってたみたいだけど、さすがに"ご馳走様"で我慢ができなくなった様でボクに聞いてきた。

 前に母様が"私の前の世界の言葉"って言ってたけど、それは本当だったみたい。


「食後の感謝などを示すおまじないよ」

 姉様がそう説明すると、グイードも真似して両手を合わせて"ご馳走様"を使っていた。


 今日は新入生以外も夕食までは自由時間だというので、兄様達に施設を案内してもらう。

 もちろんグイードも一緒だ。


 一応だけど他に一緒に過ごしたりする人はいない?と聞くと、そもそも辺境からここに入学したので知り合いは誰もいないらしい。

 今朝もボクが優しそうに見えたから声をかけたんだって。


 そう言われると凄く嬉しいな。


 ボク達は食堂から出ると校舎内外にある訓練場、図書館という本がいっぱいある部屋、調理場や裁縫、鍛冶場などの作業室、中庭には執事や侍女の為の訓練場などがあった。

 いろいろな職に就くために訓練する施設が彼方此方にあるようだけど、小学校ではまだどれかを決める必要はないらしい。


 楽しく学んで興味のあることにドンドンチャレンジしたら良いみたい。

 兄様達はそれぞれ騎士と魔導士を志望していると教えてくれた。


 確かに兄様も姉様もとっても強いからね。

 ボクは、何になりたいのかな?


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