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03.入学式 03

不定期更新。本日は1話から3話まで更新予定。


 入学式で王様に楽にして良いよと許しを得たボク達。


 皆は恐る恐るという感じで頭を上げているように見える。

 初めて見る王様に、あれ?見たことあるかも?と思ってしまう。


「今日と言う素晴らしい日に、晴天にも恵まれ、これはきっと聖女様のお導きによるものであろう!その幸運に感謝し、大いに学び、そして一生の友を見つけ、そして、永遠の伴侶を見つける!なんてのも良いかもしれんな。

 今しかできないこともある!悩み、考え、そして助け合い、人生を楽しむと良い!……と、こうして偉そうに言うが、私も学園時代はあまり授業に出ずにふらふら出歩いていたのだがな!」

 そこでクスクスと笑う声が彼方此方で聞こえた。



「では、長々と話しておってもつまらぬだろう。本日は聖女様にもお越し頂いている!この国の守り神であり、私の良き友でもあり、そして……初恋の人でもあった……っというのはここだけの話にしてくれ!」

 王様の言葉に彼方此方から吹き出す声が聞こえた。


 でも、聖女様って母様のことだよね?


「では、聖女様、後はよろしく頼む!」

 そう言った王様の顔は子供のように笑って見えた。


「ちょっと!もうっ!」

 そして前の方から母様の声が聞こえた。


「陛下にちょっと可笑しなことを言われたけど、私が聖女ニコレッタ・レイナード・ユリシースよ!」

 そう言って前の方からふわりと降りてきた母様は、真っ白なドレスを身に纏いとても綺麗だった。


 周りの皆はまた膝をつき、今度は両手を胸に前に合わせ祈っている。

 ボクは出遅れポカーンとしてしまったけれど、母様がこちらを向いてブンブン手を振っている。

 良く見たら兄様も姉様も立ったままでこちらに手を振っていた。


「ちょっと!何ボーっとしてるのよ!聖女様よ!不敬じゃない!」

 小声でそう言って睨みつけるシルヴァーナ。


「でも、母様だし」

「何言ってるのよ!母様って……いや待って?あんた、レイナードって言ったわよね?」

「うん。カイ・レイナード。あっちで手を振ってるのはボクの母様だよ?」

「なっ……」

 シルヴァーナはちらっと目線を上げ、こちら側に手を振っている聖女の存在を確認した。


「そうだったのね。さっきの無礼な発言は撤回させて戴くわ……でも、これで勝ったと思わないことね!」

「えー?」

 キッと睨まれてしまった事に納得がいかない。


 シルヴァーナの言っている意味が理解できずに固まっている間に、母様が何か長ーい呪文を口にした後、両手をふわりと広げると、体育館の上からキラキラした光を飛ばしていた。

 多分母様の祝福って魔法だと思う。


「もう顔を上げて良いわ!私の祝福を受けて、元気に健やかに!学校生活を楽しんでちょーだい!」


 皆が顔を上げ、キラキラと降り注ぐその光にうっとりとしている。

 そして誰にも気付かれることもなく、いつの間にか母様はいなくなっていた。


 皆が戸惑う中、王様も席を立ち入学式は終わった。


「さっ!皆さんは廊下に出てー、シルヴァーナ様とカイ君は少し残ってね。じゃあまた教室で!」

 エレオさんはそう言ってA組の皆を引き連れ、体育館を出ていってしまった。


 ポツリと残されるボクとシルヴァーナ。

 すごーく気まずい。


「カイくんは、本当に聖女様の御子息様なのね……」

「そうなんだよね。ボクも家でダラっとしてる母様しか見たことが無かったから、今日はちょっとびっくりしちゃった」

 気まずさを打ち消すように返事するが、それに対するシルヴァーナの返事は無かった。


 やっぱりあまり良い関係を築けそうにないな。

 お姫様だしね。


 それから暫く無言な時間は過ぎる。


「カイー!」

 体育館のドアがバタンと音をたて、母様の声が聞こえた。


 気付けばボクは抱きしめられている。というのはいつものことだ。

 ボクも毎日ディーゴさんと一緒に戦闘訓練しているのに、未だに母様の動きが見えない。


「ニコ様!待ってくれ!」

 その後から王様が追いかけてきたのが見えた。


「お父様!」

 シルヴァーナが嬉しそうに駆けて行く。


 王様の元までたどり着いたシルヴァーナは嬉しそうに何かを話していた。

 そんなボクは母様に頭を撫でられ、すぐそばには父様、ディーゴさんとカーリーさんもいた。3人共こちらに来た動きがやっぱり目では追えなかった。


「カイ?お友達できた?ダメなら学校通うのやめとく?そうだ!森から通えば良くない?」

「もう!ボクも母様と離れるのは寂しいけど、成長する為には必要なことなんだよ!ってカーリー先生が……」

「カイ……」

 寂しそうにする母様に胸がキュっとしてしまう。


「ニコ様、この子がカイくんだね。大きくなった」

「そうよ。子供ってすぐに大きくなるよな。ずっと小さければ良いのに」

 可笑しなことを言う母上の近くには、王様とその後ろに隠れるようにしてこちらを覗いているシルヴァーナがいた。


「お初にお目にかかります。ボク、カイ・レイナードです」

「私はローランド、ロンドって呼んでいいからね」

「はい!よろしくお願いしますロンドおじさん!」

 王様は優しい顔で話しかけてくるのでホッとしていた。


「ふふふ。可愛いね。カイくんと会った時は1歳になってなかったかな?いや、1歳にはなってた?あれ?会ったのはリク君とソラちゃんだけだっけ?最近忙しすぎて訳が分からなくなってるんだよね」

 ボクってやっぱり王様と会ったことあったのかな?


「少し休みをとったら?あまり忙しいと良い仕事はできないよ?ほら、シモーネさんに丸投げしちゃったり……」

「シモーネにはかなり助けられてるからね。早くジェノが次いでくれないかなってホンキで思ってるよ」

「いや、ジェミニアーノはまだ11才じゃない!もう少し頑張んなさいよ!」

 母様はボクに小言を言う時の様に王様を叱りつけている。


 王様と母様は本当に仲良しのお友達なんだなって思った。


「そうなんだけどね!あっ、そうだ。この子がシルヴァーナ。第二王女だけど、あったことあったっけ?同じクラスなんだってさ!」

「あら、シルヴァーナ様、お初にお目にかかります。ニコレッタ・レイナードです。ニコって呼んで良いわよ?仲良くしてくれる?」

 母様がシルヴァーナに話しかけている。


 これでシルヴァーナがボクに優しくしてくれたら、お友達にはなれるかな?


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