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21.初めての運動会 05


 〇×ゲームの場へ集まったボク。

 この競技には各クラス5名、計60名が参加する。


 設置された大きな壁には3メートルぐらいの白い幕が2か所、上には〇と×が書いてあった。

 係の上級生に並ぶように言われ誘導されるままに移動する。


 20名ずつ3組に分かれての参加で、ボクは最初の組になるようだ。ボクのクラスでは仲の良い三人組の1人カルラちゃんと、何かとボクに文句を言いに来るマルチェロくんが一緒だった。


「カイー!頑張ってー!」

 母様の声が聞こえた。


 ボクは母様を見つけ手をふると、母様は嬉しそうな笑顔の後、虹色の光を空に放っていた。周りの注目も集まってしまい少し恥ずかしいので、あまり派手なことはやめて欲しい。


「では一組目の第一問、私、エレオノーレ・オルランディが、初めて炎魔法を発現できたのは5歳の時である!〇か×か、制限時間は10秒よ!よーいドン!」

 マイクを握る先生がそう言って空に炎を打ち上げ破裂させると、並んでいた生徒たちが一斉に走り出す。


 そして幕の前に立つと幕に背を向けライン上に立っている。

 ボクは直感を信じて〇の方に立つと、ドキドキする胸にそっと手を添え、先生のカウントダウンが終わるのを待った。


「時間でーす!もう変えられなわよー!」

 そう宣言する先生は、〇と×の間に透明な何かを作り出していた。


 左右を確認すると×の方からマルチェロくんがボクを睨んでいる。

 丁度半々ぐらいに別れているが、周りを確認すると同じ〇の方にいたカルラちゃんと目が合いホッと胸をなでおろしていた。でもボクは直感で選んだだけなので、そんなに安心しないでほしい。そう思うと余計に不安になってきた。


 ボクは3歳から魔法ができたはずだから先生だって5歳でできたっておかしくないハズ……いや、逆にボクと同じように3歳で使えたなら×だよね?あー、失敗したかも!


「じゃあみんな、そこのラインに立って幕に背を向けて、後は祈るだけよー!」

 先生の合図でみんな動き出す。


「エレノ!あんた5歳で炎出したんだよね?そうよね?」

 母様がそんなことを叫んでいる。


 ボクは恥ずかしくてもう×でいいから、と思ってしまった。


「聖女様ー?あんまり騒ぐとカイくんに嫌われちゃうわよ?」

 そんな声まで聞こえ、恥ずかしくて目をぎゅっとつぶる。


「では、結果発表ー!」

 その合図と共に立っていた床が浮き上がる。


 ボクは床に飛ばされるように飛び白い幕をくぐった。

 ちょっとびっくりして体を強張らせたが、ボクの体は柔らかい何かに包まれるようにして止まった。

 横からはバシャンという水の音と共に多数の悲鳴が聞こえてきた。


 目を開けて体を起こすと、そこはふわふわのマットの上で、反対側を除くと緑色のどろどろした何かにまみれた人達が見えた。その中には当然マルチェロもいて、悔しそうに緑の床をバシャリと踏みしめていた。


「ちなみにあれは安心安全、ヒールスライムが放出する粘液なのでとっても体にいいんですよー!でも少し匂うので脱落した生徒達はシャワー室へ直行して下さいねー!」

 その声と共に退場する脱落者たち。


 ボク達はそれを見送りながらまた反対側の位置へ戻ることになった。

 少しして準備が終わったようで第二門が出題される。


「それでは第二問、聖女ニコレッタ様の初恋は、12歳である!あ、ニコレッタ様、答え教えちゃだめよ?ヒントになるような行動したら、失格だからね?さあ考えてー、制限時間スタート!」

 ボクは母様が悔しそうに地団太を踏む姿を横目に見ながら〇と×の境目に立つ。うーん、どうしたら良いのだろう?


 母様の初恋は父様だったのだろうか?父様とは母様が本当に小さな頃に知り合ったって聞いたことがあるけど、でも12歳で初恋?もっと早いのかもしれない……かな?いや遅いのかな?自信が無いけどとりあえず×にしてみようと移動した。


「カイくん、良かったら手、繋いでくれる?」

 ボクのそばまでやってきてそう言ったのはカルラちゃんだった。


 恥ずかしそうに差し出してきたカルラちゃんの手を、ボクはドキドキしながら握った。

 小さくて柔らかくて暖かい。ボクの心臓が激しく音を立てていた。


 母様に視線を向けると落ち着かない様子でこちらを見ている。正解なんだろうか?その表情からはどちらなのか分からなかった。

 ふと視界に映ったシルヴァーナちゃんは、なぜかこちらを睨みつけているように見える。あれ?これって不正解?実は母様のこれって有名な話だったの?


 そう思いながらカルラを見る。


「あのね?私も正解が分からなくって、でもその様子だとカイくんも分からないんだよね?」

「そうだよね?ボクも分からなくってさ?ごめんね役に立てなくて」

「いいのいいの。私、またあの緑のやつに落ちちゃうって思ったら怖くて、カイくんが一緒なら怖くないかな?って思ったんだ」

「そうなんだ。大丈夫だよ。母様も安全って言ってたし」

「ふふふ。そう言ってたよね。じゃあ大丈夫かな?でも手は握っててね」

「う、うん」

 ボクは笑顔になったカルラちゃんを見て恥ずかしくなって下を向いた。


 手が汗ばんできたように感じたけど、ここで手を放すわけにはいかないよね?そう思いながら緊張を隠しその時を待っていた。


「では時間です!心の準備は良いですか?それでは皆さん、レッツゴー!」

 その掛け声と共にまた浮遊感が……


 ボクはまた宙を飛び、背中に柔らかな感触を感じた後、上の方からも柔らかく暖かいものに包まれていた。


「ご、ごめんね!すぐに退くから、キャッ!」

 上に覆いかぶさるようにしていたのはカルラちゃんで、急に体を起こそうとしてふわふわに手を突いた彼女は、そのまま沈み込むようにして僕に体を預けてきた。体勢が変わり顔に柔らかいモノが押し付けられる。

 良い匂いもしてなんだか頭がぼーっとしそうだ。


 それから数秒後、ボクは顔の圧迫感から解放され、顔を真っ赤にしたカルラちゃんに謝られていた。いや、謝るのはボクの方では?この場合はお礼を言った方が良いのかな?そんな混乱する気持ちのまま、気付けばカルラちゃんと手を繋いで元の位置へと戻ってきていた。


「あらあらまあまあ、素敵な光景も見られたところで、第三問、始めましょーか!」

 そんな先生の言葉と共に一部から「カイくん!何やってんのよアンタ!セクハラよセクハラ!」という声が聞こえた。多分だけどシルヴァーナちゅんの声だろう。セクハラってなんだろう?


 だけどその声と共にカルラちゃんがボクの手を放してしまう。

 少し寂しさを感じつつ、きっとシルヴァーナちゃんのあの言葉はボク達を揶揄う言葉なのだろうと理解した。


 仕方ないよね?そう思いながら次の問題を待っていた。


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