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18.初めての運動会 02


 今日も授業は問題なく終わり、昼食を食べた後は運動会の練習タイムだ。


 シルヴァーナちゃんが緊張した様子でボクを見ている。


「じゃあ始めますわよ!」

「じゃあ、並びはどうするの?」

 ボクの言葉に返事はなく、シルヴァーナちゃんと御付きの2人はボクの横にくる。


「今日はこの並びですわ!」

 そう言ってシルヴァーナちゃんがボクの右側にやってきた。


 左側には不満そうな顔をした盾使いのベアトリーチェちゃん、シルヴァーナちゃんの反対側にはレイピア使いのフェデリカちゃんが満面の笑みで並んでいる。


「じゃあカイ君、私の足のは結んでくれるかしら?」

 そう言って結ぶ用のハチマキを手渡されたのでしゃがみ込んでシルヴァーナちゃんの足を掴むと、ハチマキを結んでいく。


 途中でくすぐったかったのか「ひあ」とか「ふあん」と体をくねらせていたシルヴァーナちゃん。

 結びにくいので足を動かさないでほしい。


 なんとか結び終わると、今度はベアトリーチェちゃんは「(わたくし)が結びますわ!」と言ってボクの足をグイっと掴んであっという間に結んでしまった。

 フェデリカちゃんは時間をかけてシルヴァーナちゃんの足を撫でまわしながら結んでいる。

 それをシルヴァーナちゃんが無言で見ていた。


「じゃあ、とりあえず向こうまで歩いてみましょう……カイ君、わ、私の腰に、手を、手をまわして……」

「えっ、ああ、そうだね!」

 ボクはシルヴァーナちゃんが言う通り背中に手を回す。


「ひわぁ!」

 シルヴァーナちゃんの大きな悲鳴に思わず手を放す。


「なぜ離すのですか!」

 怒られた。


「じゃあ、もう一回手を回すから、叫ばないでよ?」

「わ、分かってますわ!」

 顔を赤くしたシルヴァーナちゃんの腰に恐る恐る手を回す。


「こ、これで安定感が増しますわ!二人も良いわね!準備できたらイチ!ニッ!のリズムですわよ!」

「「はい!」」

 2人の返事の後、ベアトリーチェちゃんはボクの腰にグイっと手を回した。


 ボクの左手は行き場をなくしてふらふら彷徨っている。


「準備オーケーです!」

(わたくし)も大丈夫です!」

「では、行きますわよ!せーの、イチ!ニグエッ!」

 ボク達は盛大に転んだ。


「シルヴァーナ様!」

 ベアトリーチェちゃんがハチマキを引きちぎる勢いで解くとシルヴァーナちゃんの方へ移動して体を支えている。


「シルヴァーナちゃん、まずはゆっくり歩幅を合わせるところからやろう?思ったより危ないから」

「そ、そうね」

 ボクもハチマキをシルヴァーナちゃんの足のハチマキを解き、赤くなった足を見て、身に着けていた聖魔力の籠ったペンダントを外し、シルヴァーナちゃんの首に下げる。


「あ、これ……」

 ペンダントが淡い光を放たれシルヴァーナちゃんの足にまとわりついた。


「ありがとうカイ君。これって、カイ君のお母様、聖女様のペンダントですわよね?」

「うん。当日は付けれないけど、今日は練習だから着けてきたんだ」

「私も、15歳の成人の儀の際にはお父様から頂けることになっているのよ。初めて使ったけど凄い効果なのね」

 シルヴァーナちゃんは嬉しそうに赤みの取れた足をさすっている。


 ボクは母様の魔道具が褒められて嬉しくなった。


「そうだよ。このペンダントがあれば、腕が捥げたくらいなら直しちゃうんだからね!」

「腕っ!」

 さっきまでの雰囲気は一瞬で無くなり、3人が口を開けてこちらを見ている。


「まあいいですわ。これはお返しします。練習を再開しましょう!」

「うん」


 それからボク達は時間いっぱいまで練習を続けた。

 最初はゆっくりと歩幅と掛け声のタイミングを揃えることを意識して少しづつ……


「こんなのじゃ、優勝できませんわね……」

「うーん、まだ練習の機会は何度もあるし、ボクも何か考えてみるよ」

「わかりましたわ。私ももう少し2人と練習をしてみますわ」

 シルヴァーナちゃん達は肩を落として教室へと戻って行った。


 翌日、午後は騎馬戦の練習となった。

 ボクは見学である。


 午前中に張り出されていた予定表を見ると4人5脚の練習は後3回。

 それ以外は騎馬戦や徒競走、綱引きの全員参加の練習に、各競技の練習がある。

 ボクの参加する借り物競争と〇×クイズ、工作競争に練習は無いようだ。


「ボク、暇すぎない?」

 そう呟きながらも4人5脚の練習方法を考える。


「あっ、いたいた!」

「やっぱり暇してるのね!」

 聞き覚えのある声に振り向くと、兄様と姉様がすぐ近くまで歩いてきていた。


「兄様も姉様も暇なの?」

「ああ。去年まではもう少し出れる競技もあったんだけどな!」

「リクが一人で全部の玉を持って籠に入れたり、騎馬戦で全員のハチマキを奪いきったりするからよ。少しは自重しないと」

「だってよー、勝負事は全力だろ?」

「魔力を封じられたぐらいで私達が他の子に負けるわけないでしょ?適度に合わせてギリギリ優勝するぐらいの演出しないと」

「めんどくさーい」

 ボクは2人の話を聞きながら笑っていた。


「カイ、暇なら久しぶりに魔法なしで対戦しようぜ!どれだけ強くなったか見てやるよ」

「うん。肉体強化もなし?」

「ああ。あとそれも外せよな」

 兄様がボクの付けているペンダントを指差しそう言った。


「じゃあ私が預かっとくわね。怪我したら直してあげるから、カイも全力でやってみなさい!」

「うん。分かった」

 そう言って準備運動を始めた兄様に倣って、ボクも体をほぐしてゆく。


「じゃあ、ここら辺なら良いだろう」

 3人で校庭の端の方へ移動すると、ボクは兄様から距離を取る。


「そうね。準備は良い?では、はじめ!」

 姉様の合図により兄様との久しぶりの組手が始まった。


 ボクは全力で兄様に向かって飛び出すと途中で横に方向転換をする。

 最短距離で回り込むと兄様の背中に蹴りを放ち、それが空を切ったところで兄様に背後から押さえつけられていた。


「は、早すぎない?」

 全く見えなかった。


「はい、リクの失格ー!」

「な、なんでだよ!」

「あんた今、強化魔法使ったでしょ!魔力出てたわよ!」

「えっ、ずるいよ兄様!」

 兄様は困った表情をして頬を掻いていた。


「やっぱ魔封じの腕輪ないとだめだな。カイが早すぎて咄嗟に魔力出ちゃってたぜ」

「先生に借りてくる?」

「そうだな……カイ、ちょっと待っててくれな!後、俺がズルってわけじゃないからな!咄嗟にだから!それだけカイが成長したってことだからな!」

 ボクは必死に言い訳する兄様に笑いながら手を振って見送った。


「必死になって。ズルはズルじゃんね?でもカイ、カイからも魔力出てたわよ?あの方向転換する時」

「えっホント?」

「うん。無意識なんだろうけどね。普通はあの動きしたらカイの今の筋肉じゃ筋痛めちゃうかな?」

 姉様は母様に色々人体の事を教えてもらっているようで、こういった話は詳しい。


「そうなんだ。兄様戻ってきたら謝らなきゃ」

「いいのよ。リクはそう言うの全然分かってないし、でも、カイも普段から魔封じの腕輪付けて練習した方がいいわよ?あれなら数がいっぱいあるはずだし個人的に借りれるから。魔力なしの動きに慣れた方が動きが良くなるから」

「分かった」

 そんな話をしていたら、兄様が腕輪を持って戻ってきた。


「ふう。じゃあ今度こそちゃんとやろうぜ!」

「うん」

 腕輪をはめたボクと兄様は、再び距離を取って姉様の合図を待っていた。


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