16.初めての里帰り 03
アスレチックの前。
ボクは新たに設置された自動人形にビクつきなららも挑戦を開始した。
最初の網の目のネットと長いつり橋、その後の滑車にロープにつながっていてそれを掴んで降りる奴で自動人形が真横を飛んでパンチが飛んでくる。
その後の突起が生えた登り棒とその先の雲梯に滑り台には、木剣を振り回す自動人形がついて回っている。
砂地で500メートルダッシュでは、地面からワーム型の自動人形が大口を開けて丸呑みしようと突っ込んでくる。
2メートル、1メートル、50センチの高さで不規則に並ぶ棒のエリアでは、上を飛んで抜けない様に上空から蹴落とそうとする自動人形がいた。
最後に動く石柱が多数立ててあるゾーンでも、石柱に交じって自動人形がいて、石礫を飛ばしてきていた。
ちょっと強すぎるから!アスレチックより自動人形を躱すのに必死だよ?
夏休みにグイードが来た時にはこれは止めて貰おう。
グイードが死んじゃう。
それが終わったら今度は広場の横の格闘スペースで、ディーゴさんと素手での組手に汗を流した。
ディーゴさんはたまにしか攻撃してこないけど、警戒を緩めた頃に拳が飛んでくるので気が抜けない。
そして、ボクからの攻撃は全然当たらない。
背後にも目があるみたいに回り込んでの一撃でも紙一重で躱されてしまう。
ディーゴさんから「カイも俺の拳を無意識でも躱せる様に気配察知の能力を磨かないとな」と言われるが、やり方を聞いても「ビリっときたらバッてやればいいぞ」と言われて混乱する。
それについての説明は父様と母様も似たようなものなので、こういう事はカーリーさんに聞くことにしている。
カーリーさんは魔術的な対象法として気配察知の方法や、気配の消し方を教えてくれている。
すべては魔力であり、遮断と感知だと言うので前々から練習しているけど上達している気がしないだよね。
学校に通う様になってから色々あってさぼっていたけど、今日改めてもっと頑張らなきゃならない必要性を感じたので、寮に戻ってからもちゃんとやろうと思った。
その後はお風呂に入って体をほぐす。
しっかりほぐしておかないと明日は動けなくなっちゃうしね。
そして晩御飯はまた皆でバーベキュー。
夜はやっぱりこれだよね!
ストックしてあるお肉をいっぱい鉄板に並べ焼いていく。
隣の鉄板ではディーゴさんが大量の麺を野菜と一緒に長い箸で炒めているので、今日は焼きそばもあるようだ。
お肉の後に食ーべよっと。
出来上がったのは焼きそばを卵でくるんでソースをかけるオムそばだった。
中には隣で焼いていた猪肉がぶつ切りで入っていたので、ジューシーで美味しかった。
父様はいつの間にかラーメンを作っていたし、カーリーさんは食後のイチゴがたっぷり入っているアイスクリームを作ってくれた。
どれも美味しかった。
そんな楽しい時間をすぐに終わってしまった。
なんだか今日はこのまま戻りたくないな、これが母様が言っていたホームシックって奴のかな?と思ったけど、「行っちゃやだぁー」とボクに泣きがながら縋りつく母様を見て冷静になれた。
「母様、また帰ってくるから泣かないでよ」
「うぅ……ほんとに?すぐ帰ってくる?来週も帰ってくる?」
「それは……来月の週末ならバジリオさんの装備もできてるはずだから、その時に来るよ。それまで待ってて?」
「分かった。ママ、それまで我慢するからね。絶対に怪我とかしちゃだめよ?ママ、凄い装備に仕上げて待ってるから!」
そう言いながらどこからか取り出したハンカチで涙を拭き鼻をかむ母様。
「そう言えば母様、忘れてたけど来月には運動会もあるんだよ。その後に2連休があるんだって。だから運動会終わったら一緒に帰ろうかな?」
「運動会?全力で応援するわ!装備はそれまでに揃えさせればいいのね?」
「運動会には本物の剣とか使わないよ?」
「そうなの?でも今度戻ってきた時には渡せるようにバジリオには急かしておくね。ママもカイに相応しい効果をいっぱい付与しておくから!」
「母様、派手なのは無しだよ?実習で使いたいし、目立ちすぎちゃうから」
「わかったわ!」
母様の強い圧を受けならが、運動会も頑張ろうと決意した。
また泣き始めた母様を宥めながら狼の姿に戻った父様に2人で乗って、小学校の寮の前まで戻る。
父様はこの姿も本当にかっこ良くて大好きだ。
毛並みもふわふわのツヤツヤで柔らかくてあったかくて、思わず背中に抱きついて寝ちゃいそうになる。
でも10分ぐらいでその時間も終わり寮の前へと到着した。
入り口に立っていた警備の人も父様に驚いていたけど、すぐに父様だと気づいておでこに右手を翳し敬礼していた。
父様から降りても泣き止まない母様を抱きしめると、父様から「もう行きなさい」と言われ頭を撫でられる。
少し後ろ髪をひかれる感じがするけど、「じゃあまた来月ね」と母様にも声をかけてから寮へと入っていった。
こうして、ボクの初めての里帰りは終了した。
「よし!運動会に向けて魔力遮断と感知の修行もしっかりやらきゃ!」
そう思ったボクだった。
部屋に戻るとベッドの上で胡坐をかき目をつぶり、魔力の流れを感知しようと頑張った末、そのまま布団の上で大の字になって寝てしまった。
翌朝起きたボクは「明日こそはしっかりと訓練するぞ!」と決意した。
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