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14.初めての里帰り 01


 金曜日の放課後。


 今日も無事に授業が終わった。

 エレオノーレ先生が帰りの挨拶を告げると、教室のドアがバンッと大きな音を立て空いた。


「カイ!帰るわよ!」

「母様?」

 ドアを開けた母様がタタタと走ってきてボクの元までやってきた。


「ニコちゃん、まだ私、退室してないんだけど?」

「だって、エレノさんの話長かったし、それに今最後の挨拶してたでしょ?」

 母様の返答にエレオノーレ先生はため息をついておでこを抑えていた。


「まあいいわ。カイ君、今日はカイ君のママに来てもらってね、例の計算やら何やら、色々と聞き出したりしてたのよ。一緒に帰るって言うから待っててもらったの」

「そうだったのですね!」

 どうやらボクを待っていた母様。


「さっ!早く帰るわよ!外にはディーゴも来てるから!」

「ディーゴさんも?やったー!」

 ボクは思わず両手を上げて喜んでしまった。


 周りからの視線が集まり恥ずかしい。


「じゃあ行くわよ!」

「あ、待って!こっち、ボクのお友達、グイード」

「あら。キミがカイの一番のお友達、グイード君ね。これからもカイの事、よろしくね。夏には遊びにくるんでしょ?歓迎するわ!」

「あ、よ、よろしくお願いいたします!こちらこそ、です!」

 グイードは直立不動で挨拶を返している。


 かなり緊張しているようだ。


「じゃあ、グイード、また月曜日にね!」

「あ、ああ」

 ボクは母様に手を引かれ、少し恥ずかしくなりながらも、久しぶりに感じる母様の体温に安堵し、先生に挨拶をした後、少しだけざわざわとする教室を出た。


 久しぶりに母様と歩きながら彼是と話をしている間に校門までたどり着く。

 そこにはディーゴさんが待っていた。


 ボクは母様の手を離しディーゴさんの腰に抱きついた。

 そのままボクを抱き上げたディーゴさん。


「カイ!元気だったかー!」

「うん!この間は迷宮にも入ったんだよ!」

「そうか!じゃあ、今度俺とも迷宮行ってドラゴンでも倒すか?ドラゴンを倒したらドラゴンスレイヤーって言われるんだぞ?」

「そうなんだー。ボクもドラゴンスレイヤーになれるかな?」

「なれるなれる!」

 久しぶりのディーゴさんとの会話が楽しくて頬が緩む。


「ちょっと!ドラゴンなんてカイにはまだ早いわ!怪我したらどうするのよ!」

「だ、大丈夫だって」

「ダメよ!カイはまだ森の魔物をなんとか狩れる程度になったばっかりなんだから!」

「何かあったら俺が守るからいいだろ?」

「万が一があるでしょ!それに、その時は私も一緒に行くわ!カイを守るのは私の役目なんだから!」

 2人の言い合いにボクはどうしたら良いのか分からず戸惑ってしまう。


「と、とりあえず、早く帰ろう?」

「あ……そ、そうね。行きましょう!」

「そうだな。よし、飛んでくぞ!」

 戸惑う2人。


 ディーゴさんはボクを肩車したかと思ったら竜の姿に戻る。

 母様もボクのすぐ後ろに飛び乗ると後ろから支える様に抱きしめてくれた。


 そして空高く上昇したディーゴさんは、森の方へゆっくりと向かっていった。

 久しぶりに見る竜の姿のディーゴさんはとても綺麗だった。


「でも母様、今日は学校の前でディーゴさん変身しちゃったけど、目立たない方が良いって、普通が一番なんじゃなかったの?」

「ああ、そうだったわね。でも、カイの話聞いてたらもうすでにクラスでも十分に目立ってるようだし。ママ、どうでも良くなってきたのよ。それよりも早く帰ってカイと一緒に楽しまなきゃって、時間が勿体ないわ」

「そうなんだ。ボクもね、母様と父様と、それにディーゴさんとカーリーさんと、それと、レナートさんとティナさん!皆とお話するの楽しみなんだ!」

「そうね。皆喜ぶわ」

 母様はボクをぎゅっと抱きしめてきた。


 その後、5分程度でディーゴさんは森の上空までたどり着く。

 そもそも小学校からは徒歩でも1時間程度の距離で、ボクでも走れば森の入り口までは10分程度の距離だった。


 カーリーがすぐ傍まで飛んできてボクの頭を撫でてくれた。

 下では父様が手を上げてこちらを見上げている。


「父様ー!」

 ボクは母様の腕の中から抜け出すと、父様に向けて飛び出した。


「カイー!」

 背後から母様の声が聞こえたが、このぐらいの高さはどうってこともないし、それに下には父様がいる。


「おっと。元気してたか?カイ。あと、あまりニコに心配かけちゃめだろ?」

 ボクをキャッチした父様の目線を追うと、すでにボクの背後には頬を膨らませ腰に手をあてた母様が立っていた。


「危ないでしょ!」

「だ、大丈夫だよ。あのぐらい、アスレチックの高さより少し高い程度だよ?」

「それはそれ!空から飛ぶのとは違うの!もうこんな危ない事はしないの!分かった?」

「はーい」

 ボクは母様に返事をしながら、今度から母様の前ではやめようと思った。


「まあまあ。そのぐらいでいいじゃねーか。ガキは元気が一番だ」

 そう言ったのは、背は小さいけど体は太い髭モジャの見たことのないおじさんだった。


「バジリオ!余計な事言わない!」

「お、おお」

 そのおじさんがバジリオさんだと分かり挨拶をする。


「バジリオさん、母様がいつもお世話になっています。カイです。よろしくお願いします」

「おお。ママと違って礼儀正しいなっ……」

 バジリオさんは母様に睨まれ声を詰まらせているようだ。


「か、鍛冶師のバジリオだ。よろしくな」

「はい!バジリオさんは母様の師匠なんですよね?」

「……あのな、俺はお前のママに何にも教えちゃいねーよ?」

「そうなんですか?」

「俺に弟子入りした時な、魔道具作成をやりたいって言うから、それなら免許が必要だ―って言ったらよ、どうなったと思う?」

 バジリオさんの質問に首を傾げる。


「お前のママな、分かりましたーって言って免許取りに行っちまった」

「そうなんですね!それで?」

「それだけだ。何年も連絡もなくてよ。3年ぐらい前に子供達に剣を作るから来てくれって」

「あ、兄様と姉様の剣ですね!」

「そうだ。そして今回はそれ以来の連絡だ」

「母様が不義理で申し訳ありません」

「そうかそうか。お前には俺の技術を全てつぎ込んだ良い物を作ってやる!その後の付与についてはママさんに頼むんだな!俺より良い腕してるからな」

「はい!」

 こうして家に帰って早々、ボクの装備作りが始まったようだ。


「結果オーライね」

 母様は満足そうに腕を組みながら頷いているが、オーライってなんだろう?新しい装備の名前かな?


 久しぶりの家での昼食を終わらせた後、ボクが木剣で父様と少し打ち合って確認してもらった結果、今は普通の形状の長剣で良いだろうという結論になった。

 バジリオさんの指示により、ボクは粘土を握らされたり、体のバランスを見るという体操をさせられたりと、彼是と試されていた。


「そろそろ御飯よ!」

 母様のその言葉で夕飯となった。


 皆で一緒に食べるバーベキューは最高に美味しかった。

 やっぱり自分の家が一番だと実感する。


「母様、このお肉とっても美味しいです!」

「これは昨日ディーゴが山に戻って買ってきたドラゴン肉よ!」

 思った通り、お祝いの時には食べる、いつものドラゴン肉だった。


 ディーゴさんは黒竜で、黒竜の谷の主だ。

 そこにある岩山に生息するドラゴンは、ディーゴさんの手下でもあるし餌でもあるようで、お友達というわけでは無いようだ。


 そんなドラゴンのお肉は美味しいので、ディーゴさんもさっきからパクパクと半生の物を食べては「食べすぎだ!カイとニコの分が無くなるだろ!」と父様に怒られている。

 父様も生肉で食べたりするようだけど、あまり一気に食べないように我慢しているみたい。


 バジリオさんは「ドラゴン肉……3年ぶりに喰うが、やっぱ旨いな」と言いながら父様達のやり取りを見ていたからか、チビチビと食べていた。


 ボクは久しぶりの団欒を楽しみ、明日もまた来るというバジリオさんを見送った。


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