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13.初めての迷宮探索 03


 絡んできた男達が帰った後、ボクは兄様達に聞いてみる。


「兄様達はジンライって言われてるのですか?」

「カイ、その名は二度と言ってはいけない」

「そうよ!それは呪われた名前。お母様の耳にでも入ったら……恥ずかしくて死んじゃうわ!」

 珍しく焦った表情の兄様達。


「かっこいいのに。ねえグイード」

 グイードはうんうんと頷いてみせる。


「いいの。その名前は封印。わかった?」

 姉様の言葉に頷いておくが、ボクの中では兄様達はジンライの兄様、ジンライの姉様、という呼び名が確定した。


 間違えて口にしてしまわないように気を付けないと、そう思いながらも口元がにやけてしまった。


「カイ、何を考えてるか分かるような気がするけど、ダメよ絶対!」

 姉様にもう一度釘をさされてしまったが、本当に気を付けようと思った。


「じゃあそろそろ帰るか?」

 兄様の言葉にグイードが「はい!ここまでありがとうございました!」と頭を下げていた。


 転送の部屋へと戻りながら兄様達が鼻歌を歌いながら襲い来る魔物達を仕留めてゆく。

 さすが兄様達はほとんど見ずに魔物達を狩っている。

 今度どういう風にしているのか聞いてみよう。


 兄様達が狩った魔物の下に転がった魔石などは兄様達の許可の元、すべてグイードが手早く回収していた。


 この一日でかなり素早さアップしたように感じるグイードの動きに関心しながら、ボクは今後どういう風な装備にしたら良いのかなと考えていた。

 森では魔法でしか戦ってなかったし、訓練では木剣しか使ってなかったボク。


 学校の武器管理室にあった武器を思い出しながら自分がどうやって戦いたいかも考える。

 帰ったら父様にも相談しようと、さらに来週末を待ち遠しく思った。


 迷宮から戻ると、グイードが戦利品を提出した。


 初めてのことにボクも緊張しながら査定が終わるのを待っていた。

 兄様達はギルドに戻るとすぐに寮へ戻ってしまったので、2人きりとなり余計に緊張している。


「グイード君、査定が終わったわよ」

 受付のお姉さんから声をかけられると、緊張した様子でカウンターへ向かうグイード。


 後ろを歩き一緒についてゆく。


「小学生になったばかりなんでしょ?すごいわねこれ!今後も期待してるわ!全部買い取りで良い?」

 お姉さんの言葉に内訳の紙をジッと見るグイード。


「これでいいです!全部買い取りで!」

 硬くなりながらもそう答え、内訳の書いた紙と一緒に袋を受けとるグイード。


「早く見せてよ!」

 気になったボクがグイードの内訳を持つ手を掴んで覗き見る。


 そこには銀貨9枚と銀貨が5枚と書いてあった。

 特にお肉が高額だったが、11階層の魔石も数もありそれなりの金額になっているようだ。


「あ、もしかしたらボクが貰ったお肉を入れていたら金貨になってたかもね」

「えっ!金貨っ!……いや、いいんだ。そもそもこれ、ほとんどがカイが狩った奴だろ?逆に本当に貰っても良いのか?」

「うん!全然大丈夫だよ」

 ボクが以前森で狩った蛇が1体で金貨何枚かになったことは内緒にしておこうと思った。


「よし!今日はおごるから、高いお店に行ってみようぜ!」

「いいの?やったー!」

 ボク達はおっかなびっくりしながら、それなりの食堂に行って銀貨が2枚ほど消えていったが、その分とても美味しい夕食が楽しめた。


 さすがにこの近くにある最高級の食堂には入る勇気はなかった。

 お腹を満たした後、上機嫌で寮に戻った2人。

 寮の入り口ではシルヴァーナと御付きの2人が待ち構えており、「無事帰ってきたのね。良かったわ!」とだけ言い残して女子寮へと逃げるように去っていった。


 一応は心配してくれたんだなと思ったボクは去り行く3人に大きな声でお礼を言ったが、その声に一瞬立ち止まった3人はすぐに走り出して見えなくなってしまった。

 部屋へ戻るとすぐにシャワーを浴びて汚れと疲れを落とす。


 そして、寝る準備を終えるとベッドに寝ころびながら母様に連絡をした。


「今日ね、迷宮に行ってきたよ」

『えっ、ママ聞いてないわよ?大丈夫だったの?1人で行ったの?怪我は?怪我はしてないのよね?』

 ボクの報告に母様が心配する声を投げかけてくる。


「大丈夫だって。グイードもいたし、迷宮に入る前に偶然会った兄様と姉様が見守っててくれたんだ。それに11階層までしか行かなかったよ?猛牛とか、あれぐらいだとボク、直撃しても傷1つ負わないよね?」

『それはそうだけど……』

 自身が大人と比べても規格外の魔力を有することを知っているボクは、多少の攻撃では魔力の幕が攻撃を弾いてしまうので怪我をするとは思えなかった。


 森の魔物達であれば油断すると大怪我してしまうが。


「それとね、来週は絶対帰るから!ボク、自分の装備が欲しいんだ。まだどんなのが合うかわからないけど、ダメ、かな?」

『分かったわ!バジリオも呼んでおくわ!すっごい武器作らせるから!』

「ほんと?やったー!」

 ドワーフさんのバジリオおじさんは、母様の師匠と聞いたことがあるのですごい武器ができそうだと期待が膨らんでゆく。


『じゃあ来週、ママ待ってるから!』

「うん!ボクも楽しみにしてるから。もちろん母様に合うのも母様の料理も楽しみにしてるからね!」

『分かったわ!ふふふ。カイ、大好きよ!』

「う、うん」

 ボクは照れ臭くなってはっきりとは返事できなかったけど、おやすみと伝えて通話を終えた。


 その日の夜。

 疲れもあってすぐに眠りについたボクは、夢の中で伝説の聖剣と聖なる鎧を装備して古代竜を一人で倒す夢を見たのは内緒の話。


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