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10.初めての買い食い


 今日は金曜日。

 明日の日曜日に向け、今日は午前中で授業も終わった。


 グイードに街中を探索しようと持ち掛けられた。


「いいねそれ!」

 僕は母様から貰った金貨を握り締め、寮の受付へ外出することを告げると、王都の中心地へと移動した。


 賑やかな街並み。

 屋台があるので何か所か回ってお腹を満たす。


「夕食はいらないね!」

 そう言いながら良く分からないお肉の串を食べきった。


 口元を魔法で出現させた水で綺麗にする。

 その様子にグイードが驚き固まっていた。


「今の!魔法だよな!」

「そうだけど?」

「カイすげー!もう魔法が使えるんだな!」

「グイードは使えないの?」

「御貴族様じゃあるまいし!平民はそもそも実用的な魔法を使いこなせるなんて、才能ある一部の冒険者だけだぞ?」


 話を聞くと、普通は魔力を何らかの形でちゃんと制御してすることができる様になる平民は、半数より少し多い程度しかいないらしい。

 それ以外は全く魔力を感知できなかったり、できても暴発させてしまったりするものだという。

 ましてはボク達ぐらいの年齢で今の様に自由に使いこなしているのは聞いたことが無いと……


「ふーん、うちは母様達も全員凄いから。良く分からないや」

「あっ……そう言えばカイ、詠唱は?」

「詠唱?」

「いや水を出すなら水の精霊になんたら~ってやつ?いるだろ?」

 ボクは首を傾げた。


「母様達も詠唱とか言ってるのは聞いたことないかな?」

「そうか。カイの家は色々と規格外でスゲーな」

「そうなのかな?」

「そうだよ」

 ボクは褒められたような気がして少し嬉しくなった。


「あ、あーら!こんなところで会うなんて!偶然ね!」

 声の方を確認するとシルヴァーナちゃんが立っていた。


 いつものクラスメート2人も一緒だ。


「あー、シルヴァーナちゃん。シルヴァーナちゃん達も買い物?」

「そうよ!悪い!」

「え、悪いなんてそんなこと言ってないよ。シルヴァーナちゃんはいつも意地悪を言う……」

 少し不貞腐れてしまう。


「ま、まあ偶然会ったことだし、一緒に買い物してあげてもいいわよ」

「えー?」

 なんで急にと不満を漏らすと、横にいる2人がキッとボクを睨んでいた。


「いいんじゃねーか?一緒に何か食べようぜ」

 グイードがそう言ったので一緒に露店を廻り始めた。


 機嫌を良くしたシルヴァーナちゃん。

 良く見ると少し離れた場所でいつもの騎士さんと侍女さんが見守っているようだ。


「これがいいわ!」

 シルヴァーナちゃんが指差したのは綺麗なデコレーションのクレープであった。


 家でも作ってくれたことのあるやつだし、おいしいからいいよね。

 そう思って購入する。


 ボクはチョコバナナクレープを買って露店の前に設置してあるテーブルに座った。

 ボクの隣に座ったシルヴァーナちゃんはイチゴホイップにしたようだ。


「じゃ、じゃあ、食べる前に手を、洗わなきゃね」

「さすがです!シルヴァーナ様!」

 反対側に座った御付きの1人が祈るような手付きでシルヴァーちゃんを褒めていた。


「『水の精霊よ、私の呼びかけに応え流れ出る水を生み出したまえ、<流水(ウィーター)>!』」

 シルヴァーナちゃんが詠唱というものだろうか?体内から魔力をふわりと放出し、ジャバジャバと水が流れ出した。


「ど、どう?」

 そう言いながら両手を洗うと、他の2人も「お借りします!」と言いながら手を洗い。暫くするとその水の流れが消えた。


「シルヴァーナちゃんも魔法使えるんだね!」

 ボクは笑顔でそう言うと、シルヴァーナちゃんは少し顔を赤くして「大したことないわ」と笑っていた。


 ボクも手を、と思って目の前に水の玉を生み出した。

 ふよふよと形を変えながら浮かぶ水の中に手をつっこんで洗い始める。


 シルヴァーナちゃん達3人が目をパチクリさせて目の前に浮かぶ水の玉を眺めていた。

 グイード君も手を入れようとしてすぐにひっこめる。

 

「使わないの?」

「いや、俺はいい、かな?」

「ふーん」

 ボクは水の玉を消すと、温風を手の周りに纏わせ乾かした。


「な、なんなのよそれ!詠唱は?なんで宙に浮いてるの?どういうことなのよ!」

「ボク、詠唱は分からないんだよね。母様達は普通にこうやって魔法使ってるし」

「くっ、せっかく私が……もういいわ!帰る!」

「あ、シルヴァーナちゃん!」

 シルヴァーナちゃんはぷりぷりと怒り出して帰ってしまった。


 その後を御付きの2人が追いかけていた。


「お前も、大変だな」

「うーん、どうしてシルヴァーナちゃんが怒ったのか分からないけど、グイードは分かった?」

「お前も、ほんとマジあれだな……まあ頑張れよ」

 グイードはそう言って両掌を上に向けていた。


 理解不能な状況に戸惑いはしたが、目の前のクレープは美味しかった。

 そして寮に戻り、部屋に戻ると母様に連絡をする。



『詠唱?普通は使うんだけどね、ママも良くわからないのよ?』

「そうだよね。誰も使ってないから……ボク何かやらかしちゃったのかな?」

『うーん、きっとシルヴァーナちゃんはカイに自慢したかったんじゃないかな?こんな魔法使えるんだよって』

「そうなのかな?」

『そうよ。そしてカイともっと仲良くなりたかったんじゃないかな?』

「えっ?違うと思う。シルヴァーナちゃんはいつもボクに冷たくしてくるもん!」

『あらあら。まあ今は周りを良く見て。楽しんで』

「うーん、分かった。じゃあ母様、おやすみなさい」

『おやすみカイ、あ、そうそう。来週末は帰ってきなさい。来週の金曜日の午後には迎えに行くわ』

「うん、分かったー!」

 ボクは、早くも来週末が待ち遠しくなりながら、明日の休みはどうしようかな?と少しだけワクワクして寝られなかった。


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