01.入学式 01
捨てられ聖女と森の主・後日談です。
本編未読の方はそちらを先に読んだ方が楽しめると思います。
不定期更新。本日は1話から3話まで更新予定。
「あー!心配だわ!」
そう言ってボクの周りをウロウロするのは母様だ。
「ニコ、カイももう5才だ。それに私達に似て強く育っている。心配することないだろう?」
「でもでも!嫌味なお友達に何か言われたら心に傷が……」
父様は心配ないと言ってくれてるけど、母様は本当に心配症だ。
「母様?ボクってそんなに頼りないの?」
「カ、カイ!そんなこと無いのよ?母様ね、小さい頃に色々あったから、だから心配なだけなの!」
「大丈夫だよ母様!ボクは父様と母様の子供だから!」
そう言うと、母様はボクをぎゅっと抱きしめてくれた。
「よし!じゃあ今日は俺が乗っけてくか!」
そう言って真っ黒なドラゴンに姿を変えたのはディーゴさんだ。
「それなら吾輩がカイ様を!」
今度はカーリーさんが黒く闇を纏った後、骸骨さんの姿に変身した。
「2人とも、カイが虐められたらどうするの!普通でいいんだよ普通で!」
母様が腰に手をあてて怒り出した。
「カイ、行くぞ」
父様がそう言って手を引いてくれるのでその大きな手を握り、森の出口まで歩きだした。
「ちょっとフェル!勝手に行かないいでよ!」
「ニコは心配しすぎだ。入学式に遅刻してしまうと大変なのだろ?」
「そ、そうだけど……」
母様は少ししょんぼりしてボクたちの元まで歩いてきた。
「母様!手―つなご!」
そう言って空いた方の手を出すと、母様は笑顔に戻ってボクの手を握ってくれた。
後ろから人型になったディーゴさんとカーリーさんも付いて来ているので、ピクニック気分で王都までの道のりを少しはしゃいだ気分で歩いて行った。
それから30分後、早歩きになった父様に抱かれながら王都の端にある小学校の前にたどり着いた。
時間にも間に合ったようなのでゆっくりと校門をくぐる。
目の前に見える大きな建物にびっくりしてしまう。
ボクの住んでいる森の中は、母様達が作った3階建ての大きなお家だけど、ここはとっても大きくボクは目をキラキラさせて見ていた。
「母様!ここでっかいね!」
「ふふーん!そうでしょ!ここね。母様がお金をいーっぱい出して作ってもらったんだよ!」
「えっホント!じゃあ、ここは母様のお家なの?」
「それは、違うかな?」
ボクは母様の言っている意味が良く分からなかった。
「ここはね、カイのように5才になったら通えるようになるお勉強をする場所なの。ここで6年間みんなと一緒にお勉強をするんだよ?」
「そうなんだ……お友達、できるかな?」
「できるできる!ここでいーっぱいお勉強して、お友達ともいーっぱい遊ぶのがこの小学校の役目なの。その為に母様が陛下にお金をいっぱい出して作ってもらったのよ」
「そうなんだ!ボク、頑張るね!」
ボクはヘイカって誰だろう?と思ったけどとにかくお友達がいっぱいできれば良いなと思って胸を膨らませていた。
「お父様、お母様、お待ちしてました」
「カイー、よく来たなー?疲れてないか?」
玄関という場所で靴を履き替えると、ソラ姉様とリク兄様が迎えに来てくれた。
二人は2つ上なので3年生というものになるらしい。
父様と母様の手を離し、2人の間に入って手を繋ぐ。
「じゃあお父様、お母様、カイの事は私に任せてね!」
「お願いよ、ソラ」
「リクも、カイを見てやるんだぞ」
「分かってるよ」
父様と母様はここで一旦お別れだ。
入学式では後ろで見てくれるみたいだけど、その後は夏休みという時期まで会えなくなるって聞いた……少し寂しいかな?
ちょっとシュンとして下を向いてしまう。
「カイ、やっぱり入学止める?森でママとお勉強しましょ?」
母様がボクの前にしゃがみ、兄様達につないでいたボクの手を引くとギュっと握る。
「お母様、今更何をいってるんですか?」
「そうだよ母様!カイをぼっちにする気?」
姉様と兄様にそう言われ、母様はしょぼんとしたが、すぐにボクの手を離してくれた。
「母様、心配してくれてありがとう。ボク頑張ってくるから!」
しょんぼりしたボクの所為で母様が落ち込んでしまった。
そう思って自分を奮い立たせ拳をキュと握る。
きっと大丈夫!お休みには森に帰れるんだし、兄様と姉様もいるのだと自分に言い聞かせ、2人に手を引かれ教室へと移動した。
「カイ、ここが1年生の教室だよ。あの黒い板、黒板って言うのに名前があるでしょ?机にも名前が入ってるから、自分の席を見つけて座ってるんだよ?」
「時間になったら先生が体育館まで案内してくれるから、それまで周りに声をかけてお友達でも作っとけよ!」
「うん!ありがとー兄様、姉様!」
ボクは2人と別れ教室に入ると、黒板で席を確認して移動を開始した。
「えーと、窓際の後ろから二番目……あった!」
ボクは自分の席にたどり着くと、周りにいた何人かの子供達をチラ見しながら席に座った。
そして、少し緊張した気持ちをほぐすように大きく息をはき、また吸ってははきと深呼吸を繰り返した。
「なあ、お前どこの子だ?」
不意に声をかけられドキっと胸が弾む。
声の主を確認すると、淡い金髪の男の子が金の瞳を輝かせこちらを見ていた。
「ボクはカイ、王都の東の森に住んでいるんだ!」
「東の森?カイは森に住んでんの?何それスゲー!」
その男の子は、目を輝かせてこちらを見ていた。
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