雪のような存在
同タイトル(没)は文章の書き方とストーリーの展開が個人的にgdgdだと思ったので新しく書き直しました。
暗転とした雲が空を覆っている。
時間帯は昼なのだが夜と見まがうほどの暗さだ。
そんな暗い空の下を俺、時乃 正は街灯を頼りに歩いていた。
今は中学最後の冬休みなので友達と遊んでいたのだが、雲行きが怪しくなってきたので解散となったのだ。
頬に冷たい何かが当たる。
「雪......か」
空を見上げれば大量の小さな粒がちらちらと舞い降りてきている。
念のために入れておいた折り畳み傘をバックから取り広げる。
降りしきる雪の中、歩みを進め家の近くの河川敷まで辿り着いた。
河川敷の方を見ると暗いながらもそこら辺に生えている雑草に雪が軽く積もっているのが分かる。
草たちに降り積もる雪を見ながら歩いていると黒い大きな影が川の近くにいるのが見えた。
最初は気のせいだと思ったが、よく目を凝らしてみると確かにそこにいる。
大きさ的に人であるのは間違いない。
しかし、傘も差さずその場で立ち尽くしているだけなのでこの世の者ではない可能性もある。
普通に人であればいいのだが、それ以外だった場合は絶望一択だ。
声をかけようか迷い葛藤の末、その人物に近づいてみることにした。
暗いので足元に注意しつつ黒い影の背後まで来た。
足音は聞こえているはずなのに何の反応もない。
やばい、これ終わったかも。
そんなことを思いつつも意を決して話しかける。
「あ、あの、こここ、ここでな、何してるる、んですかか」
滅茶苦茶ビビっていたので聞き方が挙動不審になってしまう。
黒い影はこちらにやっと気づいたようで顔である部分がこっちを向く。
暗すぎるのでどんな顔をしているのかなんて分からなかった。
「探し物を...していたんです」
透き通る綺麗な声で返事が返ってきた。
声の感じ、女性で間違いないと思う。身長も俺の方が10cm程高い。
ちゃんと返答がきたので安堵したが、あることを思い出し一瞬で恐怖心が戻った。
女性は探し物をしていたと言った。
ホラー系で女性がある探し物をしていると言い何を探しているのか尋ね返した所、
『お前の心臓だ!!』というものだ。
今まさにそれが現実で起こる可能性があるのだから怖がらずにはいられない。
状況的にも全て一致してしまっているんだから!
だがこのまま恐怖心に任せて逃げてしまうのは情けない。
勇気を出して尋ね返してみた。
「ささっさ、がしがし、もののとはは」
最初よりも言動がおかしくなってしまった。
そりゃあ仕方ないじゃん!だって怖いんだもん♪
聞いていた彼女は体ごとこちらに向き直す。
正面で向かい合う形となり俺の恐怖心は一層上がった。
下手したら漏らしてしまうかもしれない。
「私自身......でしょうか?あるかもしれないし無いかもしれない......分からないものです」
訳が分からず放心してしまう。
極限の恐怖心から思考が回らないということもあるのだが、発言自体にたいしてもだ。
探し物といえば文字通り欲しい物や無くした物だろう。
ただ彼女の発言は明確なものは提示されず曖昧なものだ。
一瞬だけ思春期特有の症状が発症しているのかと思ったが、不思議とそういう感じではないと思った。
何でかと言われれば説明できないのだが何故かそう思ってしまう。
「それは、この近くにありそうなの?」
気づけば恐怖心など忘れいつもの口調で問い返していた。
目の前の彼女が気になる。今の心はその一点に絞られていた。
「多分あると思います。私の勘ですが」
「......勘?」
疑問形で聞き返した俺に対して彼女はクスクスと笑いながら話す。
「おかしいですよね。自分の勘だけで探しものしてるなんて」
「いや、その......探偵みたいでいいね」
苦し紛れのフォローしか出なかった。
「お気遣いありがとうございます。でも何でか分かるんです。証拠があるわけでもないのにこの辺りにあることが」
彼女の目は見えないが、確信をもった瞳をしているんだろうなと想像がつく。
唐突に冷たい風が吹き付けくしゃみをした。
「そろそろ帰りましょうか。夜になるともう少し寒くなるので」
「それもそうだね。家まで送っていくよ、傘なさそうだし」
「いえ、私は家が近いので大丈夫ですよ」
「分かった。なら街灯のところまでは一緒に行くよ」
「ありがとうございます」
彼女を前にして足元に気を付けながら街灯までの道へ移動した。
彼女がこちらを振り返り始めてその顔を視認し息が止まる。
腰まである雪のような白く艶やかな髪、目元は少し鋭いが瞳の中には澄んだエメラルドがあり全体的に柔らかく整った顔立ち、ふわふわのコートを着ているが上からでも分かる抜群のスタイル。
それを目の当たりにした俺は完全に一目惚れをしてしまった。
と同時に、最初に幽霊扱いしていたことを心の中で謝罪した。
「では、またどこかで会いましょう」
「あ、ああ。..............!!次会った時は手伝わせてくれ」
「はい、その時はお願いします」
軽く会釈し遠ざかっていく彼女の背中を手を振りながら見送った。
一時してから俺も帰り道を歩み始める。
家の目の前まで付いて大事なことを思い出した。
(そう言えば彼女の名前聞いてなかったわ)
この日以降、彼女とは一度も会えずして高校に入学することとなった。
前書きでも書いた通り、新しく書き直しました。
自分で作ったものを後で読み直すと鼻くそ過ぎてちょっとやそっとの修正じゃ直らないと思ったのでめんどくさいけど一から作り直しました。
でも今回は個人的に納得できたのでこの調子で頑張りたいと思いやす!