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光と暗  作者: 雨宮雨霧
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3

「ちょっとトイレ行ってくるね。」


菫は足早にトイレに駆けていった。

用を足しに行ったのではないことはすぐに分かった。

さっきからずっと腕を殴っていたから、多分切りたいんだろう。


私もリスカをしているが、そこまで深くは切ったことがない。

怖い。ただそれだけ。臆病者だと嘲笑われても言い返すことなんて出来やしない。


30分ほど経っただろうか。

まだ菫は帰ってこない。

心配になり、公衆トイレに入る。


「菫ちゃん、大丈夫?」

「ゆうちゃん、」


鍵を開けてくれたと思ったら、赤に染まった腕が目に飛び込んできた。


「…こんなに深く切って痛くないの?」

「熱い。痛くはないよ。でもやりすぎたみたい。」


脂肪まで見えている腕。

グロい、本当に。


「病院行ったほうがいいよ、絶対。」

「お金ないし保険証だって無い。病院行ったら通報される。」


菫は頑なに拒否した。

仕方がない。家庭の事情があるから。


首が急に熱くなった。

床に滴る鮮やかな赤。


「は、?」

「一緒に死の。生きてても仕方ないでしょ。」


血で染まったカッターで、菫は首を切った。

初めて会った子とこの場所で死ぬ?

待て待て、笑えない。

死にたくない、だなんて言えないのが悔しい。


時間が経つにつれて、段々と意識が遠のく。

一瞬で死ねないのか、少しがっかりした。

苦しんで死なないといけない。

最悪だ。

神はどこまで私を追い詰めるんだ。


寒い冬の日。

私と菫は失血死した。

誰も幸せになれなかった。


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