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「出来損ない」
そう言われながら育ってきた。
自分は出来損ないなんだ。
何の疑問も持たずにこの歳になるまで思ってきた。
でも今は違う。
菫と出会ってから、何もかもが変わった。
あぁ、人生ってこんな色だったんだね。
菫と出会ったのはSNS。
お互いに誰も見てくれない病み垢をやっていた。
真っ黒な世界に灯されるスマホの光。
画面をスクロールしていると、菫の投稿が目に止まった。
「暗の先にあるものってなんだろう。」
なんだろう。
しばらく考えていた。
考えた後、返信をした。
「光の先にあるものってなんだろう。」
すぐに通知が来た。
秒で返信にいいねしてくれたらしい。
誰ともしたことがなかったDMに文章が送られてきた。
「あなたとなら生きれる気がする。」
文章を送り返す。
「一緒に先を突き進もう。」
仲良くなるのに時間はかからなかった。
個人情報を全て送った気がする。
本当はダメだ。
良い子は真似してはいけない。
絶対に、だ。
DMで話していて分かったことは、同い年であること。会えない距離ではないこと。家庭環境がどん底なこと。
他にも色々あるが。
早速会うことになった。
ネットの人と会うなんて怖すぎるが、菫に対して怖いとは思わなかった。
会いたい。ただそう思った。
親の金をくすね、ポケットに突っ込む。
パーカーのフードを被り、マスクをつける。
まるで不審者のような姿が自分。
これが自分。
あぁ、嫌だな。
死んでしまいたい。
待ち合わせ場所は家から30分ほど。
自転車をこぎ、息を切らす。
普段引きこもっているせいで体力がない。
錆びついた自転車はこぐたびに嫌な音を鳴らす。
人気のない場所についた。
多分ここであっているだろう。
スマホを開くとDMが来ていた。
「あともう少しで着くから。」
待ってる、と返信して寒空を見上げる。
冷たい空気が張り詰め、身体が冷えていく。
「結羽ちゃん、?」
後ろから声がした。
振り向くと、髪の長いいかにも訳ありな少女が立っていた。
「菫ちゃん?よかった、会えた。」
「急に会おうだなんてごめんね、知り合ったばっかりなのに。」
「いいよ、大丈夫。変なオジサン来たらどうしようかなって考えちゃった笑」
「それは私も思った笑 でも、こんなかわいい子が来てくれて嬉しいよ。」
しばらく談笑して、今からどうするかを話し合う。
家に帰るのも面倒だし、集まった意味がない。
「近くのネカフェはどう?」
菫の提案でネカフェに泊まることになった。