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サイキョウシャ  作者: 若山薫
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9.狂璽隊

ユウが彼女の部屋から出るとそこには黒色の帽子をかぶった全身黒ずくめの一人の女性が立っていた。


「やあ、こんにちは君は誰だい?」


――この人は誰なんだろう。絶対に狂璽隊のメンバーであることは間違いないんだけど服全部黒色だし、髪も目も黒色。なんだろう、夢の中で出てきた人よりは怖くなさそうだ。


「私は、ユウと言います。」


「へえ、ユウちゃんか、でどこのチームに入ったの?」


「えっと、それはまだ分からないです。」


「なんで?」


――この人はなんなんだろう?


「私気絶してたんでチーム? の人たちとまだ話したことがないんです。」


「なんで話せてないってことが分かるのかな? 私がこの狂璽隊に入る時はこの場所にくるまで誰かとメンバーを組むなんて聞いていなかったけど、……その理由を教えてくれないかな??」


――なんだろう、この人段々と雰囲気も様子も怖くなっていく。


「……、そうですね、実際は、なんかずっと笑ってたっぽいです。」


「なんで?」


「なんか変な夢見ててそれで起き上がってその夢の怖さが忘れられなくて恐ろしくて精神が崩壊しちゃって無意識にずっと笑って、その時の話とか全然理解できなかったんです。」


「ふーん、そうなんだ。」


――怖い。

ユウは恐怖を目の前にいる女性に感じてしまった。だが、この恐怖はユウが悪夢だと思い込んでいる出来事に比べればちっぽけな事であった。


「なんか、ユウちゃんすぐに死にそうだね。だからこれを渡しといてあげるよ。」


そう言ってデスはユウにお守りのようなものを渡してきた。彼女はそれを渡された後少し困惑しデスの笑っている顔を見て何か話さないといけないと感じ言う。


「ありがとうございます。」


「これはね、ユウちゃんがもう死にそうって時にこれを握れば私が助けに行ってあげるお守りみたいなものだよ、でもこれは一回限りだから気を付けてね。」


「h、はい。」


そう言い切るとデスはどこかへ動きだそうとして何かに気づき言う。


「あー、私は、デスっていうの宜しくね、ユウちゃん。じゃあまたね、バイバーイ」


手を少しだけ振り、デスはそのまま通路を歩いていった。


――怖いけど、あれぐらいで怖がっていたら駄目だ。まだ、この隊には夢で出てきたほどの悪人がいるはず、


ユウもその通路を歩き死殺醜全体の共有スペースとなっている部屋に着き、そこの玄関を開け、リビングに入る為のドアをもう一つ開ける。


ドアを開けるとそこにはリビングがあり、そこに椅子がぽつんと置かれておりそこに白目に黒髪の女ヒキがただ座っていた。ヒキはユウが来たことに気づくが少しも表情を変化させずただただ座っていた。ユウは動き出そうとしたが身が止まってしまいその沈黙に耐えることが出来ず話し出す。


「こんにちは。」


「あ、こんにちは。」


ただ二人はそう言っただけで会話を終えてしまった。そのままユウにとって呪縛のようになっていた沈黙した空気感が解け動き出した。


――本当にこれでよかったのか、


と彼女は思っている。


――でも、いま椅子に座っている女性は一人だけなんだ。攻めるなら今しかないんじゃないのか。いや、駄目だ。ここで攻めてもさっきのデスと言っている女性が来る可能性があるしここが狂璽隊?? と言われる隊の本部の可能性もある。なら今は、まだ彼女を倒す時ではない。


その時、玄関が開く音が聞こえる。そうしてリビングのドアが開く。ユウは突然誰かが入ってきたことに驚き少し戦闘態勢に入るようであった。その行動を見ていた、ヒキは言葉を発する。


「大丈夫ですよ、ユウさん、私たちのメンバーが帰ってきただけです。」


「そ、そうですか。」


ユウは突然の事に戸惑いながら応答する。


――私も馬鹿だったいつもの癖で何かしらの危険を察知しただけで戦闘態勢になってしまった。この癖も直さないと何かしら疑われる証拠になりかねない。


そうするとドアが開きシケンとレイがこのリビングに入っていく。


――この人も私のメンバーなのか?


「あ、ヒキとユウさんですね。」


――この人も名前を知っているみたいだ。精神が乱れていたことは本当みたいだ。


「こんにちは。」


と冷静にヒキは応答し


「はい」


とユウは二回目の為冷静に対応した。そのままシケンとレイはドアを閉め立った状態で話し出す。


「ユウさんは知らないでしょうから私の名前を言っておきますね。私はシケンです。でこちらがレイさんです。多分ですがレイさんとユウさんは18歳で同じ年齢です。」


シケンがそう言うとレイは


「17だ。」


と言い左手を作り自身の影から水色の仮面を出す。その様子にユウは戸惑ってはいるようだった。その状態でシケンは動かなくなり数秒後にシケンが動き出す。


「そうなんですか、すいません。」


とシケンは言い、謝罪の意を表す。


「……、」


その言葉に対してレイは無言で応答する。


――本当にこの人は何なんだ。


とレイへの違和感と不信感がシケンに徐々に蓄積されているがもちろん鈍感な本人はそんな自身の感情に気付くことは無い。


「ユウさん、こっちのテーブルに来てください。」


とシケンが言い、ドアからまっすぐ行ったところにあるテーブル一つと椅子が六個の場所へと行き、椅子とテーブルをはさんでレイとヒキ、シケンとユウが対になるような並び方をした。

そうしてシケンが話始める。


「さて、話始めましょう。レイさんいいですか。」


「……、」


「じゃあ、まずユウさん」


「はい、」


――なんだ、急にもう転生者であることがばれているのかそれとも


そんなユウの不安は


「ユウさんがある特定の状況下強い負の感情を感じた時に出たと思われる謎の物体の様なものについて話していきますね。最初にユウさんに宿った物体を出してもらってもいいですか。」


――全然違うみたいだ。一旦ではあるけど、


「……、少し嫌ですかね。」


――なぜユウさんもヒキと同じで懟呪を召喚する事を嫌がるのだろう。理由は良く分からないけど、


「そうですか、それでは私の懟呪、そのユウさんに宿ったと思われる謎の物体ですね、それと同じものを召喚して説明していきます。」


シケンは椅子から立ち上がり左手を銃の手の形に中指を加えて右手でそれを覆わせるような形を取る。そうするとシケンの中指から黒い液が垂れそれが床の表面に落ちる。そのままその黒い液体は床に広がりある所で止まり徐々に徐々に丸の形状へと変化しそうして一つの黒い物体として具現化される。背丈は三mほどあり、右腕がない代わりに左腕には左手が三つあり左手三つ一つずつに一本の剣が装着されている。剣の色は全て黒色に統一されている。



「これが私の懟呪、剣の懟呪です。こういう風にある特定の手をすることで召喚される存在を懟呪と言ってそれは大抵の場合何かしらの強い負の感情によって生み出されたと言われています。」


その言葉にヒキがとっさに反応する。


「誰がそれを言ったんですか。」


その疑問に


「……、私も深くは知りません。私もこういう風にしてエビルさんから聞いた話なので、」


とシケンは少し申し訳なさそうに発言する。



「それでは話を戻しますね。そうして召喚された懟呪は召喚した人の指示に従う存在で効果を6つほど持っているとされています。一つは(くろ)の能力と言われ条件をいくつかつけることで、召喚者が能力をつけることができます。懟呪が元から使える能力ではないので一つ目としてカウントされず、(くろ)の能力は零つ目として扱われているようです。一つ目から四つ目の①~④の効果は懟呪によって異なりますが五つ目、⑤の効果のみは大抵同じ種類のものになると言われています。それが部屋(フォール)と言われるものです。


部屋(フォール)はある条件を満たすことで発動できるものでそれを発動することによって条件を満たした人の魂を懟呪の心の中部屋(フォール)に入れることが出来ます。そうして、部屋(フォール)に入った魂は何かしらの苦痛か快楽などを受け精神が乱れしまった場合魂は体を持たないので一生生きる事が出来てしまうので、その懟呪の心の中部屋(フォール)に永久的に閉じ込めることになります。」


「悲しいものですね。」


とユウはついそう言ってしまう。その発言に誰も興味を持つような素振りを見せずそのままシケンが話を進めていく。


部屋(フォール)の中では対象者1人が精神を乱すようになっているとされています。部屋(フォール)の中は対象者の魂しかいけず懟呪も召喚する事はできないとされています。私はまだ部屋(フォール)を使った事も使われたこともないので分かりませんが、懟呪を持っている人はほぼ全員、部屋(フォール)を使うことが出来ると思います。」


ユウはその言葉をしっかりと聞き自身の海馬に保存する。そうしているとレイがシケンに耳打ちをし、シケンが話し出す。


「レイさんの話からすると部屋(フォール)を使う時は何も言わなくてもいいようです。レイさん自身も言っていないと言っています。他に懟呪を召喚する手の話ですね。召喚するための特定の手の形自体は懟呪によって決まっていて変更することは出来ませんが、どの手で懟呪を召喚するかは自分自身で変更することは出来ます。手ごとに懟呪の強さが変わり左手のみは一番弱く、右手は中ぐらい、両手で懟呪を召喚すると最も強いと言われています。


ですが、右手で懟呪を召喚しようとしても負の感情が足らないと召喚できず、私は両手や右手での召喚に一度も成功したことがありません。左手のみなら一回でも召喚したことがあれば永久的に召喚できるようになっていると言われています。」


と少し不安になりながら言葉を濁しつつシケンは言い切る。


「それで懟呪からは他にも欣求というものが一個のみ生み出されます。私の場合剣の懟呪で剣の欣求(シスターウィング)を持っています。同じようにヒキとレイさんもなんの欣求かは分かりませんが持っています。欣求は、特殊な能力と対象者の力を増加させるという効果があるとされていますがそれ以外の効果はまだ判明されていないと思います。」


――不確定な情報が多すぎる。思うや言われていますとしか言っていない。これは何なのだろうか私を試している?? 偽りの情報か本物の情報かを判断できない人はこの隊にいらないとそうやって悪の道理の様なものが私にあるのかを試している?


シケンはユウがそんなことを考えているとは一切思わず話を続ける。


「次は狂璽隊(きょうじたい)の階級についてです。階級は全部で六個ありますが、人数は狂璽隊全体で二十人程度しかいません。一番上の階級に属しているのは姫不(キフ)でダークネスさんです。ユウさんも一度会ったことがあると思います。そうして二番目が死蔑怨(しべつえん)の四人デスさん、フォトさん、サクラさん、ユキさんで、サクラさんとユキさんは双子です。」


――デスさんってあのひとなんじゃ。


「嫉蔑怨の人たちは気まぐだと言われており一切作戦に参加することがありませんが本当に気が向いたときだけ参加します。実力はダークネスさんに匹敵するほどらしいです。デスさんに至ってはそれ以上だとも言われています。三番目は幻花(げんか)の四人、ヒレツさん、ツサイさん、アクムさん、ローアさんです。ヒレツさん以外は今任務に出張中でいません。」


――ヒレツはあの人か、


とユウは自分に向かって銃を向けてきたゴーグルを掛けた黄髪黒目の女性を思い出す。


「四番目が私達死殺醜(しさつしゅう)です。後から詳しく説明したいと思います。五番目はガイで四人だと思われていますが、幼いため作戦に出ることがないので私も深くは知りません。六番目が玩具隊(がんぐたい)で現在は四人だと思われます。そのメンバーはかなり入れ替わりが激しく新しく入ってから一か月でいなくなる人が大半です。その理由はたいていが裏切り者だからです。今残っている人たちは二か月ほど残っている人たちで全員が裏切り者の可能性も低いため弱いからいる可能性も大いにあり得ます。


死殺醜についてですが、メンバーは八人でうち四人がここにいます。後四人はエビルさん、キョウ、ムーン、フーズさんです。フーズさんは今、他の任務に当たっている為いません。他の三人は今回の作戦時に敵の罠に引っかかったり行方不明だったりしています。」


「そ、」


「それについて詳しく教えてくれませんか?」


とユウが質問しようとしたことをヒキが先に言う。そうしてシケンが見ていた起こったことについて話始める。


「転生者を倒そうとしていたんですが、」


「ちょっと待って下さい、転生者ってまずこの隊の目的はなんなんですか。」


とユウが聞く。


――忘れてた。


シケンはそれについて言う事を忘れていた為、その説明内容を頭の中で数秒整理した後に話し出す。


「そうですね、まずそれを話すべきですね。この隊の目的は、懟呪を持っているユウさんならなんとなく察しはつくでしょうが、」


――いや、私懟呪持ってないし。


「懟呪を使ってこの世界の人々を抹殺する、全て殺す事です。」


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