3.仲間??
「で、ここが転生者の本拠地ってことか? シケン?」
とキョウはシケンに言う。彼女ら5人の女性の目の前には洞窟があり、エビルはでかい銃を後ろに持ってきており、シケンは鞘の様なものを左に抱えていた。シケンはキョウに向かって言う。
「それ以外に何があるって言うんですか、貴方にはほんとにうんざりしますよ、その馬鹿さを見てると。」
「お前、殺すぞ。」
とキョウは怒りながら言う。
「いいですよ、殺してみてくださいよ。」
「ちょっと黙ってくれないか、キョウ君、シケン君。」
とエビルはいつもの少し陽気な雰囲気とは違う静かな声で言う。その変化ぶりにキョウとシケンは今そういう雰囲気ではないことを察し話す事をやめる。そうしてエビルは、ムーンが体をもじもじと動かしていることを認識しながらもそれを横目でちらりと見て無視して話だす。
「ここからは、危険だから5人で動くことは極力やめよう、分担で行動をする。3つのチームに分ける。1チーム目はキョウ君とレイ君、2チーム目はシケン君とムーン、3チーム目は僕で行くよ。いいね?」
と一番前で5人の中心にいるエビルは言う。その言葉にキョウは少し腹立った様子でおり今にも話し出そうとするがその声よりも先に彼女らにとっては意外な人物が話し出す。
「えーっと、何で私は連れてこられたんですか?」
と一番右にいるムーンがエビルに向かって言う。その質問にエビルは静かな声でゆっくりと緊張感を持ちながら答える。
「それは、ムーンがある程度強いからさ。」
とムード的に小さな声で少ない文字数で言う。正確な理由や根拠を話してもらえなかった為ムーンは
「……そう、ですか……。」
と少し府に落ちないながらも今はそれを聞く時ではないんだなと直感的に感じ話を終わらせようとする。
バン
と音を立ててエビルの頭をレイが
殴った。その衝動でエビルの顔が少しぐしゃりという音を立てる。その様子をシケンは見て、これはまずいと危険を察知。すぐに逃げようと走る準備をするが準備をし始めた時にはエビルは何かを話し始めようとしていた。そうしてエビルは後ろを振り返り始める。
――怖い、逃げないと死ぬかもしれない。
とシケン、ムーンは思うがレイとキョウは一切何も思わずただその様子を見ているだけであった。そんなことを思っているとエビルは完全に後ろを振り返っていた。その顔は笑顔であった。
「あ、ごめんだね。これは流石に僕も少し調子に乗りすぎたよ、ありがとねレイ君。こんな緊張した演技は僕にはやっぱりあっていないよ。普通に話すね。で、ムーンを誘った理由だって、根拠も言わないとどうせ戦いにいかせてくれないんでしょ、ほんとにめんどくさいね~~、ムーン。」
というエビルの言葉にシケンは少しの恐怖感を覚えながらも死ぬことがなくなった空気に少し安堵しながらボーっと話を聞く。
――まあ、この人なら恐怖感を感じさせるぐらい演技でできるだろ、まあ、これが演技かどうかはおいといての話だけど。
「まず、さっきの状況でヒキ君とあの笑ってる子なんだっけ……。」
「ユウ、さん?? ですね。」
とシケンが言う。
「そうじゃねえだろ、確か……、」
とキョウが言おうとした瞬間にレイが左手を出し水色の仮面をした黒い物体を出現させ
「」
と異常なほどの早口で0.1秒で何か言葉を発すると、キョウは声を発しようと口を大きく開けている所で止まった。
「そうそう、ユウ君だ。彼女たちは、まだこの狂璽隊に入ってからユウ君は一日? くらい、ヒキ君は一か月ぐらいしか経っていない。さらにいえばユウ君は懟呪とか欣求のことを深く知らないだろうしね。」
と呑気に言う。
「でも、ヒキさんはもう一か月で、たくさん戦闘をおこなっていますし、私も一か月後くらいには転生者をたくさん殺す作戦に参加しましたし、だから……、」
「だから、ヒキ君は行くべきだとでもいうつもりなのか? その理由をお前は聞かなくても分かるはずなんだけどね。」
と言い、チラッとムーンの顔を見るも彼女はエビルに見られたという事に驚いてか泣き出しそうな表情をしている。その様子にエビルは自身の感情を露わにしないようにしながらもめんどくさい表情をみせながら言う。
「説明すればいいんでしょ、ほんとにめんどくさいな、簡単な話さヒキ君はずっと戦闘を行いすぎているからだ。この頃は転生者の数が多すぎる。何度殺してもゴキブリのように増殖して沸いてきてしまう。それがいつも以上に長引いた。それで説明する時間も惜しむほどまでに一日一回は戦闘を行ってきてしまったんだ。
対してお前の場合はヒキ君よりも前に狂璽隊に入っているからあっても一週間に一度の対戦のみだったんだよね。戦闘に対してのことを説明する時間がたっぷりとあった。だから今回は、この転生者をたくさん殺さなければならなく罠もたくさん含まれているかもしれない未知数な場所にほとんど何も知らない状態のヒキ君を連れてくることは危険だと判断したんだ。」
「……、じゃあ、なんで私は、」
「は――、レイ君が少しおちょっくっただけで気絶したヘタレなお前をつれてきた理由か? それぐらい自分で考えてくれ、というか何度も言うがそれぐらいムーンなら分かるだろ。」
冷淡な目元をムーンに向けることで小さな威圧をかけられたムーンは泣きそうな顔をしながら静かな声で
「はい、」
と言い、しょんぼりしながら手袋を自身の右手と左手にはめる。
――そんなに寒い?
とシケンは思う。
「ユリガ!!」
とキョウは唐突に声を発する。他4人のメンバーはその声に反応しキョウの方向を向く。その反応にキョウは、
「…………、あれ、今、レイ!! お前がやりやがったな、くそ野郎が!! それよりエビル。」
「なんだい、めんどくさいね君達は。簡潔に終わらせてくれないか。」
「そんなことは分かり切ってるよ……、えっとな……、…………、」
「まさか君は、自分の言う事を忘れてしまったのか。」
「ソーみたいだな、俺は何を話そうとしてたか分かるかエビル。」
「レイ君この馬鹿を懟呪でもう一度止めてくれないか。もううんざりだ。」
「待て、待て、もうちと考える。」
エビルは考える。
――こんな奴が同じ年齢と思うと吐き気がしてくるな、やはり単独での行動が最も効率的だな……、こんな無駄な時間はないぞ…………。
「おい、おい! おい!! エビル俺の話ちゃんと聞いてたか?」
「……ん? あーっと、よく聞いてなかったね。もう一度話してくれ。」
――僕も同類という訳か、ハ―、
「分かったよ、もう一回聞くぞ、俺はなんでこのクソ野郎とチームを組まないといけないんだ? 普通ならお前とチームを組むことが妥当だと思うんだが、」
――レイ君となぜチームを組まないといけないか、か。意外と簡潔化された意見だったね。まあ、“聞くぞ”じゃなくて“言うぞ”だけど、
「それはね、まず僕と組んでしまうと僕の懟呪で君が危険になってしまう。レイ君以外の2人と君がチームを組んでしまうと君の懟呪によって他2人に命の危機が迫ってしまうかもしれない。」
「ふーん、じゃあ、俺1人で行動すればなんの問題もないはずじゃねえか??」
「それは、絶対にダメだ。君だけが単独で行動するとバカすぎて僕たちがさらに死ぬリスクが高まってしまう。」
「あ? そんなことはないと思うけどな。」
――バカは自分の事をバカだと認識しないか、しょうがないのかこれは?
「これらのデータを総合して消極的に考えると君はレイ君と組むのが最も適切なんだよ。」
「そんなもんなのか、でも俺はこいつと組むことだけは無理だな。単独にする理由も明確じゃないしな。」
「は――、確かに君を単独で行動させても意外にもしっかりと仲間の事は守るようだからそんなに危険性はないかもしれない。だが、その利点だけでは君を単独行動させるより僕を単独行動にさせた方が危険性は少ない。」
キョウは少し考えて悲しい顔をした後に言う。
「そうだな、お前は強いからな。」
キョウはそう言って納得したような表情を浮かべた。
「は――、ほんとにどんだけ長台詞言わされたんだか、ほんとに疲れっちゃったよ、………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………で、何で僕偉そうに話してるんだっけ。」
その言葉にキョウが言う。
「お前がリーダーになりたいとか、わけ分からねえこと言ったからだろうが!! もうしゃべん、」
キョウはそう言ってまた動かなくなった。
「もー、ほんとに。」
とエビルは言い、キョウとレイを置いて洞窟中へと入って行った。
シケンとムーン、エビルは先行して前に進む。洞窟内部には一定間隔ランプがあり、持って来た松明が一切不要であった。そうして彼女たちは歩いていくと3つに分岐したでかい穴が出てきた。
「これで、やっと別れることが出来るね、君たちは左に言ってくれ、僕は右に行くよ。」
「そうですか、エビルさん、気を付けてくださいね。」
「めんどくさいから気にかける様な言葉はいちいち言わないでくれるといいかなシケン君。じゃあ、僕は行くよ。」
「ちょっと待ってください、こ、これをどうやって、レイさんたちに伝えるんですか。」
「…………。」
――ムーンは、一切考えていないんだな。
「考える事を放棄してたね。まあ、松明があるから僕がそれを真ん中に置いとけばレイ君が気付いて真ん中をまっすぐと言ってくれるだろ。それじゃあ、僕は松明を置いた後右に行く、君達こそ、死なないように、
たくさん殺してよ。」
エビルは松明の火を消した。ムーンとシケンは少し間を置いてから首を縦に振り先に左の中へと入っていく。そうして、エビルは真ん中の所に松明を置き、右の穴へと入って行った。
「な!! …………、あ? 誰もいねえじゃねえか。また、お前止めやがったなくそ野郎が。」
レイはキョウが動き話し出した姿を横目で確認すると彼女の言葉に一切耳を傾けることなくすたすたと歩きだす。
「このやろ、」
と言ってキョウは走ってレイに向かってついていく。キョウは、洞窟内に入った後でも大声でレイに文句や不満を言うが彼女は一切耳を傾けることなくただただすたすたと歩いて進んでいった。そのレイの様子にキョウは
――やっぱ、こいつには言葉が通じない、自己中心的なのもいいとこだ。今日はこいつと話さない方がよさそうだな。そうだな。今日はぜってえこいつと話さない。
と自らが短期であることに目をそらした事でいきついた結論を制限として胸に刻み込み、レイに強く当たることを突如としてやめる。そうして歩いていくと3つの穴の所に到着した。
「これは、どうするんだ、あいつらはどっちに行った?」
キョウがそう言いながら考えていると、
「…………。」
レイは、松明を指さした。だが、キョウはその動作に気づかず「うーん。」と腕組をしながら数秒経ち
「あ! 分かった、これは俺への優しさだ。右にも左にも行けるが真ん中をわざと残すことで俺というリーダーが真ん中を通れるようにしたんだ。」
と訳が分からない理論で話を展開し始めた、
「…………。」
その言葉にレイは突っ込みを入れることすら無くただ松明を指さすことしかしていなかった。
「でも待てよ、それだとリーダー的なポジションはあいつだと俺がいっちまったし、エビルは一人で行動してるから真ん中に行くかもな。なら俺らはどっちに行くべきなんだ。…………、」
――困ったな、これじゃあどっちに行けばいいか全然わからねえ、どっちに行った方がいいんだ? ……、レイに聞くか。
と自身が胸に刻み込んだ制限をすぐに取り消し、レイの方をやっと向く。キョウはその時レイが何かを指さしていることを初めて知った。
――これは、何だ? これをエビルは目印にしたってことか、ってことは真ん中を通れって言う事だよな。いやでも待てよ、何で松明なんだ。別に紙とか置いとけばいいだろ、なんか意味があるんじゃねえのか、あの天才がやることだ、考えろ、考えろ、……、あ!
とキョウは、思い
「お前、ナイフを貸せ。」
とレイに対して言う。レイは、彼女のその言葉に従い右ポケットからナイフの欣求を出し、キョウに貸す。
「ありがとうとかぜってえに言わねえからな。」
とキョウは言い、地面をナイフで刺す。そうすると、地面から光が浮かび上がってくる。青色に光った丸の形の光は眩しさを増していく。
「これは、逃げた方、」
「座ってろ。」
とレイが言うとキョウは止まってしまった。そのまま青い光は眩しさを増し続け小さくなっていく。
「策略通り、このまま地下に降りる。」
とレイが言うとその丸の形の円盤が下へとすとんと落ちていく。エレベーターのようにゆっくりと落ちるわけでなくドスンとすごい勢いで落下していく。
「あとは、お前らを殺すだけだ。」
レイは、確かにそう言った。キョウは5秒ほどたってもまだ動けないままいた。レイは、その後も0.1秒ほど言葉を発した後何も言わなくなった。