20.ボーっと送る日々 前編
――部屋を使われた。あたり一面が暗い。この部屋厄介そう。
そうして彼女は石像の様なものが移りその石像の目はぼやによって隠されている。
――この石像が攻撃を、
その石像なものは怯えはじめただただ怯えた状態をしている。
――攻撃ではなくただここに来た部屋を知らない者又は困惑している人をさらに動揺させることが狙い? 現実は懟呪が私の体を守ってくれてるだろうそうか、笑わなくていいんだ。
石像は怯える体の震えを増加させ最終的に突如として消えていった。その後すぐさま一つの目のみの顔がノンのみを見る。その目は睨めつけるたり見下すように見ているわけではなくただ単純に彼女の事を見ているだけであった。
――まだ攻撃はしてこない、けど何もできない。武器も持っていない体も持たないただの魂で物体としての形を持たないのだから。ただ今目の前で起こっていることを見るしかない。そして精神を乱さないようにするしかない。
目は増えていき最終的に彼女の視界のどこを見ても目が散乱している状態になったがそれも突如として消え目の前にエビルと手の懟呪が現れる。
「俺はお前を殺したい。」
エビルはそう言って百個の拳の手を作り上げそれをノンへと向かって突進させすべての拳が彼女に当たる。
――痛覚はあるが別に痛くはない。集団恐怖症の人ならすぐさま精神を乱し死んでいただろうけど、こんなことで私は死なない。
エビルはいなくなりあたりは黒一色から建物が立ち並ぶ街へと変動する。
そこには子供時代のノンが呑気に座っていた。彼女の髪色や目の色は変わりばえなく前髪と後ろ髪の先端にだけ青色が染色されたかのようにあり、目の色は黒色であった。
――過去を見せてくる部屋か。私、呑気だな。
そこからノンは無言の状態で自分の過去を見始めた。
五年前
7月 30日
「おい、ノンそんなとこでボーっとしていないでしっかりと働け!!」
ノンの父らしき青髪に青目の人物ガリュウはノンに対してそう怒鳴りつける。ノンはそんな言葉を無視し、ただボーっと座っている。ガリュウはノンの状態に呆れつつ怒鳴り続け、ついにガリュウは呆れて仕事へと戻っていく。
――このまま私はこんなつまらない日々をして死ぬのかな。イヤではないけど、でも、何も楽しくないな。
十二歳ほどの感情は少しずつ今の自身の現状と感情を察していた。
――でも、もう戻らないと、
ノンはガリュウが働いているキシュ―の酒場へと戻る。彼女は酒場の中へと入る。そこには大勢の人と大勢の働いている人が蟻のようにいた。
そこのカウンターの最も人が少ないところにガリュウはいた。ガリュウの姿を直視はするものの何事もなかったかのように通り過ぎ、自身の定位置である何でも相談室なる場所へと行く。ノンは紙の様なものを首からぶら下げるそれには
「なんでも相談を募集しています。(子供なのでよくわかんない)後、話しかけないでください。」
と書かれていた。勿論の事ながらこんなものをノンが書くわけもなくガリュウが勝手に書いたものであった。何も考えていないような様子のノンはただそれを首からぶら下げただそこに座りここの酒場にきて仲間を見つけようとしている人たちの注目をさらった。だが、その時は彼女が話しかけることはなかった。
――眠いな、
彼女はただそんなことを考えながらきりっとした姿勢で座りながらも感情は死んでいた。その時ある一人の赤髪に黄色の目のいかにも気取っていそうな男が彼女に話しかける。
「あの、おじょうちゃんちょっといいか、」
「カノンの自我」
そう言った直後、その男は消えた。
「はああ、」
ノンは大きな欠伸をした。消えたのはノンの仕業ではなく、ガリュウがMHを使ったことが原因であった。その男性を精神のみとなっているノンだけが見えている状態になっていた。そのまま彼女は座らされていた。
数時間後酒場の電気が消されガリュウがノンへと向かって歩き
「戻るぞ。」
と命令に近しい言葉を放つ。
「……、」
そのまま彼女は酒場の二階にある自身の家へと戻って行った。
「ほら、母さんに」
ガリュウからそう言われ、ノンは母らしき写真が置いてある仏像に向かって願いをささげる。そのまま彼女は何も思わないままベットへと直行し寝る。
「ピンポン」
「ふー、困った奴だ。」
ガリュウはそう言って外へと出る。そこには自身の仕事場の同僚である黒髪に黒目の男が立っていた。ノンはその音に反応し起き上がり、ドア付近へと行き見る。
「なんだ、ケルグス。」
「ガリュウ話があるんだが、いいか?」
ケルグスと言われる男性は後ろに立っているノンを見る。ガリュウもケルグスの視線がおかしいことに気づき後ろにノンがいることに気づき、手で追い払うような仕草を取りベットへと戻っていく。
「今ここで黙っていてもお前は帰ってくれないんだろ。」
「その通りだ、そんなことはどうでもいい。分かっているよなガリュウ。今お前がどんな状況にあるかなんて、」
「ああ、分かっている、そんな事。」
「なら別にいいんだ、だけどな、気をつけろよガリュウ、おまえの子は恐ろしいかもしれないぞ。」
「そんなことはお前に言われなくても分かっている。俺はもう帰るぞ。」
ガリュウはそう言って自身の家へと戻っていく。話し相手となっていたその相手は少し不満そうな顔をしながらも帰って行った。家に着きガリュウは仏像にある写真を見た後、毛布にくるまっているノンを少しだけ父親目線で目視し酒を飲みそのままテーブルの上で寝た。
ガリュウは飛び上がるようにして起き上がる。時刻は午後3時を指していた。一瞬焦ったような素振りを見せるも今日が定休日であることに気づき安堵する。ガリュウは自身の娘の姿を見に行く。ベットにはおらず外にいるようであった。その事に気付き、外にいることを確認した後に寝室へと入りもう一度寝た。
その頃ノンは外で自身がずっと行っている遊びを一人で永遠と機械のように続けていた。それを誰かが見たのかノンの元へと寄ってくる。
「大丈夫ですか、」
それがノンと男の出会いであった。
「……、」
ノンは自身が話しかけられていることに気付かずそのまま遊ぶことをやめなかった。緑髪に緑目という外見はいかにも独創的と言わざるを得ない男は彼女に話しかけることをやめなかった。
「あの、大丈夫、おーい、大丈夫?」
その言葉にやっとノンは気付きその男を直視する。
「誰、ですか?」
ノンの目は純粋でなんのけがれもなかった。
――あれ、僕が話しかけたのになんで聞いてくるんだろう。まあいいかな。
「僕は、キシュウツル―の王国騎士のヤスユだよ。大丈夫かい君は、」
「全然大丈夫です。」
ノンはそう言いきりまたも遊びを機械のように行う。その様子をヤスユは心配してか。
「ちょっと僕が面白い遊びを教えてあげようか?」
そう言われノンは彼を見て言う。
「でも、お父さんに変な人にはついていくなって。」
その言葉には少しおかしな点も存在していたが
「……、そうか、じゃあしょうがない。今度また来て教えてあげるよ。」
話を聞いていたのかこいつはとネットに誹謗中傷を言われるようなバカな発言をヤスユは言い、去って行った。
――なんだったんだろう?
とノンは少し疑問を持ったがすぐに忘れ彼女は遊び始めた。その頃、ガリュウの家に誰かがチャイムを鳴らした。
「ピンポン」
ガリュウは嫌な雰囲気を感じすぐさま着替えて外に出る。そこには
――げっ、
「ガリュウ、話があるんだが、酒場に来てくれるか?」
そこにはツュクルノーという三十五歳のグレーの髪にグレーの男がいた。ガリュウは
「はい。」
とだけ言い、ツュクルノーに着いていく。酒場の事務室へと連れてこられたガリュウは座らされツュクルノーはその目の前にあるでかいテーブルと椅子がある場所に足を組み座る。
「お前も知っているとは思うが、お前はこの酒場で最も雑魚だ。仕事もろくに行うことが出来ず、人に接するときには思いやりの心もなくいつも怒ってばかり、お前にこの酒場での存在価値がない。そんなことはおまえでも分かっているよな。」
「そうだ、何か問題があるか?」
ガリュウは少し怒り気味に言う。
「何か問題があるかとは冗談をよく言うな。お前がこの酒場で働けるのは、お前の妻がこの酒場の創設者でありここに夫を残せとお前の妻が命令に近しい遺言を書いたからでそれが無ければお前などすぐクビにしている。だが、それのせいでクビには出来ていない。」
「そうだな。それだけか、」
「いや、それだけの当たり前の話をするだけにお前を呼んだわけではない。一つ取引がある。」
「は?」
「分かった。」
ガリュウは何かしらの話を聞き終えた後にそう言い自身の部屋へと戻った。
――暗い。
ノンは遊びを続けていると午後六時ほどになっており彼女は家へと帰って行った。
翌日
ノンは酒場が始まる前に遊びを少しするために早めに起き外へと出る。すぐさま昨日までやっていた遊びを始める。数分後そこにまたもヤスユという十五歳の少年が現れる。それをノンは見ておりそれに違和感を別に覚えることもなく無視をし遊びを継続する。ヤスユは話を始めようと
「あの、君、僕だよ。ヤスユだよ。君の名前はいったい何だったんだい。」
と馬鹿を簡単に表面に出す。ノンはもちろんそんな存在を不審者のようにしか思えなかったが、逃げることはせず遊びを続けていた。
――なんか、変な声が聞こえる。きっとこれは幻聴なんだ。
と少し、ファンタジーめいたことを彼女は思っていた。
彼女はガリュウに呼ばれ部屋へと戻り酒場に行く準備をする。すると、ノンの部屋からガリュウと誰かが外でしゃべっている姿が見えた。その誰かは茶色の髪に茶色の目をしている二十八歳ほどの青年であった。ノンは少し
――誰だろう
という疑問を持ったがそれ以外は特に何も思わず家へと戻ってきたガリュウと共に一階の酒場に行った。
それが数日続き酒場の定休日。
ノンが外に出て定位置に着いたときにはもうすでにヤスユはいた。
「やあ、君。」
「なんですか、何がしたいんですか。よくわかんないです。」
と正当で全うな意見をヤスユへという。
――グッ、もっともだけど、
「遊びが好きっぽいから遊びを薦めたいだけなんだよ。ほら君いつもやってるじゃないか。何かの遊びを、」
――これの事かな。
「これですか。」
「そうそれそれ、でそれ使って何やってたの。」
「別に何もやってないですよ。」
「え?」
そう言ってノンは自身の右手に持ったサイコロ四個を投げる。そのうちの地面に一個のサイコロはうまく立たずどっちの面が向いているかあやふやになってしまう。
「それで?」
「それだけです。」
そう言ってノンはサイコロを全て拾いもう一度サイコロを投げる。
「それだけって、そんなわけないじゃないか。それだけを遊んだってこと、」
「そうです。」
「なんで?」
「それ以外に遊ぶものないです。」
「……、そんなことは絶対におかしいよ!!」
といつも以上に怒ったその姿にノンは少し驚き彼を見る。彼は頭に野球帽を右手にバットとボールを左手にグローブ二つを持っていた。
「なんですか、それ、」
そんなノンの発言に被せるように言う。
「はいこれをつけて、」
そう言って彼は彼女の左手に強制的にグローブをつけさせる。
「なんですか、これ。」
グローブを不思議がりながらノンは見る。そんなことお構いなしというようにヤスユは
「行くよ、」
と言い急に130kmほどと思われるボールを投げてくる。
それにノンは対応できずそのボールは彼女のおでこへと当たってしまう。
「ドン」
「いた、」
「あ、ごめん、大丈夫?」
ヤスユのそんな超純粋な心配に一切ノンは反応せずグローブを投げ捨てていう。
「つまんないよ、こんなの。」
「ごめんね、」
――やばいな、一回恐怖心が芽生えると嫌になっちゃうからな。
「でも、もう一回やる。」
「……、そう、それは良かった。じゃあ、次は君が投げてみて僕がそれをキャッチするから。」
「分かった。」
そう言って彼女は自身の後ろにある白いボールの元へと走りそれを拾うと不思議な顔をしてヤスユへと聞く。
「これってどうするの。」
「それを投げるんだよ、」
ノンはその言葉の通り下から投げる。それは真上へと飛びノンの頭の頭上にちょうど当たる。
「いた、」
ボールは地面へとコトッと落ちるとノンの後ろへと転がっていった。
「ああ、」
と言いながらヤスユは拾いに行く。
「やっぱり私には無理。」
とぶっきらぼうにノンは言葉を吐き捨てる。
――ああ、やばいな。
「ごめんね、僕がちゃんとフォームとか説明しなかったから多分だけどいけないんだ。もう少しちゃんと説明するね。」
とヤスユはようやく改心したのかしてないのかよくわからない言葉の言い回しで言い、野球の事を手取り足取り教え始める。
「そうそうだよ、よくできるね君。すごいよ。」
ヤスユは多少普通の人から見ると苛正しいところはあるが実際の彼は優しく発言に対して悪意がないのである。しかし、悪意を本人が自覚していなくてもそれを他人が受けたことによって嫌だと感じる事は珍しくないだろう。彼もその中の一人であるのだ。彼は、一人孤立している。それを本人は自覚せず生きている。
ヤスユはノンに野球の事を一から教え始めるとノンはぐんぐんと成長していき夜には
「シュン」
「バン」
「早いね君、成長速度がえぐいよ。本当にすごいね。」
彼女は時速140kmほどの球を投げることが出来ており、バットで打つ時も簡単にホームランレベルの物を連続で打っていた。
「すごいね。」
何度もヤスユはそう言ってノンのことをほめた。ノンはそれに対し何も興味がないような表情をしていたが、
――楽しい。
心は踊っていた。最後の球を打った後ヤスユと共にノンはベンチに座った。
「どうだった楽しかったかい?」
「うん、楽しかったよ。」
と表情を少しだけ光らせていった。
「そう言えば聞いてなかった。君の名前はなんなんだい?」
「私はノン。」
「そうか、……少し頼みたいことがあるんだ。これなんだけど、ここにいる男性に心当たりがあったら言ってほしいんだ。宜しくね、ノン。じゃあ、また明日。」
「さようなら。」
「バイバーイ。」
どちらが大人なのか一見見当がつかないような両者はそう言って元の日常へと戻っていった。ノンは野球の魔力にとらわれ写真は持っていたがそれを左ポッケに放り込むようにくしゃくしゃに入れ込みその存在を完全に忘れていた。
ヤスユはその後も何度か遊びに来ては野球の事をノンに教え込んだ。
ある日、彼女が服を脱ぐとき左ポケットに何かが入っていることを知りそれを見る。そこには茶色の髪と茶色の目をした男性の写真があった。
――これは? あれ、この人ってお父さんの、
その時、ノンは動揺した。翌日野球をしながらヤスユに聞く。
「ねー、ヤスユ。あの写真に写っている人って、」
「なんだ、なんかあったのか、ノン?」
「嫌、別に特になんもないんだけどね。」
かなり慌てた態度をノンは取るもヤスユは一切疑う事をせず話始める。
「あんま言っちゃだめだけどいうね。あれは魔王幹部と思われている人なんだ。」
「魔王幹部?」
「あー、魔王幹部っていうのはね。えーっと、この惑星? この世界自体が魔王に支配されているって話は聞いたことあるよねノン?」
「うん、」
「それで、その魔王は一人? 一体しかいないんだけど、それに従っている部下はたくさんいるんだその名でも特に強い部下たちの事を魔王幹部と僕達が読んでいる。実際にどう呼ばれているかもわかんないしその由来も知らない。あー、でもこれは結構不確定な事だから深くは考えないでね。簡単に言うと悪い人ってことだよ。」
「悪い人? その人を見つけたらどうすればいいの?」
「ん? 前も言ったみたいに僕達に話に来ればいい。そうすれば僕達が対処する。ノンは見つけたかそれっぽいのがあったら言ってくれればいいよ。その後は何も心配することがないよ。僕達が何とかしてあげるから。」
「そうなんだ、」
ノンはそのまま野球を続けた。
彼女は家に帰り夕食を食べていた。ドアのチャイムが鳴らないことを少し祈った。
「ピンポン」
チャイムが鳴ってしまった。ガリュウが外へと出る。ノンは外を見ようとはしなかった。だが、知的好奇心に勝つことはできず見てしまった。そこには写真にあった茶色の髪に茶色の目で顔の骨格や身長など外面的特徴ほぼすべてが一致してしまった人が存在していた。
――……、
ノンは言葉を失った。ガリュウは夕食を食べることを再開した。ノンは見せつけるように写真をガリュウへと見せた。
「この人知ってる?」
「……、知ってるぞ。」
「やっぱり知ってるんだ。」
ノンはそう言って右ポケットに隠し持っていたナイフをガリュウへと刺した。ガリュウの腹部からでた血が服へとしみこむ。ガリュウはただ動揺し目を少し震えさせる。
「なんでだ、ノン。」
ガリュウはほぼ感情がないまま刺しているノンに向かってそう言った。




