18.Happy time 前編
――こいつは多分だけど敵だね、笑っている。気色悪いね。
エビルは両眼のコンタクトを外そうとするが
――でも、今両目のコンタクトを取っちゃうと目の欣求の効果が効かなかった時両目一回分の効果を無効にしてしまうね。左目だけ取ってリスクを最低限に抑えての先制攻撃をするべき。
左目のみのコンタクトを速やかに取り敵がいると思われる所をエビルは見る。
――あれ?
バゴン!!!!!!
目の欣求は地面にいる人の影のようなものを対象として使用された。エビルはすぐさま右ポケットから予備のコンタクトを取り出し、生物が存在しないと思われる空を見ながらコンタクトをつける。
――これは敵にやられたってことだね。敵は僕の位置と欣求についてなんとなく知っている。そうじゃないと避けきれないから、こんな先制攻撃。そう考えると厄介そうだね。
敵の位置をエビルは把握しようと様々な場所を見るが敵の姿を一向に見ることが出来ない。
――いないな、敵の能力を一回考えてみよう。敵は、僕の欣求と位置を知っている状態で隠れる又は身を隠すような能力を持っている。どちらに関してもなんの条件があるのかは不明。
敵が僕の今の状況や僕を知れる能力はいくつも考えることが出来るけど、一旦この三つぐらいに焦点を絞ろう。一つ目僕自身の感情、思っている事を知れる能力。二つ目は相手の能力を知れるだけの能力。三つ目は僕自身を全てしれてしまう能力。一つ目二つ目どちらにしても少しおかしい点は存在してる。
一つ目の感情、思っていることを知れる場合、僕は目の欣求の能力については考えていないただそれを発動しようと思っただけだ。目の欣求の詳細を知らずにその場から離れ身を隠す可能性は低い。
二つ目の相手の能力を知れるだけの場合、たとえ目の欣求の能力が分かったとしても僕がどこを向いてどこに攻撃をしようとするのかは分からないはずなんだよね。さらに言えば僕のマシンガンで攻撃する可能性もある。
三つ目だったら一までの行動も全て当てはまってくる。一旦この三つで調べてようかな。まあ、どれにしてもこの子は転生者で少し善の感情が強い子である可能性が高そうだね。だからこんな深夜に街の中を守ろうとしていたのかもしれない。
倒すしかないかな。まだ、転生者が残っているっていう事実は見逃すことは出来ないからね。今回の転生者は僕が戦った転生者の中で誰よりも頭が回りそうだ。戦った転生者はボロカスしかいなかったけどね。いつもならめんどくさいけど、今回だけは、
エビルは建物から下に降りながら体の後ろのマシンガンを取って構える。
エビルは複数の銃を所有している。その銃は彼女の部屋の押し入れの中に入っている。彼女の部屋で殺した転生者やユウに向けた小型の銃を持っているとき常に右ポケットに入れており、洞窟内のスライムへと放ったライフルは、今回のマシンガンと同様に後ろに持っている。
――その子がもし三つ目を持っていた場合はどうしようもないけど、一つ目の場合は感情を知っているだけだから。まだ楽だ。二つ目だったら。これからする攻撃は止めれないはずだよ。
まあでも隠れる系の能力を持っている事がまためんどくさいよね。咄嗟の事でさっきコンタクトをもう一回付け直しちゃったけどあれをやっていなければその子が隠れているだけなのか、それとも存在自体をここに存在させていないのか知れたのに。しょうがないか、
エビルはマシンガンを全方向に動きながら撃つ。
――これでその子が隠れてるだけならどこかに当たるし、当たれば二つ目の物を除外でき、
「1」
その時、エビルの頭に何かが強く当たる。その衝撃でエビルの顔は一瞬ゆがみすぐにもとの状態に戻る。
「イッタ、」
――でも、捕まえたよ。
エビルは自身に当てられた武器を殴られた瞬間に左手で掴んでいた。
――ここで隠れるだけの能力なら道具も同化するか人だけなのかも確認できるしほんとに隠れているかも確認できる。さあ、どうなってるかな。
その武器が動くことは無くエビルが掴んだ状態にあった。彼女はその武器を自身の前へと持っていき確認する。
――バットか、それも青色。
そう思った直後に彼女の数メートル前にある女が現れそれに一秒もたたずしてエビルは気付く。
――君が敵か?
「返してください。」
全身赤色の服を身にまとった長い髪で前髪と後ろ髪の先端のみが青色で他が黒色になっている黒目の16歳ほどの女は口元が笑顔を作りながらそう言うと
「え、やだよ、」
とエビルはその言葉に考える事すらもなくただ機械のように即答した。その瞬間にエビルは右目のコンタクトを素早く外す
――これだけ、近ければ目の欣求から離れることは不可能なはず、
右目のコンタクトを外すことを青髪の女ノンは理解していなかったのか少し行動が遅れるものの彼女がノンを見ようとしたその瞬間に違和感に気づいたのか。
――あれ、いないし、欣求も発動しないね。これは隠れる系の能力というよりかはどこかに自身だけが入れるパラレルワールドなんかを設置してそこから行き来してるのかな。それぐらい転生者のやることは僕に判断不可能なものが多い。だから、パラレルワールドを作るくらいのぶっとんだものぐらいしてくれないと。つまらない。
彼女は左手にバットを持った状態で右ポケットに再度手を突っ込み上を向く。そうして少しぼやけた視線で左手を見るとそこにはバットが無かった。
――取られた感触もなかった、何かしらの気配も一瞬しか感じなかった。これはパラレルワールドで動きながらさらに存在していないもののように僕に見せているってことなのかな。それ以外を今は深く思いつかない。
その子が見えず、攻撃する事すらも不可能、考えても全然その子が出てこないから情報量が少なすぎるし、マシンガンと目では対処できない。これじゃあ僕が青髪君の能力を把握するより先に殺される可能性が高いね。しょうがないのかな?
彼女は左手を見る。その時、もう一度彼女の顔が一瞬つぶれる。
「2」
――うん、この状況だと勝ち目はない。しょうがないね。
彼女はすぐに決意を固めきり、左手の人差し指と中指のみを立ててそれをなんの躊躇もなく口の中に入れ
「ガブッ」
とその指を引きちぎり食べる。
――やっぱり不味いな。
その二つの指を食べた瞬間から切断された根本より青色と赤色、肌色の液が地面へと垂れ始める。数秒が経ち液が垂れ切りその液は丸い形状に変化しながら宙へと浮く。それは物体としての形を少しずつ作りながら変化し肌色で指が五本生えている大きい左手が宙に浮く。暗闇の中で肌色が強く色を強調させている。
それと同時進行でエビルの髪型は徐々に徐々に毛根から白色に変化し、肌色の左手、手の懟呪ができた時彼女の髪は白色になっていた。そんな姿になった彼女は地面を向きながら口元が笑みをこぼしながら言う。
「気色悪さの最大値」
「死ね、」
彼女は右手の中指を立てる。手の懟呪は自身の手を握り拳の形にする。そうすると、0.1秒ごとに左手がサイズ感や色を一切変えることなく複製されていく。十秒経つとそこには手が百個存在していた。それは、全て握りこぶしの形状を維持していた。それらは青髪の女ノンを見つけるとすぐに浮遊しながら彼女めがけて直進していく。
「ふーん、」
ノンはそう言ってその拳の攻撃を難なく避け続ける。その様子を見えないながらもエビルはやっとノンの効果をなんとなく把握する。
「分かったよ、お前はパラレルワールドなんて行っていないんだな、ただ単純に速いだけの俊足の能力を持っているだけなのか、過大評価して損したな。クソ転生者野郎が、」
いつもとは異なる口調とガラガラした汚らしい声でエビルは説明と脅迫をする。無限な数だと思えてしまうほどの大きさと勢いで圧倒的な存在力を見せる拳がノンを半永久的に狙っているようだ。
――まあ、今ぐらい。
――何やってるんだ、あいつ。自爆でもいや冗談はさておきだな。感情を理解しているかはまだ分からねえが、その場合俺が拳を自由自在に操れずノンのみを拳が何かしらの一つの目的の為だけに消えるまで追い続けるなんてこと分かってるはずなんだけどな。それ解除するには俺を殺すしかないし、どうするのかな? ハハハハ、こいつは、興味あるぜ、いろんな面でな。
「感情を理解してるなら避けて見せろよ。」
その言葉にようやくノンが一瞬走ることをやめ止まってエビルの方を見て言う。
「そんなことは無理ですよ。」
と満弁の笑みと共に答えるとその直後にノンの後ろから白い液が丸い形状になり空中に浮く。その白い物体は浮遊しながらノンの前へと頭上を経由し動き地面へとゆっくり降りる。地面に降りたそれは形作られていく。その時にはもう六十個にも及ぶ拳とノンとの距離は一メートルほどになっていた。エビルはその様子を見て少し違和感を感じ次の作戦も練りながらも
「しね―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――、」
と叫ぶ。拳はそのままノンへと直進し爆発する。その爆発が六十回ほど続き煙が立ちこむ。
――これは流石にやりすぎたか、でもな、
「よっしゃ、」
と言い、エビルはガッツポーズに中指をつけた手の形を作る。
――後は、あいつが殺されてるかちゃんとみるだけだな。
エビルは、煙がなくなったことを直感的に判断し煙の方を見るとそこにはノンがいなかった。エビルは咄嗟に後ろを向くとそこにはノンがいた。エビルは驚いた様子を見せる。
「バーカが、」
彼女は驚くふりをし、閉じていた右目を開け白色の目をノンに向かって見せつける。
――やっと分かったよ、お前は、単に俊足で動くだけで場所を把握しただけ。一つ目の相手の感情、思っていることを知れるだけの能力だったら手の召喚による驚きが少なすぎる、二つ目の相手の効果だけを知れる能力なら銃による攻撃を避けることが出来なかったはずだ、なら今の条件にあっていて俺の考えにあっている者は三つ目の相手の事を全てしれている場合しかない。そうなんだろ、青髪。答えてみろよ。
――そうか、彼女はあの時まだコンタクトを外していなかったのか、これは痛恨のミス、死んでしまう。
とでも言っておくべきかな?
ノンは高速で動きその目の欣求を避け目の欣求の効果のみは発動しエビルの目の前で爆発する。
バゴン!!!!!!
エビルは避けることができず少しかすり傷を負う。
――クソッ、逃げられたか、また不発かよ、腹が立つじゃねえか。
そう言いながらも彼女の口元は笑う事を隠しきれていなかった。
――俊足で感情も多分だが見えてるくせに俺が分かっている事を知ったうえでわざと受けようとすること自体に意味があるのか。何かを知られたくないのか…………
彼女はその後脳をフル回転させ考え込み一つの結論を出し、その結論の為にやるべきことを明確にするそれはたった一つであった。