10.ゼロ
――……、
ユウは何も言えなくなってしまった。驚愕していたのか、戸惑っていたのか、笑っていたのかは一切判断することは出来ない。だが、彼女は絶対に数秒話すことは出来ない状態にあった。彼女の思考はその言葉と同時に数秒停止した。その様子をシケンは話すことに集中している為気づくこともなく
「その為にこの世界に存在する魔王幹部と勇者の子孫とその王国全てを崩壊させ消し去ることを目的としています。それに伴って邪魔な存在となっているのが転生者と呼ばれる別次元から来る存在です。
固有能力とMH、懟呪の三つで能力が発動できるといわれています。固有能力は一つの特化した能力を持っているということです。なので固有能力は一つの能力です。MHは、MHと呼ばれるステータスがあり、能力を使うときにそのMHと呼ばれるステータスを使っていき0になった時使えなくなるものと言われています。
MHは懟呪のような感じで多くの能力を使うことができるといわれています。しかし、その能力を使う際能力名を言わなければいけないようです。私も戦ったことがありますが、能力名を言ってからしか能力を使えていませんでした。固有能力は能力名を言うのかどうなのかは分かりません。
転生者は固有能力たまにMHを保持しており、魔王幹部も転生者と同様です。勇者側の一般市民達はMHを持っている場合が多いとされています。この三つから一番懟呪を召喚するのが多いのは一般市民達からだと思われます。」
――……、は! 人を全員殺す? それがこの隊の本当の目的なのか、なんの理由があってそんなことをしているのだろうか? 人を殺して何の利益を得て何を最終的に目標としているんだ。
「悪の感情によって人を殺したいという思いが連なって人を殺したい欲求で殺すことは分かりますし、目的のためにある特定の人を殺すこともわかりますがなぜ全員を殺そうとしているんですか?」
とヒキが冷静になおかつ最も聞きたいことを具体的に聞く。それに対するシケンの応答は
「……、私も深くは分かりませんがこの隊のエビルさんが言うようにはこの世界が私たちにとって生きづらい場所であるかららしいです。いいですか、さっき起こった出来事を話しても、」
「……はい、」
とヒキは少し府に落ちないながらもそれを表情に出さず黙り込む。
「私たちは、今日数日前から決まっていた任務を行いました。それは転生者の本部だと思われる洞窟内に侵入し多くの転生者を殺す事です。これまでは転生者がかなりバラバラに行動している為見つけ出すだけでも難しく見つけても一人しかいない場合が多く、転生者の数も日々増加していったのでほぼ一か月間ずっと転生者を見つけては殺し見つけては殺す任務を行っていました。
本部が見つかったためそこに多くの転生者がいるであろうと目星をつけて昨日は任務をせず準備満タンの体制で転生者の洞窟内に乗り込んでいきました。」
――まあ、準備満タンって言ってもムーンは怖がってたしエビルさんは勝手に騒いでたし、キョウはめんどくさいし色々めちゃくちゃだけど、
「そのまま転生者の洞窟内に入り歩いて行くと前に三つの穴があり私とムーンは左の穴に、エビルさんは一人で右の穴へと入っていきました。私たちは転生者の能力で永遠の道を作り上げるような能力によってその左の穴の中に閉じ込められました。その事を私たちは知らないまま歩いているとエビルさんがやってきてこの場所が永遠の道になっているということを知り転生者の性格や能力をエビルさんが話していると転生者がこれを見ていたのかムーンがさらわれてしまいました。
私はエビルさんの欣求によって洞窟から抜け出しレイさんと会ってここに帰ってきました。レイさんとキョウさんが何をしていたかはあまり分かりません。」
「……、」
シケンは話し終わり、レイとヒキからの応答を待つが両者共無言で応答をしてくる。その空気感を数十秒かけてよんだシケンは話し出す。
「え~、なのでこのままムーンの場所を見つけて転生者を殺す作戦を行いたいのですが、ムーンの居場所が分からない為、まだこの作戦は出来な、」
プルルルル プルルルル
突如として発せられたその電子音により、
「電話だ。」
無言を貫き通していたレイが言葉を発する。
「なんですか、ムーンは携帯なんて」
「持ってる、」
そうレイが言うと玄関が開きリビングへのドアが開くそこにはダークネスが立っていた。部屋の中に入りドアを閉める。
「ムーンの場所が特定できた。ムーンはシユーンの洞窟、レイとシケンがさっき行ってくれた場所だね。そこからはかなり離れた場所にある廃墟らしき場所。ルクール街から北東に位置する場所に存在している。……、頑張ってね。」
「分かりました、ありがとうございます。」
シケンがそう言うとダークネスは帰っていった。ドアを閉めるときユウは少し自身の目が直視されているように感じた。
――レイさんのさっき帰ってから私を待たせた行動はそれが目的だったのか。そのせいで少し到着が遅れたけど、
「それでは行きましょうか、他に何か質問などがあれば聞きますが、特にないなら。」
シケンのその発言に誰も何も言わなかった。
「それでは行きましょう。」
シケンとヒキは早々に動き出し準備を整えるとこの部屋から出ていく。ユウは、他の三人が準備を進めている間準備をするふりをしながら
――一旦、全員がこの部屋からでるのを待ってこの部屋を観察したい。
と思っていたがレイは準備をし終えてもこの場所から出ずたださきほど彼女が座っていた椅子に座っている。それがかなりの時間続きその沈黙に耐えられなくなりユウが準備をし部屋を出ようとドアを開けると
「ユウは、裏切り者だな。」
座った状態でレイは壁に向かってそう言った。
「え、」
ユウは動揺してしまいつい声を出してしまう。そうしてユウが焦りながらも策を練り出そうとすると
「さ、どうぞ」
とレイは言う。ユウが彼女の方を見ると彼女は立ち上がっておりユウに後頭部を向けている。その距離は20mほどだ。
「殺したいなら、殺せ。シケンには先に言っているようにと言った、」
ユウはこの彼女の不可解で理解不能な行動に困惑しながらも考え始める。
――狂璽隊に入っている人を殺す事自体にメリットはあるけど、今のこの状況で本当にこの人を殺しても大丈夫なのだろうか。「シケンには先に言っているようにと言った、」と言っているけどそれも嘘の可能性も高いんじゃないのか。まだこの人たちの戦いや深く性格も分からないけど今ここでこの人を殺してそのことがばれる可能性の方が高いはずだと考えた方がいい。だから絶対に今この状況下では殺さない方がいい。
でももし言っていることが本当だったら? 今この状況で彼女を殺す事のデメリットは少なくなる。そうしてもしも彼女がいなくてもシケンと呼ばれる人とヒキと呼ばれる人に違和感を与えなかったら今ここで彼女を殺すデメリットがかなり無くなる。
そうだったら私はどうする?もしも本当にこの状況がその通りの場面だったら私は
でも殺さない。この人を殺したくない。ただそう感じてしまう。感情の話ではなく直感的に彼女を殺したくない。傲慢かもしれないけどそう感じてしまうだから私は彼女を
「殺さない。」
そうユウが言った瞬間に玄関が開き
「ユウさ~ん? 早く行きましょう。」
とシケンがドアを開きながら言う。
――あれは嘘だったのか、危なかった。でも、あの女性レイに裏切り者である事実はバレてしまっている。どうするべきか。
そうして転生者の本部へと歩いて行った。未だに部屋に残っていたレイは右手を震わせていた。
シケン
剣の懟呪
左手を銃の手に中指を付けた形にし、右手で覆う。右手で覆う際、右手の人差し指と中指を左手の人差し指の側面に付けるようする。右手の親指は左手の小指に付けるように右手の薬指と小指は左手の薬指、小指と同じような形にし右手の薬指を左手の薬指、小指の両方に接するように付ける。
その形にすることで、中指から黒い液が垂れ、平面上に落ちるとある一定のところまで侵食する。その後ゆっくりと丸の形状へと変化してそうしてもう一つの黒い物体として現れる。約3m。剣の色は全て黒統一。
他詳細不明
剣の欣求
詳細不明




