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 体力900超えは伊達じゃない。


 体力ステータスは、どれだけタフかって数値だ。だから体力が高くても皮膚が硬くなって、防御力が上がるなんてことはない。

 だが「耐える」ことに関しては筋力同様に、こっちのステータスも関係がある。

 

「はっ、心配するな。舐めた口が利けねえように、少し痛い目に会わせてやるだけだ」

「そっちのお嬢さんには優しくしてやるから、安心したまえ!」

「大手クランなんつっても、下半身直結野郎はいるもんだな」

「なんだと!」


 突き出された拳を真正面から額で受ける。ぐっと下半身で踏ん張り、前に押し出すように体重をかけた。


「のあっ!?」

「おいおい、殴りに来た奴が吹っ飛ぶのかよ。どんだけ非力なんだ」


 殴られた額は特に痛みを感じることもない。

 

 体力が高くても、剣で斬られれば当然肉も切れる。槍で突けば突き刺さりもする。

 だが打撃攻撃に対しては強い。

 まぁ斬ったり突いたりも、ステータスの低い人に比べれば傷は浅くなるらしいけどな。


 奴らが剣を抜いて来たら一時停止すればいい。

 いや、しなくても倒せるかな。


「クソガキ! 何をしやがった!!」

「殴りかかって来たから踏ん張っただけだろ。吹っ飛んだのはお前らが非力だっただけさ」


 こういう場合、向こうは筋力、俺は体力のステータスで勝負になる。

 単純に奴の筋力が俺の体力より低かっただけだ。まぁ吹っ飛んだのも、俺の体力数値の二、三割ぐらいか。俺自身の筋力もそんなもんだし、あまり人の事は言えないけどな。


「もういいか?」

「て、てめぇっ。紅の旅団に歯向かったらどうなるか、分かっているんだろうな!」

「くれない……どっかで聞いたな。まぁ俺には関係ない。だいたいさ、そういうセリフって悪党が口にするもんだぜ」

「ぎっ──きっさまぁ!!」


 頭に血が上ったのか、遂に剣を引き抜いて走って来た。

 馬鹿正直に真正面から突っ込んでくるから、タイミングを合わせてハンマーを下から上に振り上げる。


 さっきの奴とこいつ、果たしてどっちの筋力が上か。

 それでもペアを組んでいるんだ、俺の体力に勝る数字じゃないだろう。

 その答えは直ぐに出た。


 奴は剣を握ったまま宙に舞った。


「自分の得物を手放さないってのは、戦士の鑑だな」


 そのまま地面に落下した男は、白目をむいて気絶。


「リヴァ、どうするこの人?」

「おいつつくな、馬鹿が移るぞ」

「ひぇっ」


 冗談だって。真に受けて必死な顔しなくていいなら。


 こいつらはこのまま放っておこう。

 幸か不幸かここは地下街だ。一階とはいえ、上に比べりゃ治安は悪い。

 しかも人目に付かない路地裏ときている。こいつらみたいに悪い奴らが大好きな場所だ。


 二人ともいい装備をしている。

 目を覚ました時どのくらい装備が残ってるかな?






「それは災難だったな」


 二階に下りてライガルさんに無事戻ってきたことを報告。ついでにさっきの出来事も話した。


「大手クランってあんなもんなんですか?」

「まともなクランだってあるさ。ただどの町でも大なり小なり、自分達の利益を優先するクランはある。特に貴族の御曹司なんてのがリーダーをやってるクランだと、その傾向にあるな」

「まさか紅の旅団ってのも……」


 俺の言葉にライガルさんが頷く。


「侯爵家の次男坊がリーダーで、三男坊も一緒だ。父親はこの町の領主とも懇意の間柄って噂だ」

「だから好き勝手やってるのか」

「まぁ狩場の独占は、元々禁止されていないから文句も言えんのだろう」


 じゃあ他のダンジョン都市ならどうなのかっていうと、まともな大手クランが諫める役目になっていると。

 この町ではその「大手クラン」がまともじゃなかった。それだけだ。


「あまり関わるな」

「そう言われても、向こうから絡んでくるからなぁ」

「いっそどこかの町の大手クランに紹介して貰ったらどうだ? 別にこの町に拠点を築くクランに入らなきゃならない訳じゃない。そもそも紅の旅団だって、本来は王都に拠点を置くクランだからな」

「へぇ、そうだったのか。でも紹介と言われても、伝手なんてどこにもねえしなぁ」


 今の話かただと、ライガルさんは紹介出来るクランがある訳でもなさそうだし。

 まさかセシリア──じゃないよな。


「お前の保護者だ。エルヴァン司祭。彼ならSランククランにも伝手があるだろう」

「は? あの生臭が!?」

「あの人自身はクラン未所属だが、Sランクの冒険者だったんだぞ?」


 ……は?

 冒険者はランク付けされている。ランク=強さではないが、当然貧弱な奴が高いランクには慣れない訳で。

 七段階あるランクで一番低いのがFランク。一番高いのがSランクだ。

 

 あの生臭坊主が最上級のSだって!?


「なんでそんな凄い冒険者が生臭なんて……」

「あー……これは噂なんだけどな……十六年前まで彼は聖王国ヴェルファスタンで、王室お抱えの冒険者パーティーの一員だったんだが……なんでも王女に手を出したとか出していないとかで」

「なまぐさあぁぁぁぁっ」

「ふえっ!? ど、どうしたのリヴァ?」

「あ、いいんだ。オムライス食っててくれ」

「うん、はいっ。リヴァも食べないと、冷たくなるよ」


 一国の王女に手を出して、パーティーと国と、両方から追放されたってオチなのか。

 流石生臭だぜ。


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